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黒幕1

ドラゴン退治が終わり……。

 ドラゴンの死体を片付けた後、私達は広間から小さな会議室へと移動した。経済会議をするには狭いけれど、会議の参加者を避難させるには十分な広さだ。


「ああ、ディルク! 良かった、無事で! あなたは責任感が強いから広間に残ったのでしょうけれど、本当は一緒に避難してほしかったのよ?」


 ヴラスタ様がディルク殿下の方に駆け寄りながら叫ぶ。ディルク殿下は、笑顔で答えた。


「母上、心配かけて申し訳ございません。でも、コリンナ達のお陰でこうして無事に帰って来る事が出来ました」


 ドラゴンのせいで腹部に怪我をしたものの、ディルク殿下は既に普通に歩けるようになっている。


 ヴラスタ様は、エルヴィン殿下の方に視線を移して声を掛ける。


「エルヴィンも、無事で良かった。護衛騎士の皆も」


 次の瞬間、ディルク殿下は急に真顔になり言葉を発した。


「……母上。そんなに皆の事を大切に思って下さっているのなら、どうしてドラゴンを活性化させたりしたのです?」


 その場の皆が固まった。しばらくの沈黙の後、ヴラスタ様は震える声でディルク殿下に尋ねる。


「……ディルク、何を言っているの? 私がドラゴンを活性化させただなんて……。変な冗談やめて頂戴」


 殿下は、ゆるゆると首を振って答える。


「冗談だったら良かったんですけどね……。広間の隅で、こんな物を見つけたんですよ」


 ディルク殿下は、懐から何かを取り出し、それを自身の手の平に乗せた。


――それは、いつもヴラスタ様が身に着けている、紫色のイヤリングだった。


「――っ!!」


 ヴラスタ様が、これ以上ないくらい目を見開く。


 恐らく、ヴラスタ様は会議当日の朝、イヤリングに呪術を施し広間に足を踏み入れたのだろう。

 そして、イヤリングから流れ出した瘴気がドラゴンを活性化。会議を滅茶苦茶にしたいヴラスタ様は、避難する際わざとイヤリングを広間に落とした。


 私と初めて会った時、ヴラスタ様は「魔術や瘴気に関連する病にも精通している」と言っていたけれど、相当な魔術の使い手なのかもしれない。


「……イヤリングは、たまたま落ちただけよ。イヤリングに魔術が掛かっていた理由は分からないわ。そもそも、どうして私がドラゴンを活性化させるだなんて危険な事をするの?」

「それは、アダーシェク帝国の皇帝でもあるあなたの父上に頼まれたからではないですか?」


 エルヴィン殿下の言葉を聞いたヴラスタ様が、グッと言葉に詰まった。


 そう。アダーシェク帝国は、瘴気をまき散らす魔物を利用してアドラー王国を混乱させようとしていた。そして、それに乗じてアドラー王国を征服しようと企んでいる。


 ヴラスタ様がフベルト陛下から直接今回の騒ぎを起こすよう命令されていたとしても不思議では無い。


 ツェーザルさんが、一歩前に出て口を挟む。


「アダーシェク帝国の者から手紙で脅されていた私は、一体誰が自分を脅しているのかと思い、手紙に残された魔力を追う事にしました。そこでヴラスタ様に辿り着きましたが、もう私は呪われていた。ヴラスタ様が手紙の主だと訴える事は出来ませんでした」


 ヴラスタ様は、フウと息を吐いた後、観念したように言った。


「……ええ。私がツェーザルを脅し、呪いました。実際にツェーザルの家族について調べたのは別の諜報員ですが、私がアドラー王国を裏切ろうとしていた事に変わりはありません」


 アルヌルフさんが、考え込むようにして疑問を口にする。


「しかし、王妃殿下はこの所毎日城に籠って会議の準備や公務をしておりました。さすがに遠い山奥にいるドラゴンをこの城まで呼び寄せる事は難しい。……もしや、ドラゴンを直接城に呼び寄せたのは、フベルト陛下なのでは? 王妃殿下は、イヤリングでドラゴンを広間に引き付けていただけで」


 私は、チラリとフベルト陛下の方を見る。ヴラスタ様が魔術に精通しているのだ。フベルト陛下が魔術に詳しくても不思議はない。


 フベルト陛下は、会議を台無しにした犯人だと追及されているにも関わらず、落ち着いた声で言った。


「いえいえ、私はそんな事はしておりません。……こう言っては何ですが、ヴラスタは昔から私に依存しているフシがありましてね。子供の頃から、私の為に無理をして公務の手伝いをしたりしていたんです。今回の事も、ヴラスタがアダーシェク帝国の事を思い勝手に行動を起こしたのでしょう。そちらが望むなら、私はヴラスタとの縁を切っても良いですし、ヴラスタにどんな罰を与えて頂いても構いません」


 ヴラスタ様は、フベルト陛下の方を見てすがるような目で聞いた。


「お父様! 連行される前に聞かせて下さい! お父様は……私の事を、愛していましたか!?」


 フベルト陛下は、冷たい目でヴラスタ様を見下ろすと、低い声で言った。


「愛してるかだって? 愚問だな。お前みたいな不義の子、愛する訳が無いだろう」


 それを聞いたヴラスタ様は、大きく目を見開いて固まった後、その場に膝を突いた。


「そんな……私は、一体何の為に今まで……」


 ヴラスタ様の瞳には、絶望の色が宿っていた。

ヘルムート達魔術師の力によって、現在ツェーザルに掛けられた呪いは解かれています。

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