PURGEー42 発現!!
この宇宙には、途方もない数の星々が存在し、その中の何割かに人が生活を営む世界が存在する。
『春山 黒葉』は、生まれて十年までに誰しもが必ず一つ異能力を持って生まれる世界、余所からの通称で『超能力の世界』と呼ばれる場所にて生を受けた。
両親や周りの人達がそれぞれ個性的ながら人の役に立つ、良い能力を手に入れていく環境下の中、黒葉も自分がどんな異能力に目覚めるのか、それを使ってヒーローの様に活躍できることを夢見て幼少期の日々を過ごしていた。
そんな中、小学生時代のある日にとうとう超能力が発言した。しかしそれは、黒葉にとって最悪の暮らしへの始まりになってしまった。
それは授業合間の休み時間、黒葉がトイレを済ませて教室に戻るため歩いていた時。前方を歩いて来る女子二人が何気ない日常会話をしていた。
「それで、あのモデルちょーイケメンでぇ!!」
「え~! どんなのどんなの!?」
小学生らしい話題でただ通り過ぎていくかに思われたその時だった。話に夢中になっていた女子生徒二人は自分たちの足元に気付いておらず、階段のすぐ横を移動していた。
第三者としてたまたま見ていた黒葉はそれに気づき、声をかけようとする。ところがそれよりも前に外側を歩いていた女子生徒が片足を重心が支えきれない位置に置いてしまい、そのまま足を踏み外して階段から落下しかけたのだ。
「エッ!?」
「危ない!!」
自分達に起こったことが近すぎるがために気付くのが遅れた女子生徒に対し、外野で第三者としてい見ていたからこそ素早く動けた黒葉。
この時の黒葉に思考判断はなかった。咄嗟の行動、ただ目の前の危機に瀕した人を助けたい。その一心だった。
黒葉の子の素早い行動は功を奏し、階段の下に落ちるほんの寸前のところで少女の手を掴みすかさず持ち上げた。重心が下に向いていた女子生徒を助けられたのは黒葉の火事場の馬鹿力というべきなのか、たまたま力が入ったのか、なんにしろ幸運だった。
だが黒葉の運気はここで尽きてしまう。偶然ながらも相手を抱き寄せ、引っ張ってしまった彼。無事だったほう助女子生徒は駆け寄り、彼女に声をかける。
「大丈夫!? 今一体何が!?」
一人全容が分かっていた黒葉が説明をしようとしたのだが、ここで危機に瀕した女子が興奮気味になり、混乱しながら黒葉を突き放した。
「は! 放して!!」
「ウワッ!! ご、ごめん……」
これだけならば女子側の混乱、もしくは何もなかったものといて風化する出会ったのだろう小さな出来事。だが次の瞬間、騒動の中心の三人はおろか周辺一帯の人全員が目を疑う光景が広がった。
黒葉が助けた女子生徒の制服のリボンが緩んで落ちていき、ボタンが勝手に外れていく。
同時進行でスカートのファスナーもまるで何かに引っ張られているかのように勝手に下がっていき、わずか数瞬にして彼女が着ていた制服やシャツは全てはだけ落ちてデフォルメされた猫が描かれた下着が公共の面前に晒されてしまったのだ。
「えっ?……」
「えっ?……」
「えっ?……」
三人が一瞬今目の前で何が起こったのかを理解するのにインターバルを要してしまう。ここで最初に我に返ったのは、服が脱げてしまった当の本人であり、その直後の反応は女性として当然のものだった。
「い……イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!」
自身の格好を隠すために両手で覆ってしゃがみこむ女子生徒。何よりその大きな叫び声はどうあがいても衆目の目線を集めた。
「なんだ今の声?」
「あっちでなんかもめてるぞ!!」
「オイ! あそこの女子、制服が近くに落ちてないか!?」
「何でこんな所で脱げてるのよ!!」
驚いて放心しきったままの黒葉ともう一人の女子生徒も動けないままでいる中で全くここまで事案に関わってなかった気の強そうな女子生徒が急にかばうように割り込んで入って来た。
「何があったの!? もしかして、誰かに脱がされたの!?」
驚きと恥ずかしさで再び混乱していた半裸の女子生徒は、強く言い張る相手の圧に押されるように無言で黒葉に対して指を差して来た。本当は何を伝えようとしたのかは分からない。だがこの状況下で彼女柄指を差された時点で、おのずと黒葉の立ち位置は決定されてしまった。
「おい! アイツ女子生徒の脱がせたのか!!?」
「こんな目立つ場所で!? とんだ変態だぞ!!」
周囲の生徒達が勝手な事を言い始める中、ようやく我に返った黒葉はどうにか弁解をしようとした。
「違う!! 俺はそんなことしてない!! 彼女を助けようとしただけで……」
「言い訳がましいわよ! この変態!!」
気の強い女子生徒がここに来て一方的に黒葉を悪者と決めつけて彼に近付く。黒葉は焦って手を振るい、偶然に自分に近付いてきていた相手の肩に当たってしまった。
「痛っ!」
「あぁ! ごめんなさい!!」
「アンタ、やけになって暴力なんて……」
罪が増えてさらに説教が増えるかに思われたその時、厳しい目をした女子生徒の制服がさっきの時と同じく勝手にボタンが外れファスナーが緩み、その場で今度は白いシンプルな下着を晒してしまった。
「ナッ!……」
「えぇ!!? こ、これ、もしかして俺が……」
一度ならず二度までも自分が触れた途端に起こった現象。黒葉は認めたくないながらも自覚してしまう。そしてそれは同時に、周辺一帯の生徒達からも悪い意味で知られてしまった。
「アイツ! 触っただけで服を脱がしたぞ!!」
「アイツに触れるとみんなああなるの!!?」
「とんでもない変態じゃないか!!」
「イヤッ!! 変態!! 変態!!!!」
これが、黒葉にとって初めて発現した異能力での体験。そして、今後の人生に大きく響いてしまう転落のきっかけだった。
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