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父親

 清人と樹里が四人と住み始めてからかれこれ半月、二週間とちょっとが経とうとしていた。

 掃除や食料品の買い出しが当番制となっている中に、二人の名前が加えられていた。つまるところ、割と平和な日々が続いていた。

 マスクオブデスティニーで、実際に行動をしていたうちの二人が抜けたことにより、事件の数が一気に減るのは目に見えてはいたが、減るどころか一切合切ピタリと止まってしまったのである。どれだけマスクオブデスティニー絡みによる事件が相次いでいたか、と言うのがよくわかる平和さであった。

 そんな日の夕方、食料の買い出しへと向かっていた清人と奏太。

 清人に対して、初対面でそこそこな悪印象を持っていた奏太だが、それは今もあまり変わってはいなかった。清人はそこまで気にしてはいないのだが、奏太は意外と根に持つタイプらしく、あまり仲よくしようとは思えなかったようだ。

 そんな二人が買い出しに来ているのは、すべて琴音のせいだと言える。

 琴音が二人の仲を心配(?)して、わざと二人で行くように仕向けたとかなんとか。


「…………」

「…………」


 そんな二人の買い出しは、とても静かだった。

 そして屋敷がある森へ入ろうかという時、その静寂を打ち破るかのようなタイミングで、一人の男が現れた。


「やぁ清人。久しぶりだね」

「……誰だ?」

「……父さん」

「父親……?」


 清人が小さくつぶやき、奏太が首を傾げ、目の前の男がニコリと口角を上げた。

 清人が一歩後ずさったのを見て、奏太は彼の父親の話を思い出す。

 マスクオブデスティニーのボスにして清人と樹里の父親。彼の指示によって樹里や清人、マスケラの三人は動き、仮面を探していた。例えるならば、ロケット団とサカキ様のような関係である。

 そんな父親が清人と奏太の前に現れるというのは、元々予想はされていた。

 どこからか入手していた情報を元に、二人の居場所を突き止めるのは時間の問題だろう、と考えていた。それが今日だったのだろう。

 そして言わずもがな、その父親こそ、あの時マスケラと話していた例の紳士である。

 その紳士が清人に向けて話しかける。


「清人。家出はまだ長引くのかい?」

「僕と樹里はまだ戻りません」

「戻らない、というと?」

「今は彼らと住んでいます。なので、僕らの心配はしなくても大丈夫です」

「そうか。元気で暮らしているのか。なら問題はない、と言いたいところなのだけど、こちらとしてもいろいろと不都合でね」


 そう言い笑顔を見せる紳士。その笑顔に、奏太はどこか恐怖を感じ、一歩後ずさってしまっていた。


「人員不足なのは清人が一番知っているだろう」

「…………」

「とりあえず、二人の仮面は返してもらいたい」

「……もし断ったら?」


 笑顔で言う父親に、恐る恐るといったふうに清人が尋ねる。


「拒否権はない」


 即答だった。

 その直後、二人は背後に別の気配を感じ、サッと横に飛びのいた。

 そして二人がいた場所に、赤と青のマスケラが飛びかかり、そのマスケラの奥に黒マスケラがいた。

 奏太はとっさに持っていた猿の面を付け、戦闘態勢をとる。しかし清人は戦闘要員ではないため、二対一では分が悪いと奏太は思った。


「奏太君! 逃げろ!」


 奏太が勝つ算段を模索しようとしたとき、清人の声が周りに響き渡った。


「逃げるったって、お前はどうすんだよ!」

「僕のことは放っておいて、君だけでも逃げろ!」

「おやおや。自分は犠牲になって、友達だけ逃がすのか。ずいぶんとたくましく育ったものだ。父親として誇らしく思うよ」


 そういう父親に対し、清人と奏太はその言葉を無視して互いの顔を見合う。

 奏太は二人では逃げきれないことを悟り、清人は奏太を逃がすことを優先しようという意思を目で伝えた。そして奏太は叫んだ。


「の、伸びろ、如意棒!」


 その声に呼応して手に取った如意棒が地面に突き刺さり、その反動で奏太は斜め上へと跳ね上がるように飛んだ。

 しかしそんな奏太に赤マスケラが飛びついた。


「もうそれは見た。二度通用すると思うなよ?」


 その奏太の目は、清人が持っていた買い物袋を、黒と青のマスケラに向かって投げているのを捉えていた。

 奏太はくっついてきた赤マスケラに向かって言う。


「人を舐めすぎだ」


 そう言うと伸びていた如意棒の先から手を離し、奏太と赤マスケラは宙へと放り出された。

 如意棒は縮み、元の場所へと戻っていく。

 驚く赤マスケラに対し奏太はニヤリと笑みを浮かべ、そのまま重力に逆らわずにそれなりの高さからまっすぐに落ちていった。

 そして赤マスケラが落下中に縮んだ如意棒の根本の部分を見ると、そこには猿の面を付けた奏太がもう一人立っていた。

 奏太は如意棒を伸ばすと同時に、先端に分身を付けて飛ばし、あたかも本体が飛び上がったように見せたのだ。勢いととっさの判断が功を奏し、本体は完全にフリーとなった。それもこれも、その考えを見抜き、マスケラの分身を生み出す本体の黒マスケラの目くらましを行った清人の活躍があってこそだと言えよう。

 そしてフリーとなった奏太は、そのまま別方向へと如意棒の先を向け、再び叫ぶ。


「伸びろ如意棒!」


 今度こそその勢いで飛びあがった奏太は、そのまま森の中へと消えていった。

 その一部始終を見ていた父親と、残された清人と分身の猿をつけた奏太、そしてマスケラ。

 その後の戦いはマスケラの一方的な戦いで、前回のリプレイを見ているかのような戦闘が繰り広げられ、あわよくば清人も逃がそうとして残した分身は数分と持たずに消えてしまい、結果清人は父親とマスケラの手にとらわれてしまったのであった。


ムサシ=樹里

コジロウ=清人

ニャース=マスケラ?

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