93話 弱かった頃の自分らしいのですぅ
すまんです。今週は先週より忙しく、土曜も仕事をしておりました。
更に、後で時間があれば活動報告でも書きますが来週は更に忙しさ倍率ドンで平日も忙しいが土日も仕事が決まってしまいましたので来週はもっと絶望的です(泣)
エルフの集落があると思われる場所を目指して走るホーラ達。
最初に目撃した時は遠くからであったが徐々に近寄って来てその大きさが分かり始め、焚き火などではないと分かる。しかも、その煙の出所が増えている事からホーラ達は更に加速した。
なかでも目の良さでは群を抜くホーラは他の者より、はっきりと見えて煙の出所が1つではなく、飛び火して建物などが燃える時の煙りの出方だと判断している。
経験則からそうなっている可能性がよろしくない理由であるような気がして焦りを感じ始めていた。
隣を見るとテツも焦りを感じた表情をしており、ホーラと共に数々の場数を踏んできたカンから同じモノを感じ取っているのが苦渋が滲むその顔が物語っている。
だが、テツの苦渋させる理由が他にもある事をホーラは感じ取っていた。
「テツ、まだ決まった訳じゃないさ。焦りは禁物さ!」
「……分かってます」
そう答えるが走る速度がやや上がり始めている事に気付いていたホーラは眉を潜ませる。
そんなテツの横を短い足でどうやって並走してるのかと不思議でしょうがないミンがボソッと告げる。
「悲鳴、襲われてる。この鳴き声……オーク」
「――ッ!」
ミンの言葉に大きく目を見開いたテツはギアをトップに一気に切り替えるとホーラ達を一気に置き去りにして走り出す。
一気に引き離され、どんどんテツの背中が小さくなるのを見るホーラは苛立ちげに舌打ちをした後、振り返ってポプリを見つめる。
「あの馬鹿に追い付けるとは思わないけどアタイは追いかけるさ。チビ達を頼んださ」
「悔しいけど私ではこれ以上は無理ですから、任せておいてホーラ」
ホーラに頷いたポプリから視線を外したホーラがアリア達に目を向けてヒースに目を止める。
「ヒース、アンタはアタイに付いてきな。アタイに走り負けたりはしないだろ?」
「は、はい。頑張ります」
いきなりの指名に慌てる素振りを見せるがホーラに並走する為に前に出る。
それを見たレイアとミュウが騒ぐ。
「足ならアタシも付いていける!」
「がぅ!」
「お前等はくんな! 管理しきれないさ」
おそらく村が襲われている状態で少しでも人手が欲しいとはいえ、普段であれば面倒と思っても出来るが、テツに追い付く為に集中してる状態では手のかかるレイアやミュウに意識を割く事が出来ない。
そういう意味では、ほっといてもある程度、安心出来てホーラの足に付いて来れそうなのがヒースとリアナなだけである。
感情のコントロールが甘いアリア達が暴走するのをポプリ1人でどこまで抑えられるか分からない保険としてリアナを残す判断をしたホーラ。
取捨選択の結果、ヒースが余っただけである。
ホーラと2人きりにされる事にこんな時なのに、いや、こんな時だから動揺するヒース。悲しいかな、胸が弾むような展開は皆無である。
そんなヒースに険しい表情をして顎で前を示すようにするホーラ。
「行くよ。アタイの足を引っ張ったら分かってるさ?」
「はひぃ! 頑張らせて貰いますっ!!」
ビビるヒースに反応を示さずにホーラは右腕を前に突き出すと手首の辺りから見えない糸のようなものを伸ばすと前方にある木の枝に張り付ける。
糸を一気に伸縮させ、今度は左でも同じようにして走るより早い速度でポプリ達を置き去りしていく。
ホーラの想定外な移動方法にびっくりしたヒースが情けない声を上げて木の枝の上に飛び乗ると枝のしなりを利用してホーラを追いかける。
あっという間に距離を空けられて背中が見えなくなったホーラを見送ったポプリは苦笑する。
「確かに使い方は限定されるけど……無駄を嫌うというか、意地っ張りなホーラらしいわね」
ゼグラシア王国でポプリとの戦いで指摘された手を塞ぐ結果になると言われた方法を移動する事を限定で伸縮の速度を更に上げた事で走るより早く、更に足場を選ばない手段に昇華していた。
