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204話 冒険者の街ザガンらしいです

 まさか気分転換にスロを打ちに行ったら中段チェリーから止まらなくなるとは思いませんでした。書きかけだった双子を急いで書き上げましたが、粗い所があったらごめんなさい(泣)

 3日目の午前中に雄一達は冒険者の街ザガンの港に到着した。


 船長曰く、風の調子が良く思ったより早く着いたそうだ。


 新しい土地に興味津々な子供達6人と1度船酔いになってから復帰できなかったポプリにとってはすこぶる有難い出来事であったのは間違いなかった。


 船から見える街並みは、アリババとアラジンを連想しそうな砂の街であった。気候も海を渡ったといえど3日しか離れてないのにダンガと比べてだいぶ暑い。


 雄一達側では、そんな呑気な立ち位置であったが、入港してきた雄一達が乗った船を見た者達は大騒ぎしていた。


 何故なら船首にシーサーペントの頭が乗ってるだけでなく、その体を輪切りにされて船の上に載っているのだから……


 幼生体のシーサーペントであれば、時折、丸ごと持ち帰る者の話はあったが、明らかに成体のシーサーペントの一部ならともかく、全てを持ち帰った者など前代未聞であった。


 そんなこと気にした素振りもない雄一が船を降りようとした時、船長が声をかけてくる。


「もし、宜しければ、シーサーペントを冒険者ギルドに運ぶ手配をこちらでしましょうか?」

「いいのか? して貰えるなら助かる。これから荷車か馬車を借りに行こうと思ってたがアテがなくて少し困ってた」


 雄一が頼むと船長が船員に指示を出す。


 出された船員はどこかに走って行った。


「冒険者ギルドにはユウイチ様の名前で預けておきますので、できるだけ今日中に手続きしてやってくださいな」

「ありがとう、宿を押さえたら、すぐに向かわせて貰う」


 そう言った雄一が、ここまで運んでくれてありがとう、と告げると船長始め、船員達が男前に歯を見せて笑ってみせる。


 ホーラ達も笑顔で「有難うございました」と言うと船長達はデレッとして嬉しそうにしていた。


 本当に船旅中、紳士に勤めていたので雄一も煩く言う気はないが、ホーラの外面の笑顔はやたらと可愛らしい事を今回を機に思い出していた。


 船から降りた雄一がホーラを見つめていると見つめられてる事に照れたホーラ噛みついてくる。


「何、ジロジロ見てるさ!」

「いや、普段からもああいう笑い方してたら、可愛いのに損してるな、と思ってな?」


 そう言われたホーラは顔を真っ赤にして雄一のケツを後ろに廻って蹴り続ける。


 ホーラとしては可愛いと言われるより綺麗と呼ばれたい願望があるが、それでも雄一に可愛いと言われて嬉しいという微妙な女心で激しく揺れて出た行動であった。


 普段なかなか見れないホーラの珍しい顔を見れて、褒められたホーラに嫉妬を覚えるポプリ達であるが面白さが先だったようで笑みを浮かべていた。


 同じように笑っていたテツをホーラが足払いをしてこかすと背中をガシガシと踏みつける。


「照れ隠しで僕に当たらないでくださいっ!」

「うっさい、テツの癖に!」


 息が切れるほどテツに当たっていると、ホーラは雄一達が置き去りにした事に気付き、慌てて追いかけていく。


 いつものように最後に残されたテツは涙を流しながら、「うん、分かってた」と呟いていた。


 すると、どこぞの令嬢かという美しい少女が頬を染めながらテツに声をかけてくる。


「もし、そこの方、大丈夫ですか?」

「あっ、大丈夫です」


 そういうと、サッと立ち上がるテツ。


 どことなく幼い笑みを向けるテツをジッと見つめる令嬢がハンカチを差し出す。


「お顔が汚れています。良かったら、これでお拭きになられて?」

「いつもの事ですから、平気ですよ」


 そう言うと袖で自分の顔を拭うとニパッと笑ってみせるとお辞儀をする。


「お気遣い有難うございました。それでは!」


 そう言うとテツは雄一達を追いかけて港を出る道を駆けていく。


 テツを見送る令嬢が熱い吐息をしながら頬に手を充てて悩ましげに眉を寄せていた。


 とても、テツらしい出来事であった。





 雄一達は街中に入ると確かに噂通りの場所だな、と思う。


 荒くれ者達が多い街のようだが、治安が悪そうには見えない。住み分けが済んでいるようで、お互いの領域に踏み込まない限り争わないようにしているのだろう。


 それ以外では、やはり冒険者の街というだけあって、食べ物、酒などを売る屋台や店がやたらと目に入る。


 このようにストレスを発散させる場所が豊富なうえに少し路地裏に視線をやると薄着の女性がちらほら立っている姿が見える。

 つまり、そういう事なのであろう。


 勿論、雄一はそんなものに興味は持っていない。可愛い子供達がいる場でそんな不埒な事は考えてもいない。


 決して、両端を挟むようにホーラとポプリにされて見上げられている事は一切関係なかった。


 その件の子供達であるが街の様子がダンガとは違って冒険者よりに特化した街並みに心を躍らせていた。


 特に豪快な肉料理が目に付き、レイアとミュウがソワソワして落ち着かないようだった。


 それを見ていて思い出したように雄一が懐から財布を取り出す。


「街の探索は宿を見つけてからしか許さないが、こうも珍しいモノがあると財布の紐が緩むだろう。しっかり、お小遣いで済ませるように言いたい所だが、正直足らないだろう?」


 そういう雄一が財布を出してる事に気付いたレイアとミュウは目を輝かし、アリア達はちょっと照れ臭そうにしていた。アリア達ですら、そこまで自制できるか自信がないのであろう。


