94話 8年越し? いくつ寝た後の話なのですぅ?
やっと隙間時間が取れました!
とはいえ、年末に向かって時間が取り辛い日々が来るのは目に浮かぶようです……
本当は年末年始用に書きたい話があったから書きたいんだけどね……どうしよう?(泣)
森の中をスタスタと前を歩くリアナを追うように両手を頭の後ろで組むレイアが辺りをキョロキョロしながら歩く。
「なぁなぁ、どこ行くんだ?」
「どこだっていいでしょ? 貴方には関係ありません」
声をかけてくるレイアに振り向きもしないリアナがつれない態度で突き離されるが気にした様子もなく、いや、こういう事に鈍いレイアはまったく気付く事なくリアナの行き先を考え始める。
何かに気付いたらしいレイアが掌にポンと手を置く。
「ああ、テツ兄を捜しに行こうとしてるのか? テツ兄ならほっといてもちゃんと帰ってくると思うけど?」
「はい、正解。答えが分かって満足したら戻って要救助者の手当てでもしてきたらどうですか?」
「あはは、アタシが手当てしたら余計に酷い怪我にしかねないからな……」
照れ笑いするレイアは振り返ったリアナの絶対零度の半眼で見つめられてウッと唸ると仰け反る。
黙ったまま見つめるリアナの無言の圧力に負けた頬に冷や汗を流すレイアはどもりつつ声をかける。
「だ、だってしょうがないだろ。アタシが手当てしようとしたら骨を痛めたり、気付いたら包帯で首を絞めてたりするんだ! わざとじゃないんだ、アタシは頑張ってるんだぜ?」
必死に言い訳したレイアであるがまったく表情を変えないリアナに身震いさせられる。
確かにそんな治療であれば要救助者の方からお断りされかねない。そんなレイアの命のやり取りをするような治療を歓迎するのは親馬鹿のアイツぐらいである。
どうやら更に視線の温度は下がったのかもしれないリアナを見つめて生唾を飲み込むレイアが意を決して言う。
「い、言いたい事があるなら、さ、さっさと言えよ!」
「馬鹿ですね、使えない馬鹿なんですね?」
「使えないが付いた! アタシだって毎日頑張ってるんだぜ? だからなぁ……」
何やらまだ何か言おうとしたレイアの口を真剣な目をしたリアナに手で塞がれ、静かにするようにゼスチャーされる。
目を白黒させたレイアであるがウンウンと頷く姿を見せるとリアナは手を離すと辺りを見渡す。
すると激しい爆音が響いた後、レイア達は木々を激しく揺らす風に晒されて吹き飛ばされそうになる。
「――ッ!」
その自然に起きたとは思えない風にびっくりした2人は顔を見合わせると頷き合う。
「ただごとじゃない!」
「そんな分かり切った事を口にするのは馬鹿の証拠」
リアナの言葉にショックを受けて口を半開きにするレイアを見て鼻を鳴らすリアナは風が吹いた方向へと駆け出す。
目尻に涙を浮かべるレイアが我に返ると袖で目元を拭うと走るリアナの背を追って走り始めた。
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森を駆けて風の発生地に辿りついたレイアとリアナは2人の男が戦いを繰り広げていた。
1人は2人が捜していたテツで、もう1人の男が放った風の刃を丁度切り裂いたところであった。
それで生まれた風圧に耐える2人がテツと相対する汚いマントを見るとはっきりと分かれた温度差があるコメントを洩らす。
「ああっ! アイツはテツ兄と戦うはずだった悪党!」
「あの方はドラン様!!」
お互いのコメントの違いにレイアとリアナは顔を見合わせる。レイアは敬意すら感じさせる声音のリアナに驚きマヌケ面を晒し、リアナは悪党と呼んだレイアを責めるような視線を向ける。
お互い、相手の言葉の悪党とドラン様と首を傾げて言い合う。
「貴方、別の人と間違ってませんか? 5年程前からフラッと現れて辺境の地に住む者達を救い続けて英雄と呼ばれる風の魔法使いドラン様ですよ」
「えっ!! ちょっと小汚くなってるけどテツ兄と大会の決勝で戦うはずだった相手でテツ兄の婚約者のテファ姉に酷い事をしようとした奴なはずなんだけど……」
リアナに詰め寄られて困った風に頬を掻くレイアは4歳の頃の記憶だから自信はないが「確か、名前もドランだったはず」と告げる。
そんなレイアの様子を見て少なくともレイアが嘘を吐いている訳ではないと理解したリアナは難しい顔をする。
