303話 向上心と努力のようです
鼻が詰まり出すと呼吸が辛いし、垂れ出すと鼻かみ過ぎて頭が痛い……まさに地獄!(天膳さま(笑))
一方、ペーシア王国で駆け出し冒険者として頑張るアリア達は、ダンガを中心に新鋭と言っても誇大表現ではない商人、職人達が店を構えるストリートでバラけて依頼をしていた。
アリアとスゥは商人街のエリアで在庫確認作業に追われ、レイア、ミュウ、ヒースはまだ建設が済んでいない場所で目が廻る想いで働き続けている。
そして、ダンテとポロネは職人街で、ダンテは材料搬入、ポロネは開いている店の店頭で呼び込みをしながら子連れの客の子供の暇潰し……むしろ、遊んで貰っているようにしか見えないが、ギリギリ全うしていると言えなくもない。
勿論、職人から微笑ましく見られてるのが救いで、ここ最近はダンテは頭痛とお友達であった。
ダンテが薬品が入っている箱を丁寧に運び、倉庫に仕舞い終わって出てくると依頼人の男が待っていた。
「いや~、さすがユウイチさんの家の子だね。こういう薬品の重要性と最低限の扱い方はやっぱり習ったのかい?」
その辺の冒険者は力任せに運んで中身を駄目にすると愚痴りながら聞いてくるのをダンテは苦笑する。
「いえ、習ったというより、周りを見渡すとそういう事をしてる人が目に付きますし、乱暴に扱った相手と喧嘩する姿を見てたら自然に……」
「環境が人を育てるか……言うのは簡単だけど、良い方に影響を及ぼすのは本当に大変だよ」
ダンガには職人が沢山おり、勿論、北川家から出た子達が独立する場合もあれば共同経営、それとも既存の職人の下に入る者が様々いる。だが、誰かの下にやってくる者は意識が高く、切磋琢磨でき、喜んで門下入りさせている。
しかし、他地域からやってくる弟子希望はだいぶ毛色が違う。
ダンガでは基本、技術を秘匿しない。
だから、調べる気さえあれば大抵の事は分かる。それを逆手に取った者や、それを信じられない者が現れて職人は閉口しているらしい。
レシピだけ取るだけ取ったら去って行く者、開示されている情報ではなく秘匿してる情報をせがみ続ける者達が後を絶たない。
勿論、研究中などで不確定なモノは公開されていないが公開されている事を伝えても、
「同じやり方でやってるのに、どうしてこうも品質に差が出る? 何か隠してるに決まっている」
と言われるらしい。
これは単純に腕の差で、ポーションであったら、いかに不純物を混ぜないようにし、魔力を練り込めるの差でしかない。
だから、「修練、研鑽の差で努力さえすれば遅い、早いの違いはあれど、できるようになる」と伝えても駄目らしい。
過程は聞きたくない答えだけでいい、努力はしたくない、求める結果をすぐ出せる方法を、と言う弟子希望が多いらしい。
そのせいで他地域の弟子を断る職人や、弟子入りの条件が厳しくなっている、と聞かされたダンテは嘆息する。
ダンテ達もペーシア王国での冒険者達に声をかけられる半数が、「どうやったらそんなに強くなれる?」と問われる。
レイアやミュウは「頑張ったらできる!」とあっさりと答えるがそれを鼻で笑われる光景は珍しくない。
言い方はともかく、レイア達が言っている事は真実である。
「どうして、容易に力や技術が手に入ると思うのでしょうか? 努力や自分の生き様が導く結果だと思うのですが……」
「本当にな? そういう事はユウイチさんのとこを出た奴等は良く知ってるんだけどな?」
当然、才能の有無で結果が違う事はあるだろうが、そんな事を言い出したらきりがない。
そんな事、ダンテ達ですら悔しく思う事などしょっちゅうである。
ダンテなど、同じ年頃の冒険者と比べれば遜色はないだろうが、フィジカルな面でレイアやミュウ、ヒースが羨ましくて堪らない。
毎日、同じような訓練を積みながらもはっきりと結果として出ている。
逆も然りである。
お互いに自分にないものを羨ましく思うのはダンテ達にも当然のようにある。
「ないもの強請りする前に努力をしてから言って欲しいですよね……」
