第6話 黒幕の正体
姿が明らかになったドローンを睨みつけていると、聞き覚えのある声が音羽の耳に響く。
「あー、もうばれちゃったのね。まあ、試作機だから仕方ないか」
「この声は……やっぱり、この異変はお前の仕業だったのね」
声を聞いた音羽の全身から、怒りと殺気が混じったオーラがあふれ出す。
「ど、どうしたのじゃ……?」
少し離れた位置にいたルリが、怯えたような表情で話しかける。
「ついに黒幕が正体を現したのよ……ルリちゃん、この先の話は聞かれるとまずいから、配信を切ってくれないかしら?」
「わ、わかったのじゃ。あ、あれ? 操作ができないし、なんか見たこともないエラーが出ておるのじゃが……」
ルリがタブレットを操作しようとした時、見たこともないエラーメッセージが表示されていた。電源を落として再起動させようにも、何か妨害されているのか、どのボタンを押しても操作を一切受け付けなくなっていた。
一方、配信を見ていたリスナーも大混乱に陥っていた。
《チャットコメント》
『あれ? 急に画面真っ暗になったんだけど!?』
『音だけ生きてるっぽい? ノイズやばいw』
『おい運営! 機材トラブルか?』
『これバグじゃなくて妨害じゃね?』
『他の配信は普通に見れてる。ルリ枠だけ落ちてるっぽい』
『特定班、出番だぞ!』
突然切り離されたように落ちて混乱する様子を、あざ笑うかのように女性の声が空間内に響き渡る。
「あ、配信中だったわ。私が割り込んだせいで大混乱に陥ってるみたいね。なんか素人が原因を特定しようなんて……ほんとバカばっかね」
「ぐぬぬ……わらわの下僕どもをバカにするな!」
女性の言葉を聞いたルリが、顔を真っ赤にして怒り出す。
「私は事実を述べただけよ。こんな低レベルなやつらに付き合ってあげるだけありがたいと思いなさい」
「むきゃー! 頭に来たのじゃ! なんとしてもこのババアをぶっ飛ばしてやるのじゃ!」
思わぬルリの反撃を食らった女性が、声を荒げる。
「バ、ババアですって! 誰のことを言っているのよ!」
「なんじゃ、自覚でもあるのかのう? まあ、わらわみたいな美少女と比べたら勝ち目なんぞないじゃろうしな」
「このクソガキが……まだ二十代の天才美女に向かってなんてことを!」
「ふん、顔も見せない得体のしれんヤツに言われる筋合いはないのじゃ」
「キー! このクソガキめ……今すぐぶっ殺してやる!」
「やれるもんならやってみるのじゃ。わらわは逃げも隠れもせんぞ? どこかの顔も出せない臆病者とは違うのじゃ」
ルリの口撃はとどまることを知らず、顔も見えない相手を圧倒していた。いつの間にか音声が聞こえるようになったリスナーが、どんどんコメントを書き込んでいく。
《チャットコメント》
『あ、音戻った?』
『ルリ様誰と喋ってんのwww』
『相手の声聞こえんけど、口悪すぎて草』
『「ババア」言うてて腹よじれるwww』
『自称天才美女ww 強烈すぎるだろ』
『ルリ様、煽りスキル高すぎ問題w』
『コメント欄の団結力すごいw 全員でババア討伐してて草』
『誰? 新キャラ?』
『いやこれ神回すぎるんだがwww』
どんどんヒートアップするコメントに対し、女性のヒステリックな声が響き渡る。
「なによ、こいつら! ふざけてるんじゃないわよ! 誰がババアだって! 私はまだ二十歳をちょっと過ぎたくらいなの! ロリコンどもに言われたくないわよ!」
《チャットコメント》
『逆ギレきたwww』
『図星すぎて草wwww』
『もうこの人、完全に悪役ポジじゃん』
『ルリ様圧勝ですありがとうございます』
『運営カメラ回してる? アーカイブを頼む』
『“ロリコンども”とか言っちゃったよ、この人www』
『この回だけで一晩語れるわ』
何が起こっているのかわからず、呆然と立ち尽くしていたルリにも矛先が向かい始める。
「ちょっと! 少し若いからって調子に乗ってるんじゃないわよ!」
「なんか勝手にキレだしたのじゃ……」
「だいたいアンタのリスナーたち、教育がなってないのよ! だからこんな低レベルなやつらと話すのは嫌なの!」
「いや、そもそも話していないと思うのじゃが……」
勝手に怒り狂う女性に対し、開いた口が塞がらないルリ。
すると、黙って話を聞いていた音羽が口を開いた。
「ふふふ……ヒステリックなところは昔から変わっていないようね?」
「は? 誰よ、あんたは!」
「あら? まだわからないとは……もうボケが始まっちゃいましたか、飯島博士?」
「なんで私の名前を知っているのよ! アンタこそ誰よ! ふざけたお面なんかつけてないで顔を見せなさい!」
「なんで私だけ顔を見せないといけないのでしょうか? あ! 失礼しました……とても人前に出せるような顔ができていないんですね。もう、オ・バ・サ・ンだから」
音羽の煽りが炸裂すると、女性の金切り声がフロアに響き、二人は耳を押さえて笑い出す。
「さすがなのじゃ! 煽り方がうますぎるのじゃ!」
「そうかな? クソムカつく相手だし、姿も見せないでお高く留まっているのが気にくわないのよね」
「なるほどなのじゃ! すごく勉強になるのう……ところでタブレットがうんともすんとも言わないのじゃが、どうしたらよいのかのう?」
「たぶん原因はあのドローンっぽいわね。私が擬態用の防護壁みたいなのを切り裂いたからかも……」
空中でホバリングしているドローンをチラ見すると、申し訳なさそうに顔を背ける音羽。
その様子を見たルリが、首をかしげながら声をかける。
「なんで謝るのじゃ? 何も悪いことはしておらんし、隠れて監視されているのは気分が悪いからちょうどよかったのじゃ」
「ありがとう、ルリちゃん……」
ルリの言葉を聞いて心が軽くなる音羽だが、すぐに神妙な声で話し始める。
「これではっきりしたわ、モンスターたちが暴走した原因が」
空中に浮かぶドローンを睨みつけ、小さく息を吐く音羽。
彼女の口から語られたこととは?
最後に――【神崎からのお願い】
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