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説得と解析

 ホワイトマスクは戦闘を見ていた。自分は戦闘要員ではないので、ただ見ていることしかできなかった、というのが正しい。

 ホワイトマスクの能力は、『お面に力を与える』ことだ。以前正義組が戦った集団がつけていたお面に不思議な力があったのは、このホワイトマスクの力によるものであった。ホワイトマスクは『能面』という日本の仮面と似ており、物によっては笑顔だったり怒りだったり老人だったり女性だったり男性だったりと、様々な表情がある。本来は『能面』が本家本元なのだが、ホワイトマスクはその能力の一端を受け持っているんだとか。そのこともあってか、元の仮面の本来の能力の一部を引き出すことができる。しかしその力も非常に弱く、『形だけ』『見た目だけ』と言うものがほとんどである。たとえば『ビーム』なら『見た目だけで威力はスカスカ』だったり、『強力な電気』なら『ビリっという静電気』だったりと、弱体化した能力を与えられる程度だ。なので、非戦闘要員なのである。

 そんな非戦闘要員は、現在妹の樹里がかぶっている鬼の面の力に守られていた。


「どりゃあぁ!! うおりゃぁあ!!」

「幼女。落ち着いて」

「ちょこまかすんなぁああ!」


 大きな金棒を軽々と振り回す鬼の幼女。雪乃はそれを軽快な動きでひょいひょいと避け続けている。

 雪乃の後ろでは、二色のマスケラによる攻撃を『マスケラの能力がまだわかってはいない』ということで避けまわっている三人がいた。マスケラは、攻撃を開始する時に(まと)を一人に絞って二色で息の合った攻撃を繰り出す。そして他の二人が攻撃に参加してきたときは、サッと同時に攻撃をやめて回避に徹する。

 ただこれだけのことなのだが、マスケラの能力がまだよくわかっていない三人からしてみると、非常に慎重にならざるを得なかった。

 そして攻撃を避け続けている雪乃なのだが、雪乃は雪乃で樹里を説得させようと試みていた。同じ年齢で同じ学校で同じく仮面をかぶる者同士、和解が一番だと考えているのだ。どんな物語でも、最初に出会った敵とは仲良くなれて仲間になれると信じ込んでいるため、まだその可能性を捨てたくはないのだ。


「幼女。こんなのってないよ。分かり合えるってまどかも言ってた」

「誰じゃぁああ!!」


 ……雪乃はどうも説得がへたくそのようだ。

 悠真あたりならもう少しうまくやるのだろうが、マイペースすぎる雪乃の言葉は届きにくいようだ。

 ひょいひょいと攻撃をかわしている雪乃だが、それでも攻撃をしないのは、かわすのが精一杯だと受け取れる。鬼の金棒を避け続け、説得をする。攻撃をするスペースが残っていないということだ。狐ならばこういう場面では活躍できるのだろうが、それでも兎のままなのが攻撃の意志はあまりないという証拠なのだろう。狐が本気を出したら一発ッスよ。

 そしてマスケラに苦戦している三人へと場面は戻る。

 元々格闘技の心得があり少し落ち着いたほうが良いと思い始めた琴音は、自分の手の届かない辺りの真上に粘着性の無い糸を数本張り、悠真と奏太へ指示を出した。


「二人とも、ジャンプ!」

「へ? よっ……ってうぉおおおお?!」


 何かわからずにとりあえず飛んだ二人は、そのジャンプが自分の範疇を越えた跳躍力を生んだことに驚き、落下中に何かに引っかかるようにして止まった身体にまた驚いていた。

 二人が飛んだ際に、あらかじめの付けていた糸で二人の身体を引っ張り、宙へと舞い上げたのだ。そして先ほどの糸の上へと着地させたのだった。そして一息つく。


「こ、琴音の糸か。びっくりしたぜ」

「ちょっと一息ついた方がいいと思って」


 悠真も体勢を立て直して、ピエロの面を取った。さすがに話し合いが必要だと思ったのだろう。


「マスケラの能力がわからない。二人は何かわかった?」

「いや何にも。阿修羅だと戦いにくいのはわかった。攻撃に移れん」

「それは奏太の力量の問題じゃないの?」

「うるせえな。あんだけ連続で手数も倍で攻撃されたんじゃ、片足じゃ避けらんないっての。だから攻撃できない。証明終わり」

「喧嘩は後にしてね。琴音は? なんかわかんなかった?」

「んー……」


 悠真の質問に、顎に手を当てて考え始める琴音。

 そして一つ思い出す。


「あっ。そういえば、戦いが始まる前にさ、赤いやつもいたじゃん? あいつが急に消えたんだよね」

「消えた?」

「うんうん。なんかふぁーって霧になるみたいに薄くなって消えてった」

「消えた……」


 今度は悠真が顎に手を当てて考え始めた。

 その考えている間を繋ごうとしているのか、奏太が喋りだした。


「琴音の見間違いなんじゃねぇの?」

「そんなことないって。私の蜘蛛の目は腐ってないもん!」

「いやいや。人間見間違いだってするもんだぜ?」

「そうやってすぐに否定から入るのは奏太の悪いところだからね」

「なんだとぉ!」

「そんなことばっかり言うなら奏太が蜘蛛つけたらいいじゃん」

「いや、俺はちょっと蜘蛛は……」

「へーんだ。じゃあ文句を言わないでくださいー」


 二人の口喧嘩が終わりに差し掛かった時だった。


「作戦会議は終わったっスか?」

「「えっ?」」


 突如奏太の真後ろに現れた赤マスケラ。突然現れたことに思わず声を上げた琴音と悠真。そして遅れて赤マスケラに驚いた奏太が同じように声を上げた。

 琴音は自分の蜘蛛の視界でも捉えきれていなかった赤マスケラの存在に驚いた。青と黒のマスケラは下で大人しくこちらを見上げているだけ。なのにどこからともなく現れた。まるで最初に見つかった時のように。

 そして琴音の頭の中で一つの仮説が立てられ、一つの答えを導き出した。


「……あっ、わかった。悠真! 奏太! 仮面チェンジ!」

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