「だな……」
ダンテが珍しく毒を吐くのを聞いた職人は、ダンテも結構溜めこんでるな、と思い、手遅れかもしれないが背中を叩きながら「気にするな」と言っていると来客があった。
「あ、いたいた、ダンテ、良かったらご飯にしないかい? みんなも集まってるんだ」
入口から顔を覗かせているのはダンテの数少ない男友達のヒースであった。
ダンテが職人を見上げるのを見て、
「ああ、いいよ。ゆっくりと食事をしてくるといい。作業は思ってたより進んでるからね」
暗くなりかけてたダンテをどう扱ったらいいか分からなくなった所にきた助け舟に迷わず乗る職人はまさに匠であった。
ダンテは表情を明るくして、職人に頭を下げるとヒースに連れられて、みんながいる場所へと案内されていった。
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ヒースに連れられてやってきた場所には、いつものメンバー以外にもう1人いた。
その人物を見て微妙そうな顔をするダンテに苦笑いするヒースが聞いてくる。
「えっと、みんなの話だとダンテも知ってる人らしいけど?」
「えっ? ああ、うん、知って……る、けど知らない人であって欲しかった」
ダンテの視線の先には薬草を束ねたモノを股間の場所だけを覆い、胸には一枚ずつ使ってニップルシールのように使っている少年がドヤ顔でポーズをとっていた。
「んっ? アリア、こんなものか?」
「まだ、脇が甘い、反り返しも足りてない」
アリアの指摘を受けて脇を締めて、仰け反る少年を涙ながら見つめるレイアが残酷な神の悪戯を受ける人のように絶望していた。
「キッジは死んだ! 昔はあんなに良い奴だったのに!!!」
過去に切磋琢磨して争い、家での数少ない気軽に文句を言い合える相手であったキッジの変わり果てた姿にレイアは号泣する。
号泣するレイアとキッジを挟んでミュウダンスを披露しながら、どちらも応援するミュウ。
メモ帳を持ちながらキッジの真横に待機するアリアとスゥとボケーと正面から見つめるポロネを見つめながら、ダンテは眉間を揉む。
「えっと、キッジ? その格好は何? その前にパンツは履いてるよね?」
「おお、その声はダンテか? これは身に付ける事で草木と会話できるのか実験中だ。肌と直接触れるのが目的だから、当然、ノーパンだ!」
「君、それは駄目だよ! 防御が正面だけで横や後ろは、ほとんどノーガードじゃないか!?」
そう突っ込んだヒースが真横に待機しているアリアとスゥがメモ帳を持っている事に気付くと驚愕な表情を見せる。
学習する気である。
止める気になっているヒースの心の色を察知したアリアがキッジを煽る。
「まだ甘い。そんな事で草木と会話できると思ってる? 貴方の熱意はその程度?」
「舐めるな! 俺の本気を見せてやる!」
一気に反り返り、エビのようになったキッジを正面から見てたポロネは「小さいゾウさん」と呟き、アリアとスゥはメモ帳に殴り書きする。
「ユウさんより小さい。キッジが平均なのか、小さいのか情報が足らない」
そうアリアが呟くと2人の視線が駆け寄ろうとしてたダンテとヒースを捉える。
本能的に危険を察知したダンテとヒースは思わず、股間を隠す。
「ダンテ、ヒース。私達の将来の為に犠牲になって欲しいの!」
「良かった、ダンテとヒースが良い子で?」
勝手な事を言い出す2人が立ち上がるのを見たダンテとヒースは迷わず踵を返すと逃げ出す。
待てぇ! と追いかけてくる2人に恐怖を感じる2人が止まる訳がなかった。
「待て、と言われて止まる人いないよ!!」
「アリア、目を覚まして!!」
アリアへの幻想が壊れ始めるヒースにダンテがアリアは前から、あんな感じだと伝えると泣きだすヒースと共に街中を走り抜ける。
「向上心も努力も方向性を間違ってたら、やっぱり駄目だぁ!」
こうしてダンテはまた1つ賢くなった。
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