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浮かない顔

 マスケラとの壮絶な戦いがあり、屋敷に新しい同居人が増えた翌朝。

 いつものように学校へと向かう面々の中には、いつもとは違う顔が混じっていた。


「アレだな! ドンドン人が増えてったりしてな!」

「これ以上増えたらもう集団下校よ」

「幼女、ハンカチ持った?」

「いい加減に子ども扱いをやめろー!」

「あはは」


 ワイワイガヤガヤと進む五人。その集団の最後尾を歩いていた悠真。

 いつもそこまで会話に参加はせず、皆をまとめることに専念しているような役割の悠真だが、今日はどこか浮かない顔だった。それもそのはず、昨日の一件でマスケラの大敗北をしたのは悠真だけである。もしもあの時、雪乃が自分とマスケラの間に割り込んでこなければ、自分の仮面は取られていたのではないか。これではリーダー失格ではないだろうか。そんなことが浮かんでは消え、浮かんでは消えしているうちに、結局朝を迎えてしまったのだった。

 そんな悠真の様子に気が付かない五人ではない。しかし、どう声をかけていいものかわからず、結局いつも通りを貫き通し、悠真の復帰を願うことぐらいしかできないと思ったのだ。だから昨日のことを忘れるかのように明るくふるまっている節もあった。新入りの二人もわかるくらいに落ち込んでいた。


 そして時は少し流れて昼休み。

 

 授業が終わるなりどこかへ行ってしまった悠真のことを探しに、琴音と清人は一年生組の教室を訪れていた。清人にくっついてきていた女子たちは、琴音のことを彼女だと勘違いしたようで、二人が出ていった教室内では、魔女化しそうなほどの絶望の空気が立ち込めていたが、それはまた別のお話。


「悠真? 来てないぜ?」

「マジかー。どこ行ったんだ?」


 琴音は教室に入るなり奏太に尋ねると、その返答に頭を抱えた。


「やっぱり琴音も気が付いてたか」

「当たり前でしょー。逆に気が付いてないっていうほうがおかしいっての」

「…………」

「……何?」

「いや、琴音ってそーゆーところに鈍感っぽかったからさ」

「雪乃よりは敏感よ」

「私?」

「こっちの話」


 急に名前を呼ばれた雪乃は首を傾げた。その横では、奏太が琴音に飛びかかっていたが、師匠に勝る弟子はいないので、いともたやすくえげつないみぞおちパンチを喰らって悶絶していた。

 その悶絶している横で、雪乃の手から逃れてきた樹里が清人のそばへと走ってきた。

 そんな妹の肩に手を当てながら清人が言う。


「悠真くんがあんなに落ち込むことはやっぱり珍しいわけ?」

「珍しいって言うか……」

「初めてじゃね?」

「初めて?」


 互いに顔を見合わせてそう言う奏太と琴音と雪乃。


「だらしない! 男ならもっと根性強く生きんか!」

「ドダンバデンデンヌケヌケドン!」

「へっ!? なに!?」

「悠真をあんまり悪く言うと、私も怒るよ」

「ううっ……」


 わけのわからない言葉で脅し、その後の怒る宣言によって樹里を黙らせた雪乃。樹里はそのまま清人にしがみついた。そして頭を撫でられて『今のは樹里が悪い』と言われた。

 とはいえ、今の状況は非常にまずい。というのは誰かが口に出さなくても全員がわかっていた。

 戦力的にとか生活的にとかではなく、普段落ち込まない人間の励まし方がわからないのだ。樹里のように精神論を唱えたところで、悠真には効果がなさそうだし、一方で奏太や琴音の関係のように、喧嘩して次の瞬間には仲直り、というわけにもいかない。どうしたもんかと頭を悩ませていると、清人が口を開いた。


「ここは僕に任せてくれないかな?」


 笑顔でそう言う清人の顔に、全員の視線が集まった。


「お前、そーゆーのできるのか?」

「任せてよー」

「イケメンには大抵裏の顔があるって言うしなぁ……」

「それはみんなあるでしょ」

「……幼女、信用していいの?」

「兄ちゃんは兄ちゃんだから大丈夫だ!」


 樹里のなんとも説得力のない発言に、ますます清人への期待が薄れてしまったが、三人は顔を見合わせて、ここはとりあえず清人に任せることにしたのだった。

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