ご対面
「お、お、おぉ! ホントにおった! 兄ちゃん! 出てきた!」
「やったねー。言った通りだったねー」
少し興奮している鬼の面をつけたちびっ子の前に姿を現した悠真達。鬼のちびっ子は、ホワイトマスクの服の袖を掴んで上下に揺すっている。四人が出てきた後ろから、赤マスケラもゆっくりと歩いて出てきた。
「親分! 見つけてきたッス! ご褒美をたんまりと欲しいっス!」
「もう何でもしてやる! 帰ったら楽しみにしておけ!」
「ん? なんでも? 今なんでもって言った? こりゃあ楽しみだぜ!!」
腰の辺りでガッツポーズを決めた赤マスケラは、そう叫んで消えてしまった。
それを蜘蛛の広い視野で見ていた琴音だけ『えっ』と驚いた。
先日の公園でのやりとりを思い出した奏太が言った。
「おいっ。お前がマスクなんちゃらの親分か?」
「マスクオブデスティニー。我々は全ての仮面を集めるために動いている」
「集めてどうするのよ」
「それは内緒だ。では逆に、お前たちはなぜ仮面を集めているのだ?」
「俺たちは集めてなんかいない。俺たちは……あれ? なんて言うことに決めたんだっけ?」
「えっ、正義のヒーローじゃないの?」
「正義とヒーローってかぶってる気がするってことで却下になったじゃん」
「あれ? そうだっけ? じゃあ何?」
「何って私に聞かないでよ……」
「俺に任せるなよ! 悠真はなんだったか覚えてるか?」
尋ねられた悠真は、ピエロの面をつけていて喋れないので代わりに首をフルフルと横に振った。
「マジかよ……全然締まらねぇ……」
そう肩を落とす奏太。
そんな三人を置いておいて、前列に出てきた雪乃が鬼に向かって話しかけた。
「こんな時間に何してるの、幼女?」
「なっ! その言い方……お前、雪乃だな!」
「「えっ?」」
雪乃の言葉に驚く琴音と奏太。
雪乃は面の奥からジッと鬼を見つめた。そしておもむろに兎の面を外した。その行動にさらに驚く他の三人であったが、対する幼女も面を外したので、雪乃にいろいろと任せることにして見守った。
「幼女は何してるの?」
「私たちは世界中の仮面を探すのが目的だ! 雪乃こそどうして邪魔をするんだ!」
「私たちは家主から頼まれてるだけ。アルバイト」
「バイトォ??」
「そう。アルバイト戦士」
淡々と答える雪乃。それに対し、鬼の面を外した幼女こと樹里は首を傾げながらも反抗する姿勢を崩さずに喋っていた。いつもの学校での二人だった。
「どうして仮面を集めるの?」
「我々マスクオブデスティニーは、仮面を集めて世界を征服するのが目的だ! だから雪乃たちの仮面も何も抵抗せずに渡してくれればケガぜずに済む。だから大人しく渡せ!」
「そういうわけにはいかない。バイトの身で勝手にものを受け渡しをしたら怒られる」
「むっ……じゃあどうしたら渡してくれる?」
「残念だけど、渡さない」
「それはそれで困る。んー……兄ちゃん、どうする?」
「親分に任せるよ。なんたって親分なんだし」
「ムムム……」
ホワイトマスクに言われた樹里は、腕を組んで悩んだ。そして少しの時が流れ、一つの答えを導き出した。
「雪乃たちも仲間になれ!」
「イヤ」
即答だった。
「早っ! なんでっ?」
「世界征服なんて無理だもの」
「どうしてそう言い切れる?」
「かの有名な戦国武将だって日本統一までだったし、アニメでも結局できずに中途半端で終わったし。だから無理」
「事実は小説よりも奇なりって言うじゃないか!」
「いくら仮面の力がすごくても、私たちはただの人間。世界征服をした先には何もない。だったらこの辺の近所の治安を守るくらいがちょうどいい」
そんな雪乃の発言に、奏太や琴音は、
「雪乃、そんなこと考えてたのか」
「私はそんなこと考えてもいなかった」
「右に同じく」
と、こそこそ話していた。
「親分!」
そんな二人の会話に割り込むように青マスケラが叫んだ。
「こうなったら力ずくで奪うしかないッスよ! やっちまいましょう!」
「力ずくって言っても……」
その言葉に、少し心配そうにホワイトマスクを見る樹里。
それに答えるホワイトマスク。
「あ、僕は非戦闘要員だから、戦えないからね?」
「わかってるもん! 」
「親分!」
すでに戦闘態勢に入っている青と黒のマスケラ。先ほどまで話していた雪乃も、兎の面をつけて同じく戦闘態勢をとっている他の三人と共にマスクオブデスティニーを見据えていた。
樹里は外していた鬼の面を付け直し、戦闘態勢をとった。
「よっしゃぁ! 行くぞ、雪乃ぉ!」