「そこで条件付きで今回は特別に旅資金として出してやろうと思う。みんな、楽しそうに見えても街から出ないと約束できるか?」


 約束すると真っ先に手を上げるレイアとミュウ。色んな意味で一番信用できないが言質を取る必要はあると判断して頷いて見せる。


 アリア達は元から守るつもりがあったようで、頷いて見せる。


「では、では特別お小遣い、銀貨1枚支給します」


 そう言うとレイアとミュウが高い声を上げて抱き締め合う。


 アリア達も嬉しそうにしていた。


 ちなみにアリア達の1カ月のお小遣いは銅貨50枚であった。


 一般から考えれば多いが、育ち盛りなうえ、体を動かすアリア達ではどうしてもお腹が減る事が増えるので大目に出していた。


 アリアから1人ずつ渡していき、レイア、そして最後にミュウを見つめると瞳を爛々とさせて嬉しそうにしていた。


 そんなミュウに笑みを浮かべた雄一は、ミュウの銀貨を隣にいたスゥに手渡す。


「ミュウの分の管理は頼む」

「任せて欲しいの!」


 雄一に託されたスゥは胸を張って嬉しそうにするが、目を見開いたミュウが雄一とスゥを交互に見つめて半泣きになる。


「なんで、ミュウのお小遣い、スゥに? ミュウ、落とさない!」

「いや、渡したらすぐ使い切るだろ? 先月のお小遣いの話の時、信じて渡したのに即日に全部使って肉買ったの忘れたか?」


 そう、ミュウのお小遣いは管理する必要性を訴えてきたアリアとスゥの言葉に雄一は待ったをかけた。


 雄一は、ミュウが涙ながら、しっかり自分で管理できると訴える言葉を信じてやろうとアリアとスゥを説得した。


 だが、ミュウはあっさりと裏切り、『アイ ラブ みーと』にお小遣いを初日で全ツッパやらかした。


 本人曰く、1ヶ月間、肉食べ放題だから計画的だと訴えたが雄一に尻叩きの刑を執行された。


 思い出したようでバツ悪そうな顔をして、お尻も摩る。どうやら思い出したのは、やらかした事なのか、尻叩きの事なのかはミュウのみぞ知るであった。


 さすがに雄一に頼んでも無理と判断したミュウはスゥに泣き落としにかかる。


「スゥ、ミュウのお小遣い返して、お願い、一生のお願い」

「駄目。それにミュウの一生のお願いはもう両手の指では数え切れないんだけど、何故かしら?」


 ミュウは、「きっと聞き間違い」と言い切る事でなんとかしようと奮闘するが、スゥの防御は固い。さすがは盾役である。


 しかし、スゥはこれでも王族でそれなりの生活をしてた割に、お小遣いに不平不満を言う姿は一度も見た事がない。


 勿論、幼い内から北川家にいるようになったから庶民的な考えが出来上がってるのは間違いはないが、それにしては、王族としての考え方に対する理解度が高い。


 それには、幼い頃に同じ年頃の友達が居らずアリア達と一緒に同じ事ができている今が楽しくてしょうがなくて、気になっていない事はさすがの雄一も理解の範疇外であったが、本人は毎日を満喫しているらしい。


 子供達を横目に雄一はメリーに屈んでみせる。


「メリーの分はシャーロットに預けておくな?」


 そういうと嬉しそうに頷いて見せるので、シャーロットに銀貨2枚手渡す。


