魔人の魔力の作用
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私は、シェラザード公爵家を久しぶりに訪れていた。
リーティアについて、私は知らなくてはいけないから。
公爵家を訪れると、真っ先にロイに出迎えられる。
その手には、やっぱりクッタリとしたままの、うさぎのぬいぐるみが。
まだ、まーくんは眠ったままらしい。
「アイリス姉様、お待ちしていました!」
ちなみに、今日のフェリアス様は本当に魔術師団の仕事があるらしい。
リリーさんに確認したから、今回は間違いない。
「ロイ……久しぶりね? 元気にしていた?」
「はい!」
「おい……。ロイのやつはやっぱり、嬢ちゃんの弟だな……」
疲れ切った様子のガーランドさんが、ロイの後ろから現れる。
まーくんが帰って来ないので、護衛は継続してもらっている。
S級冒険者は、忙しくないのだろうか?
「ガーランドさん! ロイのこと護衛していただいてありがとうございます」
「ああ、それは良い。まだ、フェリアスと嬢ちゃんへの恩は返しきれてないからな。それに、結構楽しく過ごしている。ロイも嵐を呼び込む体質みたいだからな!」
……やっぱり、ロイは危険な目にあっているのだろうか?
まーくんがたまに「おいおい、俺がいないと命がいくら経っても足りないんじゃないか? やっぱりアイリスの弟って感じだよな? 遺伝なのか?」と、長いながーいため息をついていたのを思い出す。
「あの……。危ないことをしたらダメなのよ?」
「僕は特に危ないことをしていませんよ?」
――――本当に? そんな気持ちを込めて、S級冒険者のガーランドさんを見つめる。
「嘘は言ってないな。ただ、向こうから嵐がやってくるだけで」
「――――姉様には言わない約束じゃないですか!」
どういうことなのだろうか。公爵家嫡男が数々の陰謀に巻き込まれる可能性があるのはわかるけれど、そんなにも危険だろうか?
「交易のために海に行けば、セイレーンを引き寄せて、俺とロイ以外全員眠ってしまうし。公爵家として神事のために山に登ればフェニックスが周囲の森を焼き払うし。S級冒険者として求められる成果、ロイと居るだけで簡単にクリアできてしまうな」
「――――え?」
「なんだろうな? 金色の魔力っていうのは、なにか危険を呼び込むような作用があるのか?」
そんなバカなことがあるだろうか……。
いくら魔人の姫から受け継いでいるからって。
……魔人? そこまで聞いて、私の中に密かに膨らんでいた違和感が急速に膨張していく。
あれ? リーティアも、まーくんもそれぞれの個人は特に人間に害をなす存在には思えない。
たしかに、まーくんは初対面の時、仮初の体だとフェリアス様の中にいたけれど、あとから聞いた話では、直接人間に害をなしたわけではないらしい。
私たちと、その考え方も、姿もそこまで変わらないように見える。
――――デュランは除くけど。人間にもそういった類の人はいるだろうから。
じゃあ、どうして魔人は世界を滅ぼすなんて思われているのだろうか?
それに、まーくんが現れた時に瘴気が強くなって魔獣が活性化したのは?
「えーと。とりあえず、図書館に行っていいかしら? あと、ガーランドさん、弟をよろしくお願いいたします」
「了解した。あと、この間渡されたエリクサー、フェニックスの羽根を配合したやつはもう作っちゃダメだぞ?」
「え」
「アレは、だめだ。世界の理が壊れちまうからな?」
ガーランドさんの言うことは、意味が分からなかったけれど、ちゃんと言うことは聞いておこうと、私は心に誓うのだった。
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イラストは木ノ下きの先生に描いていただきました。加筆改稿書き下ろしたっぷりの電子書籍版もどうぞよろしくお願いします(*´▽`*)