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129話 俺の……らしいです

 雄一は、呆けるホーエンとアグートを視界におさめて、前に踏み出すと2人は我に返ったかのように、ビクッと体を揺らす。


 アグートは、自分のキャパの領域を超える存在である雄一が認めたくない気持ちと発される力と自分の差を感じて、恐怖に体を震わせ、呆けるようにしてペタンと尻を付く。


「有り得ない、有り得ないわっ! アンタみたいな人間がどうして存在するのよ!!」


 震える腕で必死にズリズリとお尻を地面に擦らせて少しでも雄一から距離を取ろうと必死に足掻く。


「アンタ、何者なのよっ!」


 アグートの必死な叫びを受けた雄一は足を止める。


「俺か? 俺は可愛い子供達に囲まれたお父さんだぁ! と普段なら答える所だが……」


 雄一はチラッと家のある方を見ると口の端を上げ、右手の親指で鼻の頭を擦ると、ヘッと笑う。


「今日は、敢えてこう言わせて貰おうっ!! 俺は駄女神と残念精霊の旦那だぁ!! 家のが世話になった。落とし前は付けさせて貰うぞっ!!!」


 雄一の恫喝を受けたアグートは逃げる事も忘れて、自分の体を抱きしめてその場で身を縮めた。


 蒼白な顔をしたホーエンも必死な顔をしてアグートを守ろうとするように雄一からアグートを遮る位置で睨みつけてくるが、まるで別人のように弱々しい視線であった。


 既に、雄一に強者としてのプライドは破壊され、アグートへの愛だけが彼を突き動かしていた。


「ユウイチっ! 駄女神って誰の事なのですぅ!!」

「残念精霊って私の事ですか! 悲しむべきことなのに、嬉しいと思う自分が悔しいっ!」


 雄一の言葉に触発された2人が雄一への口撃に必死になっているが、スル―アビリティを発動させた雄一は聞こえないフリを敢行した。


 正面で身構えるホーエンに雄一は、指でかかってこい、と示す。


 雄一のその行動だけでもプレッシャーを感じるホーエンは、悔しげにしながらも縋るように雄一を見つめる。


「……ムシのいい事を言おうとしてるのは、自覚している。俺は、どうなってもいい。だが、アグートだけは見逃してやってくれ」

「駄目よっ! ホーエン、貴方が死んでまで生きていたくはないわっ!」


 ホーエンのアグートの助命嘆願を聞いたアグートは、雄一への恐怖を超える、ホーエンを失う事に対する恐怖に虚勢もへったくれもない泣き顔を晒す。


 雄一は指で再び、かかってこい、と示す。


「お前の頑張り次第だ」


 雄一にそう言われたホーエンは、決死の覚悟を宿らせて飛びかかる。


 飛び込んでくるホーエンを雄一は、虫を叩き落とすかのように平手打ちで地面に叩きつけると巴の石突きで背中を一撃する。


 喀血するホーエンに感情の籠らない声で「その程度か? アグートに変わって貰うか?」と言うと飛び起きたホーエンはもう一撃を入れようとしてた雄一から距離を取る。


 距離を取ったつもりだったはずの雄一はホーエンの背後におり、廻し蹴りで出迎えられる。


 雄一の廻し蹴りは、左腕にクリーンヒットし、乾いた音をさせて先程まで雄一が居た場所へと吹き飛ばされる。


 限界が近いようでホーエンが身動きが出来なくなって、首だけ動かして雄一を懇願するように見つめ「頼む、アグートだけは」と言ってくる。


 それに雄一は反応を示さす、折れたと思われるホーエンの左腕を踏みつける。


「もう無理か? お前にトドメを刺して、続きはアグートに受けて貰おう」


 雄一の恩赦のない言葉にホーエンが怨嗟の叫びを上げる。


