表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/28

狐と猿

猿の面をつけた奏太は、本当に猿になってしまったかのように、しゃがんで頭をポリポリとかいていた。

その隣で狐の面をつけた雪乃は、どこからか取り出した番傘をクルクルと回してさしながら、ご機嫌そうな顔を浮かべていた。もちろん仮面越しだから以下略。

そんな二人を見て、初代のライダー一号が不敵な笑みを浮かべながら言った。もちろん仮面越し以下略。


「ふんっ。いくら仮面を変えたからって、俺たちに勝てるわけがないだろ」

「そうだぜ! 俺たちはなんたって正義のヒーローなんだからな!」


続けてフォーゼが言った。

そんなニヤニヤと笑っている(もちろん以下略)三人を見て、猿真似をしていた奏太が雪乃に視線を送った。仮面の小さな穴から互いの目を合わせると、小さくコクリと頷いた雪乃を見て、猿の面の奏太だけ走って向かっていった。


「行くぜぃ!」


奏太はさっきと同じようにモモタロスに向けてまっすぐ走る。そしてさっきと同じようにジャンプして飛びかかった。

モモタロスは先ほどと同じように、突っ込んでくる奏太を受け止める体制に入っていた。

しかし奏太は飛び蹴りではなく、耳の上あたりから小さな棒のようなものを取り出し、それをモモタロスへと向けた。

そして大声で一言。


「伸びろっ! 如意棒!」

「はっ?」


その声に驚いて、変な声が出たのもつかの間、モモタロスは一瞬で伸びてきたその如意棒に、ぶっ飛ばされてしまった。

勢いよく後ろに転がっていくモモタロスを横目で見ながら、フォーゼは空中に浮いたままの奏太に向かって、飛び蹴りことライダーキックを仕掛けた。

しかし。


「知ってる? 格ゲーの中では、傘って最強の武器って言われてるんだよ?」


そんな声が聞こえたと思った矢先、フォーゼの目の前に赤茶色が広がった。一号からは何が起こったのか見えており、その赤茶色の正体は、狐の面をつけた雪乃の番傘だった。

フォーゼは、キックの勢いを止めることができずに、その番傘めがけて突っ込んでしまう。本来ならば、傘は蹴られたら壊れてしまうが、この番傘はその程度では壊れなかった。

キックを受け止めた雪乃は、番傘をフォーゼに向けたまま上へと回り込む。そして番傘を閉じて、フォーゼに姿を現したかと思いきゃ、そのまま番傘でフォーゼを叩き落とす。その威力はなかなかのもので、モロに腹に受けてしまったフォーゼは、地面に背中からビターンと落ちた。

呼吸ができずにゲホゲホとむせているフォーゼ。そんなフォーゼへ、番傘を閉じたまま振りかぶった雪乃が降ってきた。フォーゼは慌ててガードをしたが、そんなもので防げるはずもなく、寸止めした雪乃の番傘はクルリと反転し、フォーゼの股間を的確に居抜いた。悶絶の表情を浮かべているであろうフォーゼの前で、なむなむと手を合わせる狐の雪乃。


「さてと。残るは初代さんだけか」

「さっきのお返しをしたい」


一号を挟んで、前には如意棒をクルクルと回す奏太と、後ろには番傘を開いてさし直す雪乃。



「ど、道具なんてずるいだろ……」

「知らん。勝った方が正義なんだよ。負ける正義のヒーローなんてテレビ放送もされないだろ」

「ぐっ……」

「それにさっきのフォーゼのライダーキックを受けたとき、やっぱり威力は普通の蹴りと一緒だった。きっと身体能力を向上させる程度で、そのお面はたいして効果はないのかも」

「マジで?」

「まじで」


緊張感を解いて話す二人に、一号がわなわなと震えた。


「お前ら……馬鹿にしてんじゃねぇぞぉ!!」


怒りを露わにして振り返り、雪乃の方へと走っていった。

それに気づいた雪乃は、一号めがけてさしていた番傘を開いたまま向け、自分の姿を一号の視界から消した。一号からは傘だけが見えていたのだが、そんなものは飛び越えてしまえばいいと言わんばかりの跳躍で、傘ごと飛び越えようと地面を蹴り、雪乃の真上へと飛んだ。

そして傘越しに見えてきたのは、狐の面をかぶった雪乃の姿だけではなく、猿の面をかぶった奏太の姿もあった。


「いらっしゃーい」

「は?」


そう言った奏太は、持っていた如意棒で一号を思い切り殴った。キチンと顔を狙って叩きつけられた如意棒は、一号がつけていたプラスチック製のお面を割り、一号をモモタロスが倒れている場所へと吹っ飛ばした。


「これは雪乃が蹴られた分のお返しだ」


傘をさし直した雪乃の横に並び、奏太は如意棒を縮めて耳にかけ直した。

一号は、薄れゆく意識の中で、猿の面をつけた男が二人いるように見えたとかなんとか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