「あの主、私は頂かなくても……」


 シャーロットは元々持っている資金も豊富だが、家の仕事をする事で雄一から給金を貰っていた。


 だから、お小遣いを貰う立場ではないと訴えたいようだが、雄一は首を横に振る。


「シャーロットの為じゃない。メリーの為だ」


 そう言う雄一はメリーに笑いかけながら見つめる。


「メリーもシャーロットと同じがいいよな?」

「うん、シャロも同じがいい」


 ジッと見つめるメリーに困惑しつつもシャーロットは雄一に「有難うございます」と頭を下げて受け取る。


「別にお前に使う金銭の上限をつけるために渡した訳ではない事は理解しておいてくれよ?」

「えっ? でも……はい、分かりました」


 不公平だと思ったようだが、雄一にジッと見つめられて顔を赤くして引き下がる。


 振り返るとホーラとポプリが掌を差し出してるのを見て、額にチョップを入れていく。


「お前達にはいらないだろ?」

「痛いさ、そうは言ってもアタイは1年もお小遣い貰ってなかったさ。こういうのは気持ちだと思うけど、ユウはどう思うさ?」

「ポプリの胸は張り裂けそうです。4年も放置されて、ささぐれだった心に潤いを欲しているのです」


 これ見よがしに泣いたフリをする2人に疲れた雄一は、降参のポーズをして告げる。


「分かった。帰る時に好きな物を3人共1つ買ってやる。それでいいな?」


 雄一がそう告げるとホーラとポプリがハイタッチして喜ぶ姿を見て、嵌められた事に気付くが既に時遅しであった。


「僕は特に欲しいモノありませんからいいですよ?」

「あの2人が欲しがりそうな物がテファが欲しがらないとでも思うのか?」


 はっ! と表情を驚愕色に染めるテツは、雄一の手を取って大袈裟に感謝を告げてくる。


 雄一もテツもまた、女心を理解しない馬鹿2人。


 少なくとも、あの2人が欲しがりそうなものを買って帰れば不興は買わないだろうと雄一の年の甲のアドバイスであった。


 テツを眺めながら、ディータにも同じようなモノを買って帰ろうと考える。


 後の面子は甘い食べ物や酒、それにあわせるツマミのようなものを好むので悩む必要はなかった。


 特にリューリカとレンは酒好きで、酒とツマミを用意してやれば大抵の事は首を縦に振ってくれる。


 ちなみに、スネ湖の引率も同じ手で2つ返事であった。


「さて、宿探しに戻るか。ミュウ、ご飯が美味しい店か、綺麗な店どっちがいい?」


 スゥに実らぬ戦いをしていたミュウに話しかけると迷わずに、「ご飯!」と即答してくる。


 そういうミュウに美味しそうな匂いをさせる宿を探すように伝える。


 しばらく、鼻をスンスンさせるミュウが走り出すと丁度、向かい合うようにして立つ宿の前に止まる。


「こっちが肉のいい匂いする。向こうが魚のいい匂いがする」


 そう言ってくるのを聞いた雄一は頷く。


「じゃ、魚にしようか」


 せっかく港町にいるんだから、新鮮な魚料理が美味しい店がいい、と判断して雄一達はミュウの鼻が捉えた魚料理が美味しい宿屋で部屋を取る為に入って行った。

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