リアナは政治の世界には巫女、実際は人身御供ではあったが参加させられず、他国の王族との交流は皆無であった。
しかし、辺境や王都から離れた場所にある村などに慰問する為に行く事がしばしばあったのでドランの話を聞く機会は沢山あり、4~5年の間に数度だが目撃する機会があったのでリアナも間違ってない自信があった。
しかし、どんな理由があるのかは分からないが兄と慕うテツと戦う姿を見て、その自信は揺らぐ。
「どういう事なの……」
レイアとリアナは茫然と見つめる。
それしか出来ないとも言える。
2人の戦いを見つめて上げた口の端が震えるのを隠せないレイアが呟く。
「レベルが違い過ぎて巻き込まれたら終わる……ッ!」
どんどん激しくなっていくテツとドランの戦いを2人は瞬きするのも惜しいとばかりに見つめ続けた。
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ドランに放たれた風の刃を切り払い、互いに距離を取ったところで睨み合う。
困惑を隠せないテツがドランに問う。
「どうして俺は貴方と戦わないといけない! そして、どうして貴方はここにいる? もう強制労働の3年はとっくに終えているはずだ」
「……どうして、どうしてばかりだな。理由はお前が口にしたモノだけで充分だろうか?」
そう言うドランが再び、風の刃を放つとテツは「唸れ!」と叫ぶと青い竜巻を発生させる。
放たれた風の刃を荒れ狂う青い竜巻で飲み込むようにして掻き消す。
その様子を見ていたドランが感情が分かり難い表情で見つめ、「見苦しいな風だ」と呟くとテツが放った竜巻よりもかなり小ぶりな竜巻を発生させ放つ。するとテツの竜巻とぶつかると抵抗も感じさせずに掻き消す。
掻き消したにも関わらず、ドランの放った竜巻は何事もなかったようにテツに襲いかかる。
それに舌打ちするテツはその竜巻の範囲から跳んで離れるのを見て、テツを通過して木々にぶつかる前にドランは指を鳴らして竜巻を掻き消す。
額に汗を滲ませるテツに指を突き付けるドランが告げる。
「お前と戦う理由は色々ある。お前はあの化け物達を除けば1番強い男のように言われている。『戦神の秘蔵っ子』だ? だいぶ持て囃されたもんだな……あのまま大会で戦えば俺が勝っていただろう。お前が称賛されたのは俺がアイツに引きずり降ろされて繰り上げで得た名声だろう?」
目を細めるドランが差した指でタクトを振るようにして小さい風の刃を乱打するように放つ。
ドランに放たれた風の刃を見たテツは細かさもそうだがその数を捌き切れないとばかりにドランの攻撃から逃げる為に走り出す。
走るテツの背後をギリギリ外れて飛んで行く風の刃を見て下唇を噛み締めるテツは更に加速しようとした時、ドランに話しかけられる。
そう、耳元で。
「積み重なった恨みがどれだけあると思う?」
「――ッ!」
いつの間に詰め寄られたか分からないテツは逃げずにドランがいる方向に踏みこんで梓で切り裂こうとするが空を切る。
数メートル離れた剣先の方向に佇むドランがゆっくりと空中に軽く浮くと滑るように近寄ってくる。
どんどん近寄ってくるのは分かるが警戒心が沸かず、茫然とする自分にテツは愕然とする。
「すぐに証明、報復でもいい、してやりたいと思っていたがあの化け物、アイツがいたから出来なかった。だが、もうヤツはいない。今まで飲まされてた苦渋をお前に返す時だ」
ドランに話しかけられるが反応する余裕がない。この警戒心が上がらず身構えない自分を叱咤する事に必死になっていた。
そんなテツを嘲笑うかのように目の前にいたと思っていたドランをテツは見失う。
「8年経っても実力差を覆す事は出来なかったようだな。意趣返しをしたいというのもあるが……」
声がして初めて背後に廻り込まれた事を知ったテツが振り返る前に背中に手を当てられる。
テツの背筋に冷たいモノを感じ取った瞬間、テツは前方に吹き飛ばされて地面を転がる。
土埃で汚れたテツが立ち上がろうと見上げるとドランの瞳と視線が合うとドランが口を開く。
「さあ、あの時、着けられなかった決着……雌雄を決しよう」
歴戦の猛者を醸し出すドランの視線の強さにテツは下唇を噛み締めて睨み返した。
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