表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/467

113話 王の背中らしいです

 どんどん暑くなってくる今日この頃、薄着な人が目に付きます……えっ? 深い意味なんてある訳ないじゃないですか(笑)

「そこの不審者、止まれっ!」

「不審者だと? お前の目はどこに付いてるんだ?」


 雄一は歩みも止めずに門番に近づいていく。


 門番の2人も槍を構えて雄一を迎え撃つようにするのを見て、呆れた声を出しながら雄一の肩に乗ってる幼女を指差す。


「門番の癖に俺の肩に乗ってる子が誰か分からないのか? それとも分かったうえで武器を構えているのか?」


 そこでやっと雄一の歩みが止まり、蔑んだ目で門番達を見つめる。


 門番同士で目を交わし合うと少し困った顔をするが武器を下ろさない。


 それを見たゼクスが雄一の前に出る。


「私は、女王、ミレーヌの息子、ゼクラバース。そして、この方の肩に乗ってるのが妹のスゥと知っても武器を下ろしませんか?」


 一瞬の躊躇を見せたが降ろす気配のない門番を見つめる雄一の瞳に殺気が宿る。


「ゼクス、こいつらは宰相に付く事を決めて、お前達を見捨てた者達のようだ。斬り捨てて通るぞ」

「待ってください、ユウイチ父……いえ、ユウイチさん、最後に1回だけ説得させてください」


 そう言ってくるので雄一はゼクスの顔を立てて、そのチャンスを与える。


 一度、下がった雄一にポプリが声をかけてくる。


「その、その、ユウイチさん? あの門番もそうですが、この先でも同じ事があると思いますが……ゼクス君の説得通じると思いますかぁ?」

「まあ、無理だろうな。人はそう簡単には変われないし、しがらみから解放されるのも大きなエネルギーが必要とする」


 雄一の言葉を受けて、ポプリが「そうですよね……」と諦めたような声を出す。


 2人の話を聞いていたホーラが、雄一に問いかける。


「だったら、なんでゼクスを止めないさ。無駄に傷つくだけじゃ?」


 ホーラがそう言ってくるが雄一は目を細めて、優しくホーラの頬を撫でながら話す。


「なんだかんだ言ってもホーラは優しいな。だがな、傷つくとしてもゼクスは進まないといけない。アイツは、王子、そして、王になる覚悟があるならな」


 雄一に頬を撫でられて恥ずかしいが跳ねのけるのも躊躇ってるホーラの顔が真っ赤になるので、撫でるを止めると何故かムスッとした顔に変わる。


「そうですじゃ、坊っちゃんはちゃんと分かってらっしゃる。王の道とは、綺麗事だと思ってもそれを掲げて民を導こうとするところからスタートしなくてはいけない事を……坊っちゃんは王道を進まれておるのじゃ」

