世界の理と魔人の姫
帰ってきたフェリアス様は、私からことの顛末を聞くと、頭が痛くなってしまったみたいにこめかみを押さえた。
「それで……ラウル師匠にそれを渡してしまったの?」
「はい」
流石に、どんな効能があるのか未知数のエリクサーもどきを師匠さんに渡すのはいけないことだったろうか。
そういえば、何に使うつもりなのか聞いていなかった。
十中八九、リーティアさんに使うのだろうけど。
「でも、フェリアス様。もし私が同じ状況で、もしかしたらと思えば、フェリアス様だって無理にでも奪いませんか?」
「……」
確実に奪うという顔をしています。その沈黙は肯定の意ですよ、フェリアス様。
「だからこれは、平和的解決というものです」
「……アイリスが言うとそういう気がしてくるから困るな」
だから、ガーランドさんには秘密にしておいてほしいと思います。ガーランドさんの心配性に拍車がかかってしまいそうなので。
「……でも、もしそれでリーティアさんが目覚めたなら」
「ああ、アイリスにかかった呪いの解除にも何か進展があるかもしれないな」
「それに、師匠さんはお礼に、何があっても守ってくれると言いました」
「――――それ、つまり何かが起こる前提かな?」
そうなのかもしれない。
瞼の裏に浮かぶのは、海底神殿をあっという間に 沈めてしまった、過去の師匠さんだ。
「……他の男に守られるとか、アイリスは平気で言うけれど」
「……フェリアス様?」
フェリアス様の蒼い瞳が、今日も深海のように光を消してしまう。
本当に、フェリアス様の地雷の設置場所がわかりにくいのですが……。
「ラウル師匠が、アイリスを守ってくれるなんて、アイリスの安全がより確実になるのだから、喜ばないといけないのに」
「フェリアス様?」
「俺は……。そういえば、マーリンにも守られているよね。ロイも。ガーランドにリリー。アイリスはいつの間にか、たくさんの人間に大切に守られている」
……そうですね。地雷は多数あったようですね。
でも今、名前を挙げた人たちは、全員フェリアス様様のことも大切に思っていて、守ってくれるのだと思います。
「でも、そのことが嬉しいんだ」
「フェリアス様?」
「アイリスには、そんな暖かい世界で幸せそうに笑っていてほしいから。だけど……どこまでも、嫉妬してしまう、心の狭い俺もいて」
たぶんその世界には、フェリアス様もいるのだと、私は信じているけれど。
「私は二人きりでも良いですよ」
相変わらず、フェリアス様の考え方はドロドロとしたチョコレートみたいに甘くて、そして重い。
でも、それが嫌でないと言うのだから、私の気持ちも相当重いに違いない。
「あまり甘やかさないで」
フェリアス様は、そう言って笑った。
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イラストは木ノ下きの先生に描いていただきました。加筆改稿書き下ろしたっぷりの電子書籍版もどうぞよろしくお願いします(*´▽`*)