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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第三章 新たな災難の襲来

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第4話 ルリの過去

「そういえば……何者かに封印されていたって言ってたよな? この切れ端と何か関係があるのか?」

「……わらわは一度、バラバラにされておるのじゃ……」

「いや……意味がわからねぇよ。ルリはここにいるじゃないか!」


 ルリの言葉に驚き、声を張り上げる瑛士。しかし彼女は気にするそぶりも見せず、淡々と語り続けた。


「ご主人、わらわを最初にどこで()()()()()覚えておるか?」

「最初って……倉庫を整理していて、見覚えのない古書を見つけたな。たしか雷に打たれて……まさか?」

「その通りじゃ。わらわの本体、『神々の(ソロモン・)魔導書(グリモワール)』という禁忌の書物じゃよ」


 ルリが右手を上げると、まばゆい光と共に一冊の古書が現れる。茶色の革で覆われたそれは、鎖のようなものが複雑に絡み合っていた。


解呪(ディスペル)


 唱えた瞬間、本が光を放ち、鎖が音を立てて解け、本に吸い込まれるようにして消えていった。本がひとりでに開き、勢いよくページをめくり始めるが、途中で止まってしまう。


「やはり……欠損部分が多すぎるからじゃな……」


 悲しげに呟きながら本を閉じたルリは、瑛士の方へ向き直る。


「ご主人、迷宮で見つけた切れ端を本の上に置くのじゃ」

「ああ、これでいいのか?」

「うむ。その上に、ご主人の手をかざしてくれ」

「わかった」


 言われた通りに手をかざすと、瑛士の手が虹色のオーラに包まれ、本が共鳴するように黄金色に輝き始めた。


「おい、これ大丈夫なのか? 爆発とかしないだろうな?」

「ご主人とわらわの魔力が共鳴し始めたのじゃ。……ちょっと失礼するぞ」


 ルリが瑛士の手を握ると、輝きがさらに強まり、切れ端が本の中に吸い込まれていく。完全に吸収されると光は収まり、茶色の本が宙にふわりと浮かんでいた。


「いったい何が起きたんだ……」


 困惑する瑛士を横目に、ルリは本を手に取りページをめくる。


「一部じゃが、修復できたのじゃ。おそらくご主人の魔力も少し増えておるはずじゃよ」

「魔力が増えてる? どういうことだ?」

「あの切れ端は、神々の(ソロモン・)魔導書(グリモワール)の一部……どうやら迷宮出現の儀式に使用されたようじゃ。本来なら完全な書が必要じゃったが、何らかの意図でわざと失敗するようにページを切り取ったようじゃな」

「わざと失敗させるため? いったい誰が、何のために……」

「わらわにも分からん。はっきりしているのは、わらわを研究所から持ち出したのがご主人の父上じゃったこと。そして……精巧な偽物まで用意していた」

「ますます意味が分からん……なんで親父はそこまでやる必要があったんだよ……」


 ルリから語られた新たな事実に、瑛士は混乱を隠せなかった。


「父上が何を考えていたのかは分からん。わらわはすでに封印された後じゃったからな。ただ一つ言えるのは、迷宮の中に意図的に閉じ込められたということじゃ」

「は? 誰かに閉じ込められたんじゃなくて、自分からってことか?」

「あくまで推測じゃがな。欠損部分が多すぎるせいで、断片的な情報しか残っておらん。バラバラになったページが集まれば、全ての謎が明らかになるはずじゃ」

「なるほど……その欠けた部分は迷宮内に散らばってるってわけか」

「ご名答じゃ。モンスターに化けているかもしれんし、どこかに埋まっているのかもしれん。未開拓の階層に隠されておる可能性も高いのじゃ」

「……ほんと面倒なことをしてくれたぜ、あのクソ親父……」


 吐き捨てるように言う瑛士。その右手を、ルリがそっと握りしめる。


「ご主人、お願いじゃ……わらわの欠片を一緒に探してほしいのじゃ……嫌な思いをさせてしまうかもしれんが……」


 瑛士は彼女の方へ視線を向ける。うつむいたままのルリは肩を小さく震わせ、必死に訴えようとしていた。


「俺が協力しないなんて、いつ言った? こうなったらとことん付き合ってやるよ。親父にも聞きたいことが山ほどあるしな」

「ほ、本当か? でも……いつかは魔法を……」

「覚悟はできてるさ。いざという時は読書魔法(リーディングマジック)を使う。でも、本当に必要な時だけな」

「あ、ありがとうなのじゃ!」


 顔を上げたルリの目には涙が浮かび、そのまま瑛士に抱きついた。彼女が落ち着くまで、瑛士は優しく受け止めていた。


「あー、スッキリしたのう。ありがとうなのじゃ、ご主人」

「別に構わねーよ。俺も迷宮を攻略する目的がはっきりしたしな」

「うむ、ご主人の配信者への道も明るいということじゃな!」

「は? 俺は配信者になるつもりはないぞ」

「今さら何を言っておるのじゃ……わらわの配信に参加した時点で、すでに手遅れじゃ」

「そうだった……」


 これまでの経緯を思い出し、肩を落とす瑛士。


「まあ、心配することはないぞ。ご主人の名前まではまだ割れておらんからな」

「そうだな。ん? 俺の名前はバレてないって?」

「そうじゃろ? わらわが一度でも名前で呼んだことがあったか?」


 ルリの言葉に、瑛士は耳を疑った。


「な、なあ、一つ聞きたいことがあるんだが……」

「どうしたのじゃ?」

「なんで『ミルキー・マジカル』は俺の名前を知ってたと思う?」


 瑛士の放った一言が、リビングの空気を一変させた。

 なぜ瑛士の名前を彼女が知っていたのか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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