 巴を振り上げた雄一の前にアグートが飛び込んできて、ホーエンを背中で庇うように両手を広げて背中越しに抱き締めるような格好になる。


 お尻を地面に擦らせながら、雄一からホーエンを1mmでも離れさせようとするようにしながら雄一を見上げ涙ながらに訴える。


「お、お願いよぉ、お願いだから、ホーエンを殺さないで、私だけで許して!」

「駄目だ、アグート、お前だけでも生きてくれっ!」


 必死に庇い合う2人を冷めた目で見つめる雄一は、巴を大上段に構える。


「じゃ、2人仲良く死んでおけ」


 そう言うと迷いもなく、巴を振り下ろした。




 雄一とアグート達の最後のやり取りを離れた所で見ていた子供達、特にティファーニアが飛び出そうとするのをシホーヌとアクアが止める。


 ティファーニアは止めた2人に食ってかかる。


「もう勝負は着いてます! いくらなんでも先生はやりすぎですっ!」


 食ってかかられた2人は、笑みを浮かべて、ただ首を横に振るだけである。


 そんな呑気な態度の2人に戸惑いを隠せないティファーニアであった。同じように困った顔をしたアンナとガレットも顔を見合わせる。


 答えない2人に代わりとばかりにバッツが鼻の下を指の背で擦りながら自慢げに語る。


「テファ姉ちゃん、大丈夫だって。だって、ユウイチ父さんの目が、折檻してる時と同じ目をしてるよ」


 バッツの言葉を聞いたティファーニア達は雄一を凝視した。




 振り下ろされた巴の刃はアグートの鼻に触れる位置でピタリと止まっていた。


「どうだ? 少しは大事な人が奪われる恐怖を味わえたか?」


 雄一は巴をいつものように肩に担ぎ、2人を見下ろす。


 2人は何が起きてるのか、分からず、キツネに騙された人のように呆けていた。


「アグート、お前は自分に信者が沢山いたり、仮初の加護を与える相手が多い事が自慢らしいが、その権威を示す為にばらまいているモノ、代表的なモノで魔剣をばら撒いた後、どうなってるか把握してるか?」


 まだ、呆けたままのアグートは力なく首を横に振る。


「そのばら撒いた魔剣を使って、好き勝手暴れる者がいる。確かに道具である以上、使い手次第だという言葉は否定する気はない。だが、考えなしにばら撒いた結果、家の長男は命懸けの戦いをし、心が折れるか折れないかの瀬戸際まで追い込まれた。それと同時期にその長男の嫁に来る予定の娘にも被害があった」


 雄一の言葉を聞いて、自分の事を言われていると理解したティファーニアは顔を真っ赤にさせる。


 それと同時に自分は酷い勘違いをしていた事を知り、申し訳なさから項垂れる。


「その娘は、今のお前のように自分の弟達を助けようと必死に叫び苦しんだ。お前は今、自分が体験した事をどれだけ生み出したか分かっているのかっ!!」


 雄一の恫喝を受けて、アグートは泣くのを我慢する子供のように下唇を噛み締める。


 ホーエンも雄一が何をしようとしてたか理解の色が宿り、歯を食い縛る。


 それと同時に雄一がどんな解答を求めているか理解もする。


「アグートがばら撒いたモノは一度、全て回収して、今後、渡す相手の選定はしっかりさせる。俺が責任を持って行う」


 そう言ってくるホーエンを見つめ返した雄一は2人を見て口を開く。


「2度目はないからな? 次は恩赦があると思うなよ。例え、精霊王とやらがそっちに付いても俺が引き下がると思うなっ!」


 雄一が本気の殺気を放つ。


 先程まででも殺気を放たれていると思っていたが、本気の殺気を身に受けたアグートは体が震えるだけでなく、自分の歯で歯を砕く気かというほどに盛大に歯音をさせて目尻に涙を浮かべる。


