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平和な日

転校生の兄妹がやってきてから数日間、ほぼ毎日のようにあった夜のパトロールの出動が、急に無くなった。グランマの聞いても細かいことは教えてはくれないし、ただ『今日は何もないよ。平和なのはいいことじゃないか』と言われるだけであった。

とはいえ、退屈だと感じているのは琴音と奏太だけで、悠真は『ゆっくりとお風呂に入れる』、雪乃は『読書が捗る』と、のんびりとした夜を過ごしていた。

そんな琴音と奏太は、屋敷内にある畳が敷き詰められた道場で汗を流していた。正確には奏太だけ汗を流していた。


「だーから違うって言ってるでしょ! ここは右足で踏み込んで左手で殴んの! それでもし避けられてもバーってできるし、相手がこうやってきたらヒュッって右手が出せるでしょうが!」

「そんなんできるのお前だけだっての! 第一、ここで左手で殴っても力入んねぇじゃん!」

「だーからあんたはダメだって言ってんの! 一撃で倒していいのは多人数対自分一人の時だけなの。対個人の場合は、確実に入るダメージを積み重ねていったほうが良いって何回も言ってるでしょ。だから阿修羅もうまく使いこなせないのよ。ザコ」


『ぐぬぬ』と唸った奏太は、無言で先ほど言われた通りに動いて見せた。それを見て満足そうにうなずく琴音。

琴音と奏太は同じ仮面を扱う仲間同士であると同時に、師弟関係でもあった。

琴音は元々空手を習っており、全国でも有数の実力者であった。それゆえ、最初は阿修羅の面を使っていたのは琴音だったのだが、華麗に立ち回る琴音を見ていた奏太がそれに憧れ、琴音に弟子入りという形で阿修羅の面を借りていたのである。琴音も修行の一環として阿修羅を貸していたのだが、本気を出す場合は、先日のように奏太から阿修羅を受け取って戦うことがある。とはいえ、本気を出すという場面がそこまで無いのも事実である。

そういえば、先日使っていた奏太の猿の面と雪乃が使っていた狐の面の効力の説明がまだだったと思うので、ここで説明しておく。

猿の面は、孫悟空を基調とした二つの力を得ることができる。一つは如意棒が使用可能となる。説明は不要であろう。もう一つは自分の分身を一体だけ作り出すことができる。もちろん髪の毛を何本か必要とする。デメリットもあり、頭痛で頭が痛くなってしまう。そのため長時間の使用は控えなければならなくなり、使用する時間も必然的に短時間になってくる。短期決戦型といえよう。

狐の面は、『番傘』の使用が可能となる。この番傘の使用により、トリッキーな戦い方ができるようになる。この番傘は『傘が開いたところに移動できる』という能力が備わっており、投げて瞬間的に移動したりすることも可能である。またこの番傘は、開閉を意図的に操れる。もちろんデメリットもあり、傘を開いている時は身体の自由が利かなくなってしまう。なので必然的に、開いて瞬間移動、閉じる、攻撃、という流れになってくる。要は使い方次第である。

二つともデメリットさえどうにかなればだれでも使えるのだが、猿は『髪は抜きたくない』という他三人の意見により奏太が、狐は『狐は誰にも使わせない』という意見から雪乃が、それぞれ所持している。

とはいえ、こちらはメインの二つとは違い、使える場面等が限られてくるものであり、メインの二つ以上に使う機会は少ない。特に狐の面なんかは、使いどころがわからないくらい使えない。


そんなこんなで汗を流した二人は、それぞれシャワーを浴び、食堂で冷蔵庫を漁っていた。


「奏太ー。なんかあった?」

「んー……チーズと珍味くらいしか見当たんねぇ。グランマのつまみっぽいのばっか」

「こっちも似たような感じ。あ、柿の種あるわ」

「それで妥協すっか」

「だね」


そう言って、二人は小分けになっていた柿の種を数袋持ち、テーブルに皿を置いてそこにまとめて開けた。

そして二人はピーナッツを口へ放り込んだ。

と、それとほぼ同時だった。


「疲れた後のピーナッツはおいしいかい?」

「「!?」」

「げっ! グランマ!」

「やべっ、ゴホッゴホッ!」


驚いて目を丸くして振り返った琴音と、驚いてピーナッツが変なところに入ってしまった奏太の元に、つまみの所持者であるグランマがガイナ立ちで立っていた。圧倒的存在感ッ!


「どうだい? 人のおつまみを内緒で食べている感想は?」

「いや、これには深い理由がありまして」

「ほう。どんな理由だい? 理由によっては許してやらないこともないよ?」

「うっ……奏太っ。ちょっとなんか無いの?」

「ここで俺に振るのかよ!」


小声で話す二人へ、グランマが大げさに咳払いを一つした。それに身をすくめた奏太は、恐る恐る言い訳をでっち上げた。


「えっと、テレビで疲れた身体には塩分と豆が良いって言ってまして、それを同時に摂取できるのは柿の種のピーナッツしかないとテレビでやってまして……」

「そうなのかい。で、そのテレビはなんていうテレビだい?」

「テレビ!? えーっと……よくわかる家庭の医療だったような……」

「医療番組で柿の種かい? 普通そういう番組なら何かレシピみたいのを紹介するもんじゃないのかい?」

「うっ……す、すんませんでしたぁあ!!」

「ちょっと奏太! 謝るの早いって!」

「さて、奏太は認めたけど。琴音はどうなんだい?」

「……ごめんなさいでした」

「わかればいいんだよ。勝手にこんなに柿の種を開けちまって。食べきれなかったら湿気っちまうんだから、もったいないことはしないでおくれ」

「「ごめんなさい」」


ため息をついたグランマは、キッチンに立ちしょんぼりとする二人に向かって言った。


「簡単なもので良いなら作ってあげるよ。食べるかい?」


二人は顔を上げて見合わせ、そして大きな笑顔を見せて言った。


「「うんっ!」」


それを見てグランマはまた小さくため息をついた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いてもいいのよ?


仮面の説明とグランマとの会話でした。


次回もお楽しみに!

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