過去と現在の接点そして未来
たぶんこれは、キスなんかじゃない。ただの魔力の譲渡だ。それでも、私の顔はきっとりんごみたいに赤く染まっている。そして、微笑むまーくんは妖艶で、すごい色気を放っている気がする。
「あーあ、戻ったらフェリアスに殺されるかな」
幾分か顔色がましになったまーくんが、こちらを上目遣いにうかがってニヤリと笑う。
「あの……もう少し魔力」
「大丈夫。これだけあればアイリスを帰してやれるから」
「――――まーくんは」
「もうちょっと寝てから帰る。それまでここに来るなよ。アイリス?」
グラグラと強いめまいがして、世界に光が戻っていく。光の中で、誰かが私の腕をつかんだ。見えなくてもそれが大好きな人の手だってわかる。
「フェリアス様……」
「どうしてアイリスは、いつも巻き込まれるんだ」
抱きしめられた温かさ、安心感。すべてがここが現実だって教えてくれる。
「まーくんが助けてくれました」
「ああ、わかってる。それにしても……」
額にフェリアス様の唇がそっと触れる。
フェリアス様と、あの白銀の魔力を持った男性には関係があるのだろうか。
そう、筆頭魔術師のマントを身に着けていた。
「早くマーリンが戻ってくるようにしないとな」
「フェリアス様……」
どうしたんですか。ずいぶん心が広いじゃないですか。珍しいですね?
でも、良い傾向だと思います。熱い友情ってやつですね?
「こんな風に見ているばかりで、誰かがアイリスを助けるのを待っているなんて、俺には耐えられそうもない」
「フェリアス様……」
フェリアス様に助けられるだけなんて私だって耐えられない。そう言いたかったけど、その言葉は飲み込んだ。
「……それにしても、あんな巨大な魔法が行使されてデュランはどうなったんでしょうか」
「――――おそらく、あそこまでの攻撃を受ければただでは済まなかっただろうな」
それでも、今もデュランは生きていて、聖女にひどく執着している。
なぜ聖女が扉を閉めるための生贄に捧げられ続けていたのか。
そして、私が閉じ込められたのはなぜなのか。
今回のことで私には気が付いたことがある。私が、悪役令嬢アイリスの体に入ったのは生まれた時のことだった。つまり私は異世界転生したのだろう。
それに対して魔人は、生まれた時からこの世界に来るわけではない。異世界転移というやつなのだろうか。もし、今まで一緒にいた人の中の人が魔人になったとしたら。
「それって、魔人にとっても怖いことじゃないですか?フェリアス様」
「……アイリスは面白いことを言うね」
「だって、住み慣れた世界から急に違う世界に来てしまうんですよ?それも違う人の体になって」
「――――アイリス。魔人にも理由があるのかもしれない。それでも俺は」
その言葉に続くのは、なんなのだろう。でも、それ以上フェリアス様が言うことはなく、口を閉ざしてしまった。
「アイリス……遠くに行かないで。アイリスを守ることくらいしか俺の魔法は役に立たない」
「フェリアス様こそ……。そんなこと言って危ないことばかりしているとまた、助けに行っちゃいますよ?」
「それは……困るな」
フェリアス様は私のことを抱きしめたままで離してくれる様子がない。
そして、私たちが普通に幸せになることの難易度はなぜか相変わらず高い。
それでも、少しずつ前に進んでいるのだと信じたい。
あのあと、リーティアと白銀の魔力をした男性がどうなったのか。
それがわかった時に、私がこの世界に来た意味がわかる。
――――そんな気がした。
第2章完結。第3章準備中です。
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イラストは木ノ下きの先生に描いていただきました。加筆改稿書き下ろしたっぷりの電子書籍版もどうぞよろしくお願いします(*´▽`*)