表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/28

混入

マスケラの男と遭遇してから一週間が経とうとしていたころ。

彼らの通う学校に、季節外れの転校生がやってきた。

琴音と悠真のクラスには男子、奏太と雪乃のクラスには女子が、それぞれ転校してきた。

二人は兄妹らしく、親の転勤の都合だそうだ。


二年生組のクラスにて。


「初めまして。皆上清人(みなかみ きよと)です。親の都合で引っ越してきました。どうぞ仲良くしてやってください」

「キャー!」


そう笑顔で言うと、教室内の女子たちが黄色い声援を送った。

なんせさわやかイケメンである。モテないはずがないだろう。

しかし琴音はさわやかイケメンには興味はないようで、周りがキャーキャー言っているのを笑いながら見ていた。悠真はのんびりと空を見ていた。

先生が空いてる席へと座るように指示し、悠真の隣の席に腰を下ろす清人。


「よろしくね」


隣の席の悠真に向かって、さわやかスマイルであいさつをする清人。


「ん。こちらこそ」


それをいつものように、少し気の抜けた返事で返す悠真。

そしてまたすぐに外をボケーっと眺めるのであった。




奏太と雪乃のクラスにて。


「は、はじめまして。お父さんの転勤の都合で引っ越してきました、皆上樹里(みなかみ じゅり)です。よろしくお願いします」


そうペコリとあいさつをした樹里は、周りからの視線をしっかりと受け止めてから付け加えた。


「こう見えてもちゃんと高校一年生です。飛び級とかはしてません」


そして流れる『そっかー』という空気。

樹里は幼女である。

完全に高校生に見られない幼児体型の持ち主で、前の学校では『ロリクイーン』という称号まで与えられていた。この学校で言うつもりはないらしい。

そして先ほどの清人とは兄妹である。

教師のマニュアルに書いてあるかのように、同じように空いてる席へと座るように指示された樹里は、雪乃の後ろの席へ移動して座る。


「よろしくな。俺、翠山奏太。なんかわかんないことがあったら聞いてくれな」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」

「なんで敬語なんだよ。同い年なんだろ? タメ口でいこうぜ」

「は……うん。よろしく、翠山くん」

「おう。そっちの本読んでるやつは、烏丸雪乃。話しかけたら話してくれるから雪乃に聞いてもいいからな」

「よ、よろしく」


前の席の雪乃に話しかけると、雪乃は本をパタンと閉じて振り返る。


「よろしく。おっ」

「?」

「思った以上に幼女だった」

「よ、幼女って言うなー!」


教室中の視線が樹里に集まったのだった。



そして昼休み。


一年生組の教室に転校生の清人がやってきた。

もちろん妹の様子を見に来たのであるが、周りには積極性の高い、最近の女子高生たちが群れをなしていた。


「樹里ー」

「兄ちゃん!」


突如現れたイケメンと、それに寄る幼女に、全員の視線が集まった。


「幼女、その人はお兄さん?」

「幼女って言うな! 私の兄です」

「なに、もう友達できたの?」

「友達じゃないもん」

「まぁまぁ。席が近かったよしみということですかね」

「そっか。これからも樹里と仲良くしてあげてね。そっちのかわいい子もね」

「……かわいい子?」


清人がそう言うと、言われた雪乃は首をかしげた。

そしてニコニコと笑う清人と、頭にハテナを浮かべる雪乃の間に、奏太が割り込んだ。


「初対面の人をいきなり口説いてんスか?」

「いやいや。本音を言っただけだよ」

「本音でもそーゆーことはあんまり口に出さないほうがいいっスよ」

「んー。気を付けるよ」


警戒心全開の奏太と、何を考えているかわからない風に笑顔を作る清人。


「奏太」

「兄ちゃん?」


そんな二人に、雪乃と樹里がそれぞれ声をかけた。


「私、かわいいって言われちゃった」


そう無表情で言う雪乃。

そんな雪乃を見て、小さくため息をつくと、横を素通りして自分の席へと戻る奏太。雪乃もそれに続く。

席へ座ると、雪乃に奏太が言う。


「雪乃のかわいさは俺が一番知ってるんだからな」

「奏太ってば、ツンデレさん」

「うっさい!」


そして残された清人と樹里が小声で話す。


「兄ちゃん。目的を忘れたらダメだよ」

「わかってるって。親分」

「ちょ、ちょっと! その呼び方は学校でしないでって言ってるでしょ!」

「あはは。ごめんごめん」

「んもぅ!」


そんな兄と妹だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