「……そっか、だから私は、生まれがどうこう以前に駄目だったんだ」


 雄一とステテコの言葉を聞いたポプリが虚ろな瞳で地面を見つめながら、呟くがどうやらその内容を拾えたのは雄一だけであったようである。


 すぐに顔を上げるといつものポプリに戻っており、前を見据えるのを見て、今、聞いても答えないだろうと思い、雄一はポプリの言葉を胸に仕舞った。


「よく聞いてください。ゴードンは謀反人です。この国でのゴードンの剣となっていたフリーガンは壊滅しました」


 そう伝えたゼクスの言葉は先程のゼクス達の身を明かした時より大きい動揺を見せた。


 それを見ていた雄一は、「予想通りな結果になりそうだな」と悲しそうに呟く。


 ゼクスは必死に訴えながら言葉を紡ぐ。


「数々のゴードンの悪事を調べ上げました。もうゴードンを恐れる必要はないのです」


 雄一がダンガで受け取った裏取りされた書類の写しを渡していた。


 それを小脇に挟んでいたゼクスが掲げて、届いてくれという思いが溢れる表情で門番を見つめる。


 門番達は、迷いもなくゼクスに槍を突き出し、「それを寄こせっ!」と叫ぶ。


 門番達の行動に目を見開いたゼクスの襟首を雄一が掴むと後ろにいるテツを目掛けて放り投げながら、突き出された2本の槍を片足で地面に押さえつける。


「こいつらには、お前の言葉は届かねぇ―よ」

「それでも僕は……」


 悔しそうに言うゼクスに顔だけ振り返って笑みを浮かべる。


「お前はそれでいい。だが、駄目と分かったら非情な判断もできる優しい王様になれ。今日のところは俺に任せておけ」


 そう言うと雄一は2人の首を刎ねる。そして、手前に居た奴の体を持つと城門の向こうへと放り投げる。


 中から悲鳴が聞こえるがそれを無視して、声に魔力を込めて疑似的な山彦を実現させる。雄一が話した内容が壁などにぶつかり、城中に響き渡らせた。


「これから、王子と王女の帰還だ。その歩みを止めようとする者は全て敵と見做す。よく考えて行動するように。これは、生きるか、死ぬかの選択だ。相手が高貴な身分だろうが、貧民だろうが関係ない、等しく斬る。まずは門を開けろ。聞こえなかったという言い訳は聞かない。城中に居る者は全員聞こえているのは分かっている」


