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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間⑦

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閑話⑦ 紀元の苦悩と異変

 音羽が三階層に一人で戻った頃、紀元のスマホに連絡が入る。


「お疲れ様です。三階層でデータにない事象が観測されました……現在、調査員を向かわせております」

「そうか。ターゲットとの遭遇は大丈夫だろうな?」

「はい、問題ありません。彼らが四階層へ移動したことは映像で確認しておりますので、心配はないかと思います」

「わかった。何が起こるかわからないから、くれぐれも気を付けるように……」


 電話を切ると額に手を当て、大きくため息を吐く紀元。


「クソッ……二階層で起こった基盤の件がまだ解明されていないのに、今度は三階層でイレギュラーが発生ってどうなってるんだ」


 吐き捨てるように言葉を零すと、右手で廊下の壁を思いっきり殴りつけた。


アイツら(瑛士とルリ)が迷宮に現れてから全ての計画が狂い始めている……ここまで順調にコントロールできていたのに)


 紀元が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべているのには理由があった。瑛士たちが迷宮に現れてから、()()()()()()が多発していたのだ。逃げ出した実験体の目撃情報、低階層には存在しないモンスターの出現――その最中に事件が起きた。実験用の基盤を渡した賢治たちがロックゴーレムの襲撃に遭い、基盤を破損してしまったのだ。


(破損だけならまだしも、基盤紛失のおまけまでつくとは……)


 三階層を訪れた瑛士たちによって賢治たちは救出されたものの、基盤の行方は不明のままだ。迷宮内の調査員を総動員してくまなく探させたが、未だ見つかっていない。この辺りから飯島の要求はエスカレートし始めていた。


「この辺りからおかしくなり始めたんだよな。妙にピリピリしてるし、秘密裏に行っていた裏切り者の始末を見せしめのように始めたり……以前の飯島博士ならもっと慎重に実験を進めていたはずなのに、何をそこまで焦っているんだ」


 紀元が遠くを見つめるように天井を仰ぎ見たとき、スマホの着信音が廊下に鳴り響いた。画面を見ると、迷宮に派遣している部下の名前が表示されている。


「お疲れ様。何か問題でもあったのか?」

「た、大変です……三階層の調査中に、()()()()を受けまして……」

「おい! どうしたんだ? ちゃんと報告しろ!」

「狐のお面を付けた……」

「は? 何を言っている?」


 紀元が必死に問いただすが、部下からの返答は途切れてしまった。しばらくすると、聞き覚えのない女性の声音が耳に届く。


「ヤッホー、ちゃんと聞こえてるかしら?」

「誰だ!」

「名乗るほどの者でもないわ。私たちの周りをうろちょろしてるネズミがいたから、駆除させてもらっただけよ」

「バカな……全員武道の心得はあるはずなのに……」

「そうなの? あまりにも弱すぎて話にならないわね。どこの誰だか知らないけど、もうちょっとうまく動いたほうがいいわよ? まあ……邪魔するなら()()()()だけだけどね」


 通話相手の言葉に、紀元は息を飲む。普段なら即座に戦闘部隊を向かわせるところだが、全身の感覚が危険を告げている。何も言い返せず黙り込んでいると、さらに圧のある声が続く。


「あなたみたいな下っ端を脅したところで何も変わらないでしょうね。まあいいわ、指示を出している者に伝えなさい。『今度こそ息の根を止めてあげるから……首を洗って待ってなさい、飯島女史』とね。ちょうどいい暇つぶしになったわ」

「ま、まて! お前は何者なんだ? なぜその名前を知っている?」

「えー、なんででしょうね? それくらい自分で調べてみたら? じゃーね」

「お、おい! 答えを……」


 紀元の訴えも虚しく、一方的に通話は切られた。


「ど、どうする……飯島博士に報告すべきか、それとも……」


 暗い廊下に取り残された紀元は、頭を抱えて立ち尽くした。

 この後に下す判断が、彼の命運を分けることになるとは――まだ気づいていなかった。

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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