確かにポプリの指摘は正しくはあったが、それを発案、開発した事を無駄にするのを嫌ったホーラがこの短期間に仕上げてきた。
凄く『らしい』ホーラの行動にポプリは自然に頬に笑みが浮かぶ後ろでぼやく声が聞こえる。
「ああ、もうっ! あんなに焦るテツ兄の力になりたかったのに!」
唸るレイアが頭を掻き毟っているのが振り返らずともポプリにはありありと想像出来た。
そのレイアの言葉にガゥと頷くミュウ。
普段なら仲間外れされたぐらいの感覚だろうがアリア達は間違いなくブラコンで本気でテツの事を心配していた。
「私もホーラ姉さんに付いていけるなら行きたかった」
アリアが不満そうに言う言葉にスゥはウンウンと頷く。
「心配なのは分かるけど、今は僕達が出来る事をしっかりやりきろう。ミンちゃんが言うように襲われているならこちらに逃げてくる人がいるかもしれない。見逃さないでね!」
「がぅ、任せろ。ミュウの鼻が逃さない」
ミュウがそう答えるがアリア達はバツ悪そうに唇を尖らせて真っ当な事を言うダンテを恨めしそうに見つめる。
ダンテの言う事が正しいと分かるが感情は別と言いたげなのがその表情から分かる。
その様子を盗み見るようにしていたポプリは思う。きっと足が付いてくるならホーラはダンテを連れて行きたかっただろうと。
だが、ポプリとしてはこの場に残ってくれた事を感謝する。言わないでもやるべき事をアリア達に諭してくれる司令塔がいるのだから。
アリア達のやりとりを最後方で見守っていたリアナが露骨な溜息を洩らす。
「ダンテの言う通りです。貴方達がそれを言われなくても分かる人達であれば、ヒースではなく私がホーラ姉様に同行したでしょうに?」
「あ、貴方は本当に口が減らないの!」
「ない、ホーラ姉さんはリアナのように口の悪い子を連れて行かない」
「リアナ……本当の事かもしれないけど、キツイよぉ」
ブンブンと首を横に振るアリアとアッカンベーするスゥ、そして半泣きにさせられるレイアに見つめられたリアナは我関せずとばかりにツンとそっぽ向く。
ぎゃあぎゃあ、と騒ぐアリア達を見つめるポプリは幼い頃、ホーラと怒鳴り、睨み合う自分達を投影する。
そして、ボソリと口の中で呟く。
「子供ね……」
少し懐かしさを感じるがそれと同時にテツの事を思い、難しい顔になっていく。
テツが今のテツになった原点。
雄一とホーラと初めて出会ったあの時の話。
ポプリは3人で行動するようになって冒険者として依頼中の野宿をしたある夜、聞かされていた。
知っているのはホーラとポプリを除くと当事者の雄一、シホーヌ、アクアだけ、一夜でテツが生まれ育った村が滅び、両親に命懸けで守られた唯一の生き残りとなったテツの心に深く刻まれた話。
アリア達ですらテツの両親が死んだぐらいしか知らない。
それを知るポプリは既にどれぐらい距離を空けられたかも分からないテツの背中を見つめるようにして呟く。
「テツ君、自分を見失わないでね……」
▼
ホーラ達を置き去りにしたテツは集落が見える距離に来るとモンスターに襲撃されているのが目に入る。
そのモンスターがオークと視認するとテツの表情が歪む。
「テツ君、冷静になるですぅ。感情が乱れまくってる状態では十全に力は発揮出来ない」
「分かっている! 梓さん力を!」
注意してくる梓に怒鳴るように言うテツが梓を握り締めて全身に青いオーラを纏うと更に加速する。
加速したテツは集落に飛び込むと手近にいたオークに丁度、のしかかられたところエルフの少女が必死に抵抗している背後からオークの首を一刀で斬り落とす。
テツはその血をモロに被り、首を失くしたオークに体全体でのしかかられたエルフの少女が悲鳴を上げるが無視して次の獲物を求めるように跳ぶ。
エルフ達を追いかけているオークをテツが躊躇なく一刀で屠っていく行動がオーク全体に認知されるとオークはテツを恐れるように逃げ出す。
「逃がすかっ!!」
怒鳴るテツは鬼気迫る迫力があった。集落の外へと姿を消そうとするオークを追走しようとするテツに梓が呼び掛ける。
「テツ君、我を忘れたら駄目ですっ! オークを滅ぼすのが目的じゃない事を思い出すのですよぉ!」