 同じように今まで受けた事もないほどの恐怖を受けているホーエンだが、雄一に懇願する。


「絶対に敵対されるような事はしないから殺気を引っ込めてくれ! アグートの心が壊れる!!」


 その言葉と共に殺気を引っ込めるとアグートは解放と共に意識を失ってホーエンの体の上に自分を投げ出す。


「約束は違えるなよ。後、家をちゃんと元の場所に戻しておけよ! できないとか、ほざいたら2人に大工させっからな?」


 そう言うと踵を返して両目を閉じて、いつもの黒色の瞳に戻る。



 家の方へと歩いていくと家の子供達に囲まれ、称賛の嵐に見舞われる。


 雄一は子供達の頭を撫でたり、笑いかけながら家の方に向かうとすこぶる嬉しそうな様子の駄女神と残念精霊が雄一目掛けて飛びかかって首にぶら下がる。


「ムッフフ、やっとユウイチがデレたのですぅ!!」

「もうもう、主様についに私の愛が届きました~」

「はぁ? 最初の一言目がそれか。まずは切り抜けた事を喜ぶところじゃないのか?」


 そう言う雄一に2人は、そんなのは、まったく心配していなかった、と些事だと言わんばかりに流される。


 普段ならそう言われたら拳骨の一つでもして、説教をしてきそうな雄一なのに戸惑いを見せるのを見た2人の瞳が妖しく光る。


 2人は目だけで会話を一瞬で済ませるとタイミングを合わせたかのように目を閉じて唇と突き出してくる。


 その行動に凄まじく動揺を感じとった2人は心で勝鬨を上げる。


「テファ、師匠が照れてるぅ! きっと滅多に見れないよね?」


 そうティファーニアに言うアンナに、「シィ――!」と指を立てながらも、ドキドキを隠せない顔をしてこちらを見ていた。


 雄一は今でかつてないほどうろたえて、助けを求めるように辺りを見渡すが、少なくとも味方はいなかった。


 むしろ、小さな子達は、「チュウするの?」とか「チュウ、チュウ」と囃し立てる。


 雄一に逃げ道はないかと思われた時、ある事に気付いた雄一の表情が通常の口の端が上がる笑みを浮かべる。


 余裕を取り戻した雄一が、優しく抱き寄せると2人は嬉しそうにする顔の間に顔を挟むようにして呟く。


「少し聞きたいんだが、どうして黒板に書かれている文字が俺が王都に向かう前に書いた内容のままなんだ?」


 雄一の言葉を聞いた2人は、なんだとっ! と叫びそうな顔をしながら目を見開きながら顔中に汗を流す。


「俺は多少なら遊んでいいとは言ったが、全力で遊んでいいとは言ってないよな?」

「ま、待つのですぅ! それはデレタイムをしてからでもいい話なのですぅ!!」

「主様? 全力で謝りますので、どうか、通じ合った恋人の時間に戻ってくださいっ!!」


 こんな展開はイヤァ――と叫ぶ2人に雄一は、「知らん、知らん」と、つれなく態度で言うと抱き締めるのを止める。


「ダンガに帰ったら説教な?」


 そう言う雄一の首にぶら下がったままの2人が泣き叫ぶ。


「まだ、ユウイチのデレを目の前で見てないのですぅ! これは所謂、『神は死んだっ』なのですぅ!!」

「やっと念願が叶うと思いましたのにっ!!」


 振り落とそうと体を揺するが抱きついて離れない2人をどうしようかと考えていると体を引きずるようにしてやってくるホーエンに気付く。


「取り込み中、すまない。さっきの魔剣などの回収で思い出した事なんだが、パラメキ国に……」


 ホーエンの話を聞いた雄一は、ゲンナリした表情を見せると頭を掻く。


「すぐに回収に動けないのは分かった。だが、破壊されてようが部品1つも取り逃さないつもりで全回収しろよ?」

「心得た」


 ホーエンはそう答えるとアグートの介抱に戻る。


 それを見送って全てが終わった空気を無理矢理だそうとするが、未だに首に縋りついて泣き続ける駄女神と残念精霊がいた。


 涙のせいで、色々、美少女が台無しになっている事に溜息を吐くと仕方がないという空気を出して、そっと唇を額に触れる程度当てる。


 それをされた2人は一瞬で泣きやむと雄一から手を離して、額に両手をあてると破顔させる。


「俺は戦場に戻る。子供達を頼むぞ」

「ヌフフゥ、お任せなのですぅ」

「早いお帰りをお待ちしております」


 本当に嬉しそうにする2人を直視できなくなった雄一は、嬉しそうにする子供達と「逃げた」と騒ぐティファーニアとアンナの視線から逃げて、近寄ってくるクロを抱える。


「クロ、お前はここに残れ」


 そう言われたクロは悲しそうにするが、雄一をここまで運んだ事で体力が削られていたうえにホーエンに傷つけられた事により、ダメージが蓄積されていた。


 クロを子供達に預ける。


「ちゃっちゃと終わらせて、ダンガに帰ったら美味い飯を作ってやるからな!」


 子供達にサムズアップをしながら言うと子供達が歓声を上げる。


 それを聞いた雄一が笑みを返して背を向けた瞬間、1人の男に戻ると上空へと生活魔法の風の圧縮を利用して飛び上がる。


 ホーエンに放った竜と同じモノを生み出すと飛び乗る。


 水竜を操って戦場へ戻る為に空を疾走するように翔けた。

 雄一サイドは一旦終了、再び、戦場に戻ります。


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       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
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