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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間⑯

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閑話⑯-1 謎の機械と不穏な指示

「そういえば今日は博士の姿を見ていないな……」


 飯島のおやつ騒動があった翌日。応接室の確認を終え、廊下を歩いていた紀元のスマホが突然鳴り出した。


「おお、お疲れさん。こんな朝からどうした?」

「本部長、お疲れ様です。先程、飯島博士の関係者という方が来られ、二階層の()()()を依頼したいと言われたのですが……なにかご存知ですか?」

「二階層の草刈り? いや、俺はなにも聞いていないが」


 紀元の返事を聞いた部下は少し沈黙した後、小声で話し始める。


「あんまり大きな声では言えないんですが、奇妙な機械を渡されたんですよ」

「奇妙な機械……なにか引っかかるな」


 部下の言葉に引っかかりを覚えた紀元は、電話越しにある指示を出す。


「うまく話を合わせてほしいのだが、今から俺が言うことにお前は『はい』か『わかりました』だけ答えろ。機械を渡してきたという関係者は近くにいるのか?」

「はい」

「そうか、その機械のサイズは煙草の箱くらいか?」

「はい」


 短いやり取りの中でなにかを察した紀元は、不思議な事を言い始める。


「今日は天気がいいから外で珈琲でも飲んで、散歩したいな。今からいけるよな?」

「え、あ、はい。わかりました」

「お前も忙しいとは思うが、五分後にネコが集まる木に集合だ」

「はい、わかりました」

「じゃあ待ってるぞ」


 紀元は通話を終えると、早足で廊下を歩き始めてある部屋の前につくと周囲を見渡して扉を開ける。


「よし……思った通り、博士は不在だな。さてと、ちょっと設定を弄らせていただきますよっと……」


 彼が警戒しながら入ったのは、飯島が自室として使っているモニタールームだった。ところ狭しと並んでいるモニターの近くでは何台ものパソコンがフル稼働していた。


「たしか……博士の研究データが保存されているのはコイツだったな」


 最新型のパソコンが並ぶ中央にある場違いな古い機種の前に座ると、慣れた手つきで次々とパスワードを打ち込み始める。


(よし、パスは変更されていなかったな。以前、論文を手伝った時に教えてもらったのを覚えておいてよかった)


 何重にも掛けられたロックを解除し、お目当てのフォルダーを見つけたタイミングで再びスマホが通知音を鳴らす。


「ご苦労さん、うまく逃げ出せたか?」

「はい。本部長と決めておいた()()()のおかげで、怪しまれずに外に出ることができました」

「それは良かった。どこで誰に見られ、聞かれているかわからないからな」


 安堵した部下の声を聞いて、小さく息を吐く紀元。


「ほんとですよ……ネコの集まる木の正体が、トイレに行くふりをして秘密通路を通り、隠された防音室から連絡しろということだとは思いませんよ」

「まあな。さすがにトイレの中までは防犯カメラも仕掛けられないからな。まさか、迷宮監理団体が隠し部屋として使っていたとは、博士も知らないからな」

「そりゃそうですよ。男子トイレの中までは入れませんから」


 電話越しに笑う部下の声を聞きながら、隠し部屋を見つけた時を思い返す。


 それは偶然の産物だった。迷宮の改修工事申請書を取りまとめるため、前任の管理者から受け取った設計図を紀元が部下と一緒に眺めていた時だった。


「何だ。この空間は?」

「どうされました? なにかおかしなものでもありました?」

「おい。ここをちょっと見てみろ。なんか変な空間がないか?」


 紀元が指を指した図面は一階層のトイレの奥だった。


「あれ? なんか奇妙な形をしてますね……ちょうど現場確認で迷宮にいきますが、ご同行しますか?」

「そうだな。自分の目で確かめたいし、今から行くぞ」


 紀元たちはすぐに会社を飛び出し、迷宮を訪れると真っ先に男子トイレに向かう。怪しいと睨んだ場所を探していると、掃除道具入れの壁に擬態した隠し扉を発見する。部下が、恐る恐る開けると暗闇が広がる通路が姿を表した。


「本部長。奥に道が続いているようです」

「よし……ゆっくり進むぞ」


 二人で薄暗い通路を歩き始めると、迷宮には似つかない重厚な鉄の扉が現れた。紀元が恐る恐る扉を開けると、まるでスタジオのような吸音スポンジが張り巡らされた小部屋が姿を現した。さらに室内に積まれた段ボールを開けると、表には出せない裏帳簿が隠されていた。


「お、おい……これは大収穫だぞ」

「いくらなんでもやばすぎませんか? 国会議員への賄賂、楯突いた人間の抹殺リスト……弱みどころじゃないですよ」


 興奮気味に話す部下を見て、状況を冷静に分析する紀元。


(コイツを表に出せば性根腐った組合のヤツラを一網打尽にできる可能性がある。だが、肝心の()()を追い詰めるにはまだ証拠が足りない……それに、コイツ(部下)を巻き込むのはリスクが高すぎる)

「……そうだな、この件はかなり闇が深い。一旦俺が預かっていいか?」

「え? それは構いませんが……」

「後のことは俺に任せておけ。子供が生まれたばかりのお前にリスクを負わせたくないからな」

「ほ、本部長……」


 目に涙をためながら感激し、何度も頭を下げる部下。


(()()()のは俺だけで十分だ……)


 彼の様子を見た紀元は優しく肩を叩くと部下に話しかける。


「あとはこの書類を運び出す段取りだ。一旦会社に戻って、じっくり考えよう」


 数日前のことをぼんやり思い返していると、電話越しに聞こえた部下の言葉で現実に引き戻される。


「本部長、聞こえてますか? もしもーし」

「おお、悪い悪い。ちょっと考え事をしていた……何の話をしていたんだったか?」

「もーしっかりしてくださいよ。謎の機械についてじゃないですか。ビデオ通話に切り替えましょうか?」

「そうだな。現物を見て確認したいから頼む」

「わかりました。それでは切り替えますね」


 部下の返事を聞いた紀元が画面を切り替えると、部下の顔が映し出される。


「よし、それじゃあ例の物を見せてくれ」

「はい、こちらです」

「ん? この外見はどこかで見たことあるような……」


 画面を見た紀元は目の前のパソコンを操作し始めると、ある研究データにたどり着く。


「こ、これは……」


 映し出された内容を見て、言葉を失う紀元。

 部下に手渡された機械の正体とは何だったのか――?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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