「くっ!」
梓の言葉に我を取り戻したテツが足を止めたところで後続のホーラとヒースが到着した。
テツに駆け寄るホーラが息を整えながら言う。
「状況を言いなっ!」
「……見える範囲にはもういないようです。生き残りは逃げ出しました」
テツの言葉に嘆息したホーラがヒースに要救助者の確認をするように言う。
ヒースが敬礼をするようにした後、走り出すのを見たホーラが背を向けて佇むテツを見て嘆息する。
「アンタも行きな。ジッとしてるといらない事ばかり考えるさ?」
「はい……」
ノッソリと動き始めるテツを見送ったホーラは頭をガリガリと掻き、ポプリ達と合流を待って要救助者を助ける為に動き始めた。
▼
ホーラ達が傷の手当てをしているとある老人が言う。
「あの、確認が取れない家族がおるのだが……」
「残念ですがお亡くなりになっているのかも」
悲しそうにポプリが目の前の老人にポーションを浸したガーゼを傷口に充てながら言うが首を横に振られる。
「ワシもその可能性は考えたが集められた死体の中にはなかった。逃げていないだけかもしれん……例え、死んでるとしても葬ってやりたい。なんとかならないだろうか?」
そう言われたポプリが背後にやってきたテツを見上げると頷かれる。
テツは梓を握り締める。
「頼めますか?」
「え~と、一応、やってみますよぉ」
テツが掴む梓から姿を現す巫女姿の梓が力こぶを作るようにしてフンムと鼻息を荒くした後、静かに目を瞑り精神統一を始める。
集中して人サイズの大きさの生命反応を検索すると探知に成功する。
「いたですよぉ……あっ! それを追うようにする人ではない何かに追われてます」
「ポプリ姉さん、後はお任せします」
テツはポプリの返事を聞かずにこの場から飛び出す。
そして、梓のナビに従い、テツは目的地が見える所に到着すると丁度、オークに拳を振り上げられ、その拳からエルフの女性が幼いエルフの子を守るように覆いかぶさろうとする姿を目にする。
「――ッ! 間に合えっ!!」
全力で走るテツの目にはそのエルフの女性がテツの母親に見え、抱えられ泣くエルフの子が幼い頃のテツに見える。
力がなく守られるだけの存在であった自分が何も出来ずに泣いてたあの時を思い、悔しく思わない日はなかった。
そして、今、テツはオークなどに遅れを取ったりしない強さを手にしている。そう、手にしている。
「ま、間に合わない!」
必死に手を伸ばすがあのエルフの女性にオークの手が届くまでにテツが間に合わない。
あのエルフの子が自分のような悲しい目に遭わせたくない、遭って欲しくない。
だが、現実はテツの手が届かない事を本人であるテツが自覚してしまう。
「くそう……どうして俺は……」
テツは絶望に染め上げられる未来を見てしまったような顔をして手を伸ばす先にいたオークの首と胴体が切り離されるのを見て目を見開く。
オークが横に倒れて地面に倒れると同時に血が噴き出し、エルフの親子と思われる者の傍に汚いマントを被せてオークの返り血を浴びないようにする無精ヒゲの男の姿があった。
「大丈夫だ。もう安心していい」
「は……はい、有難うございました」
汚いマントから這い出るエルフの女性が無精ヒゲの男に一礼すると集落のある方向に指差す無精ヒゲの男の指示に従い、走り去る。
テツがゆっくりと汚いマントを拾い上げ、纏う無精ヒゲの男に近づいていく。
近寄られた無精ヒゲの男はテツの存在に気付いていたようで待ち構えるようにして見つめ返してくる。
テツは生唾を飲み込む。
何故ならテツはその無精ヒゲの男を知っていたからである。
テツが知っていた小奇麗な格好の姿とはかけ離れ、更にテツを見つめる瞳は小馬鹿にした弱者を笑う昔と違い、歴戦の猛者を感じさせる強さがそこにはあった。
口をパクパクさせるテツが漸く言葉を捻り出す。
「ど、どうしてこんな所に貴方がいるのですか……ドランさん」
「ふん、お前に教える義務はない」
テツの目の前に現れたのは8年前の首都キュエレーで行われた冒険者の大会の決勝でテツと戦うはずだったドランがそこにいた。
感想や誤字がありましたら、気楽に感想欄にお願いします。




