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ラスボスと黒幕

 時は少し遡り、ここはとあるお屋敷。仮面をつけて戦う少年少女たちが住む屋敷とはまた別のお屋敷。

 そのお屋敷の一部屋に、例のマスケラと一人のダンディズムあふれる紳士が対面式のソファに座って話をしていた。


「そうか。今までご苦労だった」

「いえ。旦那様の言われた通りに面倒を見ていただけなので、俺としても肩の荷が下りたって感じですよ」

「しかし、やつらのアジトまではわからないのだろう?」

「ですね。申し訳ありません」

「いやいや。君はよくやってくれている」


 紳士は夜なのにスーツを着ていた。これが私服だとでも言わんばかりのきっちりかっちりした佇まいで、もしかしたら別室に金髪のワイン好きの英雄王がいそうな感じではあるが、さすがにそこまではなかった。


「いつごろ戻ってくるのだろうか。いや、掃除はした方がいいのだろうか……」

「あの……家出、ってことで良いんですか?」

「まぁ子どもならばするものだろう?」

「旦那様もしたことがあるんですか?」

「もちろん。可愛い子には旅をさせろというしな。幼かった私もその教え通りに家出をしてみたこともあったよ」

「はぁ。なんか意外でした」


 その言葉を聞いて、紳士は笑った。


「とはいえ、このタイミングでの家出……というか敵側への寝返りは、我々の敵になるということだな」

「そうですね。俺の分身も親分にやられちゃいましたし」

「裏切りか……」


 しばしの沈黙。

 そして紳士が口を開く。


「実の娘と息子が敵か。やりにくいな」


 チャラーチャララー。

 そう言った直後、近くに置いてあった携帯が鳴り響いた。

 マスケラは日曜の夕方の長寿番組の着信音にはツッコまず、紳士が携帯を取るのを見ていた。


「あぁ。私だ」

『もしもし。起きてたかい?』

「いや。報告をいろいろ聞いていたところだ。そっちは寝起きかな?」

『そんなに寝て起きるだけの生活をするほどなまっちゃいないさ。そんなことより、お宅の子供たちが家でしたらしいじゃないか』

「もうそんなことまで知っているのか。さすがに手が早いな」

『ははは。私の情報収集能力をなめないでもらいたいね』

「それなら早く仮面の在処を見つけ出してほしいもんだね」

『全部を調べられるならとっくに調べているさ。それでも四つは見つけてやったんだ。感謝してほしいもんだよ』

「感謝はしているさ。ただ私の目的にはまだまだ足りないのでな」

『欲張りなやつだねぇ』

「それはお互い様だろ」

『ははは。かもしれないねぇ』


 軽口を交えつつ電話越しに会話をする紳士。会話の内容から長い付き合いのように聞こえる。そして仮面を手に入れることができたのは、電話相手ということがわかる。


『子どもたちのことは心配かい?』

「どうせ場所も掴んでいるんだろ? じゃあ心配じゃないかな」

『そうかいそうかい。それならいいんだ。お金持ちだからって甘やかし過ぎは良くないからね』

「わかっているさ。きちんと今度お灸を据えに行かんとな」

『怖い怖い』

「なに。子どもの粗相の後始末と、子どもの素行を正すのは、いつの時代も親の役目だ」

『まぁ知りたいことはいつでも教えてあげるから、いつでも連絡しておいで』

「どうせ特急料金とか言ってぶんどるつもりだろう」

『失礼な。特急料金じゃないよ。新幹線料金だよ』

「かわらないではないか」


 その後、一言二言交わし、紳士は電話を切った。


「さてと。今度迎えに行くとするか。その時はお前も来るんだぞ」

「かしこまりました。旦那様」

黒幕が誰かわかった時点で、誰にも言わないでください。

ネタバレ禁止!


……僕だってまだ考えてないんだから、勝手に想像しててください。←

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