 そう言って城門を見つめるが、向こう側で動き気配がない。


 しかも、向こう側では「決して開けるなっ! 門を開けられないから脅して開けさせようとしてるだけだっ!」と叫ぶ声がする。


「お前達の気持ちは受け取った。これより推して参る!」


 そう言うと3mはあろうかという城門を巴で切り上げると真っ二つに斬り裂く。


 扉の向こうで待機していた兵達は、目を大きく見開いて固まっていた。


「ユウパパ凄いのっ!」


 雄一がやらかした事をびっくりして笑うスゥと現実が色々見えてきているゼクスは頭を抱える。


「あの大きさであの強度を誇る城門を一閃で壊すとか……修繕費がどれくらいかかるやら……」


 ゼクスのボヤキを聞いた雄一は、ヤレヤレといった顔をする。


「これでも加減したんだぞ? 本当なら前面に見えてる城壁ごと破壊しようかと思ったんだからな」

「で、できるんですかっ!」


 慌てて言ってくるゼクスに気負いもなく、「ああ」と答える雄一に絶句するゼクスとステテコ。


 廻りにおかしいという同意を得ようと辺りを見渡すゼクスであったが、驚いているのはフリーガンのボスのみで他は当然のような顔をしていた。


「皆さんもできたと思うんですか?」

「できないという発想が僕達にはないですね。街ぐらい壊滅させる事ができるドラゴンを初級魔法で1発で仕留めるのに城壁を壊せない訳がないですよ」


 テツの何でもないよ? と言わんばかりの説明を聞いて、ゼクスは今までの常識を破壊されていく。


 そんなゼクスの肩に手を置くホーラがニヤついて言ってくる。


「それを普通に受け止められるようになったら、家の子になった証拠さ」

「精進します……」


 そのやり取りを横目で呆れた顔で見ていた雄一は正面に顔を向ける。


 まだショックが抜けてないようで武器を構えたままの兵士を見つめる。


 ゆっくりと歩き、雄一は朗々と語る。


「ここの主の息子と娘にいつまで武器を構えている。武器を仕舞って道を開けて平伏せっ!」


 雄一が威圧を放ちながら言うと大半の兵士が慌てて武器を仕舞い、端によりしゃがみ込んで頭を地面に着ける。


 それを見守った雄一はスゥを肩から降ろすとゼクスに預ける。


 平伏す兵士達を見て慌てたのが、雄一の威圧で足を振るわせる隊長格の男であった。


「ば、馬鹿者っ! 王子と王女は死んだのだ、偽物に平伏す奴がある……」


 そこまでいった男に一瞬で間合いを詰め、顔を掴むと目を覗き込みながら言う。


「死んだ? 殺そうとして失敗したの間違いだろう?」


 既にあのパパラッチの残党がゼクス達を襲ったのが偶然じゃないという調べは付いていた。2人を殺せば、フリーガンで働かせて貰えるという言質を貰っていたようだ。


 雄一は隊長を軽く城の方へと投げるとその真下からウォータボールの小さいのを隊長の腹に放ち、連続で打ち上げる。


 持ち上げるように打っている為、どんどん高度が上がる。


 ボディブローを常に受け続けている様なモノで、隊長は涙と鼻水垂らしながら、「助けてくれ~」と叫ぶ。


 その助けを求める為に開いた口に水でできた触手のようなモノをねじ込むと隊長の体は肥大化していく。


 そして、限界を超えた隊長の体が破裂すると城の至るところから悲鳴が響き渡る。


「汚い花火だったな。さて……」


 そう言うと再び、視線を前に戻した雄一が、武器を構えたままの兵士数名を巴の一閃で真っ二つにする。


 巴を肩に載せて平伏している兵士達に命令する。


「さっきの汚い花火と転がってる死体を掃除しておけ」


 震える声で、「はいっ!」という言葉を聞いた雄一は王の間を目指して歩き始めた。



 あの後、武器を構えた兵士は出てこず、平伏して雄一達を見送る。


 雄一は城の中心を目指すように歩いている後ろでゼクスが苦悩した顔をして隣にいるステテコに胸の内を吐露する。


「どうして、ユウイチ父さんはあんな残酷な事をしたのだろうか……」

「坊っちゃん、それは違いますじゃ」


 ゼクスの言葉を否定するステテコを驚いた目をして見つめる。


「ならば、ジイはユウイチ父さんの考えが分かるというのか?」

「残念ながら全てではありませんのじゃ。ただ、あの隊長はどんなに言葉を尽くしても改心する事はなかったですじゃ。何故なら、ゴードンが駄目になったら、同じように終わる状況じゃったようですしな」


 ステテコは自分が調べただけでも、ゴードンがいなくなると居場所を失う馬鹿共は多い事を知っていた。

 だから、あの隊長は手が施しようがなかったとゼクスに伝える。


 それでも、と思うゼクスは呟く。


「それでも、あんな残酷な殺し方をしなくても……」

「確かに、坊っちゃんが仰る通り、他にも良い方法があったのかもしれません。先程から坊っちゃんに剣を向ける者がほとんどおりません、ほとんどの者が平伏しておりますじゃ。剣を向ける者はゴードンと心中するしかない者ばかり、この平伏している者達はゴードンを恐れて従ってただけの者……」


 そこまで言うとゼクスの瞳に理解の色が走るが、唇を噛み締めて俯く。


「ゴードンより恐ろしいと知らしめて、無駄に血を流すの抑えた……というのは分かりますが……」

「では、坊っちゃん。坊っちゃんならあの者より血を流させない方法が思い付きますか? 1年後、2年後に分かっても遅いのですじゃ。分かってからアレコレと言うのは馬鹿な歴史家に任せておけば良いのですじゃ」


 悔しそうにするゼクスは俯いて黙る。


 それを心配そうに見つめるスゥは状況が分からないが、「お兄ちゃま、大丈夫?」とゼクスの手をギュッと握って聞く。


 ステテコは、スゥに「大丈夫ですじゃ」と笑いかけ、ゼクスの肩に両手を載せる。


「坊っちゃんにはまだまだ時間があるのですじゃ。その時間をあの者が作ろうとしておる。坊っちゃんが理想とする王を実現すれば良いのです。ただ……」


 ステテコが言葉を一旦止めたのを振り返って、続きを促すと雄一の背中を目を細めて見つめる。


「あの者の生き様もまた王として理想型ですじゃ。よく見ておくと良いのですじゃ。あの強き男の背中を」


 ゼクスとステテコは雄一の後ろ姿を見つめながら歩いた。



 しばらく歩き続けた雄一は、豪華な扉の前にいる兵士に襲いかかられ、巴の一閃で斬り捨てるとゼクスとステテコに振り返って問う。


「ここが王の間か?」


 雄一の言葉に、「そうです、ここが王の間です」と答えるゼクスに頷いてみせる。


 そして、雄一は静かに王の間の扉を開いた。

 感想や誤字がありましたら気楽に感想欄へお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
       雄一の孫の世代             こちら亜人ちゃん互助会~急募:男性ファミリー~  どちらも良かったら読んでみてね? 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