魔人と聖女
誤字報告ありがとうございます。
✳︎ ✳︎ ✳︎
銀の髪とアメジストの瞳。人にはいない色合いの瞳がこちらを見つめる。
「少し食べた方がいい。あと寝ろ?」
「まーくん……」
「フェリアスは帰ってくる。それに何かあれば、そのネックレスに何かしら反応があるだろ」
たしかに、フェリアス様が注いだ魔力は、まだ繋がっていることを証明するみたいにキラキラと白銀の魔力を時々放つ。
でも、どう考えてもフェリアス様の様子は普通じゃなかった。それに魔人うさぎも「来た」と言っていた。
「まーくん、私にできることはないのかな」
「お姫様が動くと、たいてい不幸な結末になる。お伽話も証明してるだろ。ここで待つのが最善だ」
まあ、たしかにお姫様の場合は自分から行くと海の泡になるかもしれないけれど。この世界のお伽話でも、そうなのだろうか?
「……フェリアス様」
眠らず待っていたのに、明け方にウトウトとしてしまった時に、それは起こった。
✳︎ ✳︎ ✳︎
目の前にフェリアス様が倒れている。
「――――っ。フェリアス様!」
駆け寄るが、どうも眠っているだけに見える。少しだけホッとして頬に触れようとした時、手首を強く掴まれた。
「見つけた」
振り返ると、そこには柘榴石のように赤く輝く瞳。長い銀の髪。
以前からいたという魔人に違いない。
「ああ、君が元気そうで嬉しいよ」
以前、目を見てはいけないとまーくんが言っていた。
「やっと、君の運命を変えることができた。約束通り俺と一緒に来て?」
約束なんてした覚えがない。でも、たしかに悪役令嬢アイリスの中に閉じ込められる前に、会ったことがある。
「フェリアス様は、どうしたんですか?」
「君の力で守られているんだね?殺そうとしたのに、できなかったから眠らせた」
魔人の声には、抑揚がない。
フェリアス様が生きていることに安心したけれど、危機は脱していないみたいだ。
「君が笑うところが見たい。今度は誰にも傷つけさせたりしないから」
「私は……あなたと会ったことがありません」
「覚えていないの?そんなに同じ魂の色をしているのに。こんなに待っていたのに」
だめだ。話が通じなさそうだ。それよりも、フェリアス様を安全な場所に……。
そう思った瞬間、パキンッと硬質な音を立てて何かが割れた。
「見つけた。本当に世話が焼けるよなアイリスは」
「まーくん!」
「……フェリアスも情けない」
まーくんが、魔法で紫色の剣を作る。
「とりあえず、借しひとつだからな」
「お前は魔人なのに、なぜ邪魔をする?」
「お前が、アイリスのこと不幸にするからだ」
まーくんの剣が、赤い目の魔人に斬りかかる。しばらく攻防が続く。まーくんの方が押しているようだった。それなのに。
「……ちっ。時間切れか。いくら大魔道士が作った器とは言ってもなぁ」
ポンッと音がしたような気がした。その瞬間、まーくんは、魔人うさぎの姿に戻ってしまう。そのまま、赤い目の魔人に跳ね飛ばされて、私のところまで転がってくる。
「くそっ、ちゃんとした器があれば負けたりしないのに。逃げるぞ、アイリス!」
「フェリアス様は?!」
「ネックレスがある限り、あいつには手が出せない。今は撤退するんだ」
「――――だめ。フェリアス様を連れて逃げて」
こんなところに、眠ったままのフェリアス様を置いてなんていけない。
「……そういうと思った。アイリス、フェリアスのつけているネックレス、外せるか?」
「う……うん」
私はフェリアス様のネックレスを急いで外す。その瞬間、眩い光と共に魔人うさぎがただのぬいぐるみになって、私の腕の中に落ちてくる。
「ちっ。奥の手なんだけどな」
フェリアス様が、まーくんみたいな喋り方をする。唖然としている間に、たしかに手を掴まれて、次の瞬間に私はベッドの上で目を覚ました。
最後までご覧いただきありがとうございました。
『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。





イラストは木ノ下きの先生に描いていただきました。加筆改稿書き下ろしたっぷりの電子書籍版もどうぞよろしくお願いします(*´▽`*)