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PURGEー1 入隊!!

 時間は少し遡り、その日の朝。


 雄大に広がった自然の中において異質な建造物の外に、大きな扉型にくり抜かれたような穴がいくつもそびえたっている。


 その三つの箇所にて、同時に穴の中心に縦一直線の亀裂が入る。ちょうど枠内に収まった亀裂を割れ目にして扉のように開くと中には真っ白な空間が広がり、中から大勢の男女が歩いて出現した。


 その内の一人の少年が空間から出て見た周りの景色に目を向ける。緊張で硬くなる身体を少しでもほぐそうと、彼は自分の胸に右こぶしを当てて小さく掛け声を出した。


「よしっ!……」


 少年も混ざる空間から出てきた一団は何処かから聞こえてきた女性越えのアナウンスの案内に従って動く。


「新入隊員の皆さんは、足を止めずに正面大通りを進み、野外広間まで向かってください……新入隊員の皆さんは、足を止めずに正面大通りを進み、野外広間まで向かってください……」


 三十分から一時間程の時間が経過し、野外広間に集まった大勢の男女。

 そして広間の奥にあるアイドルやバンドがライブをするには十分な程のステージにて、白銀職の美しい髪を腰まで伸ばし、シスターに似た服装を着込んだ物腰柔らかな大人な女性が姿を現した。


「初めまして皆さん。改めましてご入隊、おめでとうございます! ようこそ、『次警隊』へ」


 『多次元(たじげん)救護(きゅうご)警察(けいさつ)連合団体(れんごうだんたい)』、通称『次警隊』。この宇宙に存在する様々な文明、世界に住む生物達を脅かす理不尽な悪意から守るために様々な人種が手を取り合って立ち上げられた組織である。


 ここに集まった彼等はその新入隊員。合格発表時に区分けされ、本日初めて部署に配属されたのだ。


 壇上の女性はシスター服越しですら分かるほどに大きな胸に手を当てて自己紹介をする。


「私はこの『六番隊』隊長の『マザー クオーツ』です。皆さんはこれより六番隊として私の指揮下に入り、各小隊ごとに任務についていただきます。小隊の配分につきましては、あいさつの後に各々のデバイスに配りますので、そちらをご覧ください」


 しばらく続く概要説明。長話でありながら、何故か場にいる全員がしんどく感じることも別の事を考えて気を紛らわせようとする者もいなかった。


 隊の概要説明が終わり解散となると、それぞれの隊員が各々移動を始めていく。


 その中で先ほどの少年は、自分が所属する小隊が何処なのかポケットの中からスマートフォン型のデバイスを取り出して確認しようとする。


「ええっと、メールの中に入っているって言ってたけど一体どれの事で……」


 少年はデバイスの画面にばかり目を向けて歩き注意が散漫になっていた。そのせいで近くにいた人にぶつかり、持っていたデバイスを落としてしまった。


「あぁ! マズい!!」


 人ごみの中にデバイスが紛れ込んで踏まれでもしたら大変だ。少年はすぐに拾おうと手を伸ばす。すると彼よりも先に延びた手がデバイスを拾い、彼に向けて差し出して来た。


「これ、貴方の?」


 声をかけられて初めて相手の顔を見る少年は、一目で目を奪われた。雲一つない青空のような美しい髪を腰まで伸ばし、白いノースリーブに黒いプリーツスカートを着こなしている、品のある凛とした顔立ちの美少女。

 彼女は自分を見て放心状態になっている少年にもう一度声をかけた。


「同じ新入隊員ね? アタシは『リドリア・アイズ』。貴方は?」

「あ……俺、春山……『春山(はるやま) 黒葉(くろは)』です」


 問いかけられて我に返った黒葉が返事として自分の名前を名乗ると、リドリアは嬉しそうに笑みを浮かべてデバイスを差し出して来た。


「ほらこれ、貴方のでしょ? もう落ちしちゃだめよ」

「あ、ありがとうございます。拾ってくれて」


 黒葉はリドリアにお礼を言いつつデバイスを受け取ると、ふと二人の指が触れるか否かのタイミングに黒葉の方が素早く手を引いた。


「危なかった……ギリギリ……」

「え?」

「いや、何でも」


 笑って誤魔化そうとする黒葉に違和感を感じるリドリア。


「貴方、触られたくないの?」

「そういう訳じゃないんだけど……まあ、とりあえず移動しないと。デバイス拾ってくれてありがとう、リドリア・アイズさん。それじゃあ」


 気持ちを落ち着かせようとしながら移動し始める黒葉。だが動揺で足がもつれていた彼は、すぐ後ろを歩いていた他の隊員とぶつかってしまい、前のめりに倒れてしまった。


 ついさっきの出会いの縁からか放っておけなかったリドリアは咄嗟に転倒しかけた黒葉を受け止めようと構えるが、勢いと重量に耐え切れずに一緒になって倒れてしまった。


「イッタタ……ご、ごめんなさいリドリアさん。続けて助けてもらってしまって……」


 体を起き上がらせながら謝罪をする黒葉だったが、リドリアの声は何処か気恥しそうになっていた。


「う、うん……それはいいんだけど……その……手を退けてくれないかしら」

「へ?」


 黒葉はリドリアの話を聞いた直後、自身の右手に柔らかくも適度な反発力のある感触に気が付いた。

 目線を下に向けると、黒葉の右手はリドリアの実った胸の果実を鷲掴みにしている形になっていた。


「アアァ!! ごめんなさい!!」


 すぐに手を放す黒葉だったが、その表情はとても焦っているように見えた。

 故意ではないことを分かっていたリドリアは思うところはあれどやる事もあるのですぐに立ち上がる。


「大丈夫……わざとじゃないって分かってるから……」


 だがリドリアの災いはここからが問題だった。一歩前に足を踏み出した途端、彼女が着ていたスカートのチャックが開き、一瞬にして上下の服が弾け飛ぶように脱げてしまったのだ。


「えっ!?……えええ?……えええぇぇぇ!!!?」


 服を失ったリドリアは黒いブラジャーとショーツだけの半裸状態となり、自分の現状を理解するのに少々時間を要した。

 そして事態を理解すると、顔を真っ赤にして隣で大量の汗をかいている黒葉を思わずぶってしまった。


「イヤアアアアアアアアアアァァァァァァーーーーーーーーーー!!!!! 変態!!!!」


 ぶたれた黒葉はリドリアのパワーに吹き飛ばされてしまい、頭から地面に激突してしまう。

 衆目が二人の事態に気が付き始め、どうにか肌を隠そうとしゃがみこんで丸まるリドリアだが、完全に二人は注目の的になってしまった。


「大変だぁ!! 痴漢だぁ!!」

「入隊初日から女性隊員の服を脱がした!? まじかそれ!!?」

「さいってい!! 何考えてんのよそのケダモノ!!」

「おい! あれってもしかしてアイズ財団の令嬢じゃ!」

「マジか! 終わったなその痴漢野郎」


 少年は弁解しようと話をしようとしても誰も話を聞く様子はなく、何より彼自身どう話し出せばいいのか分からなかった。


(また……やってしまった……)


 春山黒葉。彼には生まれ持った超能力が一つある。


 それは、()()()()()()()()()()といった独特なものだった。

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他の『FURAIBO《風来坊》シリーズ』の作品もよろしくお願いします!!


リンク https://book1.adouzi.eu.org/s1109i/

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― 新着の感想 ―
なかなかの変態っぷり! これは褒め言葉なので、お気になさらず。 しかしながらもお色気は最高ですね。
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