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居候の増加

「よし。行くぞ」

「ほ、ほんとにいいのか? 迷惑なら私たちは遠慮するけど……」

「大丈夫」

「雪乃……」

「幼女は小さいからバレない」

「なんでやねんっ!」

「はいはい。静かにしようねー」


 現在、四人が暮らす屋敷の玄関前に、夜のお仕事から帰ってきた面々が集まっていた。

 駆け落ち同然で出てきた樹里と清人の住むところが無くなってしまったため、言い出しっぺの雪乃の提案に乗っかった調子のいい奏太を先頭に、グランマへ交渉しに行くところだ。これだけ大きな屋敷なのだから、部屋はあまりに余っている。きっとそこいらの建物の中では最大級の大きさであろう。とはいっても、そこいらの建物まで数キロ離れているのはご存じのとおりである。

 一応警戒をするという理由で、最後尾の悠真と琴音はそれぞれ蜘蛛と阿修羅を付けたままである。

 先頭の奏太が屋敷の扉を開き、中へとずんずかと進む。それに続く雪乃と樹里、一歩下がって清人、さらに後ろに琴音と悠真。

 もちろん毎日暮らしている屋敷内なので、迷うことなくグランマの部屋へと突き進んでいく。

 そしてついに目的の部屋の前へ到着。


「奏太、いきまーす」


 扉を開けた。


「奏太。入る時にはノックをしなっていつも言っているだろう? やりなおし」


 初手、注意。

 頭をポリポリとかいた奏太が戻って扉を閉める。

 そしてノックをして再度開く。


「はい、おかえりなさい。じゃあ今日の報告よりも先に、聞くことがあるみたいだから聞こうかね」


 奏太にそう言ったかと思うと、グランマは腕を組んで奏太を見据えた。

 その視線に少し圧されてしまい、一歩後ずさる奏太。

 その横を雪乃がスルスルと通り抜け、グランマの前へと立つ。


「グランマ。お願いがあるの」

「おや、雪乃からお願いとは珍しいね。なんだい?」

「そこの二人をここに住まわせてほしいの」


 雪乃は顔だけで後ろを見ると、部屋に入ってきていた樹里と清人が少し怯えた様子で頭を下げた。


「……どういう関係だい?」

「さっきまで私たちの仮面を狙っていた敵」

「ちょっ、雪乃!」

「でも今はもう仲間になった。だから敵じゃない」


 雪乃の発言に驚いた奏太だが、グランマは眉を上げた程度だった。


「ふむ。そっちの二人の親御さんには了解は貰っているのかい?」

「貰ってない。二人ともそこから逃げてきたから」

「ふーん……で、どうして雪乃はそこの二人をそんなにかばうんだい? もともと敵だったんなら、倒しちまえばよかったじゃないかい。仮面だって持ってるんだろうに」

「昨日の敵は今日の友って博士も言ってた」

「どこの博士かは知らないけどね。昨日の敵は今日も敵だよ」

「じゃあ昨日まで友達で今日敵だったから、明日以降は友達に戻る」


 グランマの言葉に対し、やたらと屁理屈を並べる雪乃。そんな雪乃に呆れたのか、大きなため息をつくグランマ。


「わかったよ。ここに住んだらいいよ。雪乃がそれだけ言うんだ。よっぽど信頼できるんだろうね」

「ありがとう。グランマ」

「お礼なんていいよ」

「グランマ」

「なんだい?」

「見てたんでしょ?」


 雪乃の言葉の意味が分からずに、奏太と樹里は首を傾げる。清人は小さく笑った。


「見てた?」

「うん。私、まだ二人が仮面を持っていることを言ってない。だから今までのことを見てたんだと思った」

「はぁ。雪乃。二人を住まわせてあげるから、聞かなかったことにしなさい」

「……わかった」

「部屋は好きなところを使うといいよ」

「じゃあ幼女と私は同じ部屋」

「おいっ!」


 樹里のツッコミで交渉は幕を閉じた。

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