第2話 謎のイベント通知
画面に映し出された文字を見た音羽が固まっていると、ルリが不思議そうに声を掛ける。
「どうしたのじゃ? なんか変なことでも書いてあったのかのう?」
「ルリちゃん、ちょっとこれを見て」
音羽がタブレットを指差した先に書かれていた内容を見て、目を丸くして声を上げるルリ。
「迷宮攻略イベント? こんな通知、初めて見るのじゃが?」
首を傾げながらルリが内容を開こうと画面をタップした時、背後から言い争う声が響き始める。
「ルナ! お前は邪魔するんじゃねーよ!」
「ギュー! ギュッギュ!」
「あ? 人の安眠を妨害して謝罪もないとは、何たることだって? お前は人じゃね―だろ」
「ギュ? ギューギュ!」
「だからなんだ? 睡眠を邪魔するなど万死に値する! 序列最下位のくせに……って、誰が序列最下位だ? 畜生の分際で生意気言いやがって!」
音羽が振り返ると、全身の毛を逆立てて怒り狂うルナと、バカにしたような表情を浮かべる瑛士が睨み合っていた。その様子を見たルリは額に手を当てて大きく息を吐き、ルナに声をかける。
「怒りたくなる気持ちはすごくよく分かるのじゃ、ルナ。じゃがな、素直に謝れないご主人に何を言っても無駄じゃと思うぞ。いいか、あのような大人になるのは良くないことなんじゃぞ?」
「キュー? キュ、キューキュ」
「うむうむ、言いたいことはよーく分かるのじゃ。お主の言うように、わからせることも重要じゃ。じゃがな、序列云々とは看過できんのじゃ」
「キュー、キュキュ……」
「この家の主はご主人なのじゃ。誰かと比べて下とか上とかも無いのじゃよ」
優しく言い聞かせるようにルナに話す姿を見て、感心した瑛士が声を上げる。
「ほう、ルリにしてはまともなことを言っているじゃないか」
話を聞いていたルナの耳が垂れ下がり、申し訳なさそうに頭を下げている。その様子を見たルリが近くに歩み寄り、頭を撫でながら話し始めると、雲行きが怪しくなり始める。
「お主もよく反省していることじゃし、次からは発言に気をつけるんじゃぞ。まあ……それはそれとして……」
「キュー、キュキュ?」
頭を撫でられたルナが不思議そうに首を傾げた時だった。ほんの一瞬だが、ルリが鋭い視線を瑛士に向けると、バッチリ目が合った。
「な、なんだ? 猛烈に嫌な予感がし始めてきたんだが……」
「安眠を妨害されて、謝罪の一つもないというのは、人としてどうなんだというのは間違いないのじゃ。睡眠はわらわたちにとって至福の時間……それを邪魔するということは……」
「げっ……この流れはやばくないか」
瑛士が気がついたときには、すでに時遅しだった。ルリの目には、たしかな殺意のようなものが宿り、全身からドス黒いオーラのようなものが溢れ始める。
「さて、ご主人? わらわたちに、何か言うことは無いのかのう?」
「……えーっと、ルリさん? すごく怖い雰囲気が漂い始めているのですが……」
「もう一度だけ聞くぞ……わらわたちに言わなければならないことが、あるんじゃなかろうか? ご主人?」
普段のルリからは考えられない圧が瑛士にのしかかり、滝のように汗が流れ始める。
「えっと……あの……ものすごく怒っていらっしゃいますよね?」
「どうじゃろうな? ご主人がそう思うのであれば、どうすべきか分かるじゃろ……今回が初めてではないんじゃしな」
「いや、まあ、でも前はお前が夜通し遊んでいたのが……」
「あ? なんか言ったかのう?」
「ギューギュギュ!」
彼女たちから、殺気を超えた冷たい視線を向けられ、観念したように言葉を絞り出す瑛士。
「……大声を出して……ご……」
「なんじゃ? はっきり言わんとわからんぞ」
「クソっ……大声を出してゴメン! これでいいだろ!」
苦虫を噛み潰したような表情で、悔しさを滲ませながら声を上げる。その様子を見て、ルリは大きくため息を吐きながら渋い表情で答える。
「はぁ~最初から素直に謝っておればよかったのじゃ。まったく……こういうところは頑固というか」
「……俺だけじゃないってのに……」
不貞腐れた様子で顔を背ける瑛士を見た音羽は、わざと聞こえるような声で釘を刺す。
「私は真っ先にごめんねって言ったけどね。瑛士くんはどうだったかしら?」
「ぐっ……それは……」
「男としてのプライドがあるのかも知れないけど、さっさと謝っておいたほうがダメージが少ないのよ」
「な、なんも言い返せねえ……」
完璧に論破されて膝から崩れ落ち、項垂れる瑛士を無視して、音羽はルリに話しかける。
「さてと……話はこれで終わったことだし、いよいよ中身の方を確認しましょうか?」
「うむ! 一緒に見るのじゃ! あ、でも……もしかして偽サイトとか言う危険はないのじゃろうか……」
「その点については大丈夫よ。前にルリちゃんがウイルス対策してほしいって頼んできたでしょ?」
「そうじゃった! 下僕どもから、いろいろ怖い話を聞いたものじゃからのう」
右手を顎に当てて考え込むような素振りを見せると、音羽が自信たっぷりに答える。
「そうそう、市販品ではせいぜい防御する程度だからね。私が特別に用意したものは、防御だけでなく、逆探知して相手のパソコンをクラッシュさせる機能も付けてあるわ。ルリちゃんを狙うなんて……許すわけ無いでしょ?」
「……音羽お姉ちゃんが味方で良かったのじゃ……」
胸を張って話す音羽を見て、ルリの頬に一筋の汗が流れ落ちる。
「そういうことだから安心して開きましょ。どうせ差出人は、あのヤツしかいないんだし」
引きつった笑顔のまま固まっているルリを気に留めず、画面をタップする音羽。
「ふーん……せっかくだから、この余興に乗ってあげましょうか」
目を細めながら口元を釣り上げ、不敵に笑う音羽。
彼女が目にした画面には、何が表示されていたのだろうか――?
最後に――【神崎からのお願い】
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