魔人と姉弟
柘榴石のような赤い瞳。
「デュラン」
「思い出してくれたの、リーティア」
「……デュラン、私の弟を返して」
「人間の?君には、本当の弟がいるじゃないか」
リーティアに、弟がいたことは新たな情報だけれど、今はロイを助けるのが先だ。
「巻き込みたくないの……。お願い、弟のこと元に戻して」
「元に戻したら、リーティアは俺と一緒に来る?その体を壊して」
「……じゃあ先に、弟を元に戻して。それからよ」
私のことを、リーティアという魔人と勘違いしているらしいデュラン。そのことを利用するのに躊躇いはなかった。
「そう……」
目の前に、眠っているロイが現れた。
「……ロイ!」
駆け寄ろうとした私は乱暴にデュランのもとに引き戻される。無理に掴まれた手首には、はっきりと赤く跡が付いた。
「――――ロイをもとの体にもどして?」
「リーティアが一緒に来てくれたら……その後にね?」
私の体を壊して連れていくとデュランは言った。
普通体を壊したら、死んでしまうと思うのだけれど、魔人の場合は違うのだろうか。
元の世界に帰ることができるのだろうか。
――――でも、残念ながら私は魔人ではない。
私の場合は、この世界の人間でもないから、死んだ時どうなるのかなんて予想もつかない。でも、たぶん元の世界の私は死んでしまっているから、戻ることができるわけもないだろうし。
「ねえ、公爵令嬢の体を壊せば、私は元に戻ることができるの?」
「――――たぶんね」
「たぶんって?」
「だって、今までこの世界に来た魔人なんて数えるほどだ。それに、戻って来た魔人もいない」
私の中で、デュランのヤンデレ認定が最高値になった。
断罪後に初めて会った時のフェリアス様に対しても、だいぶ警戒レベルは最高値だったけれど、今になって思えば理由があったとも考えられる。
それに、フェリアス様は私のことも、私が大事にしているものも優先してくれる。ちょっと、その優先順位が一般よりも高すぎるだけだ。
そういえば、王都を消し炭にしようかなんて物騒なこと言っていたけど、最近はあまり言わなくなったわね……。
――――いけない。あまりのことに現実逃避してしまったわ。
「この世界で、一緒にいるのではいけないの?」
私は聞いてみた。なぜ、デュランは魔人の世界に戻ることにこんなに執着しているのだろうか。
「だって、この世界にはアレがいる。アレがいる限り、リーティアは俺のものにはならないだろう」
アレって何だろう。でも、たぶんあの人のことだろう……。フェリアス様と同じ、白銀の魔力を持った筆頭魔術師。神殿を海に沈めてしまうほどの大魔法を、やすやすと使った人。
私は、無意識に胸に下げたフェリアス様の瞳の色の魔石を握りしめる。
その瞬間、デュランの様子がおかしくなった。
「ほら、リーティアはそんな顔して、アレの魔力がこもった石を握りしめる。俺なんか眼中にないように」
――――なるほど。デュランの地雷はフェリアス様よりわかりやすいわ。でも……危険ね。
今は、このネックレスを外すしか怒りを鎮める方法はないみたいだ。
「バカアイリス。それ外したら、直後に殺されるぞ」
その時、ハスキーで子どもっぽいのに、どこまでも頼もしい声がした。
「まーくん……――――その恰好?」
「はあ、悪いけど病み上がりみたいなもんだからな? 省エネってやつだ」
私の目の前には、あこがれの魔人うさぎがいた。
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イラストは木ノ下きの先生に描いていただきました。加筆改稿書き下ろしたっぷりの電子書籍版もどうぞよろしくお願いします(*´▽`*)