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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十五章 動き始める新人配信者

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第7話 音羽の楽しみは……

 瑛士がキッチンで呆然と立ち尽くしている様子を気にも留めることなく、タブレットを覗き込みながら談笑するルリと音羽。


「ふむ、このデータはかなりわかりやすいのじゃ!」

「でしょ? 各階層の攻略タイムが一覧になってるのよ。それで、ここを見てほしいんだけど……」


 音羽が指差した先にあったのは、なぜか運営に認められていない()()()()()()()()だった。


「音羽お姉ちゃん……このタイムは異常すぎなのじゃ! 一階層から五階層までしかないのじゃが、どれもまともにモンスターと戦ったとは思えない速度で駆け抜けておるのじゃ!」

「やっぱりルリちゃんもそう思う? それで、さらに怪しいところがあるんだけど……攻略された日付を見てほしいんだ」

「どれどれ……は?」


 音羽が指摘した日付を見たルリは、言葉を失って固まってしまう。その異変をキッチンから見ていた瑛士が、二人のもとに慌てて駆け寄っていく。


「おい! ルリ、しっかりしろ! どうしたんだ?」

「……」


 瑛士が必死に問いかけるが、ルリは一言も発せず、タブレットを指差して訴えかける。その意図を瞬時に理解し、画面を覗き込むと、瑛士も同じように言葉を失う。


「は? 一体どういうことだよ……」


 固まってしまった二人の様子を見た音羽は、小さくため息をつくと、その反応は想定内と言わんばかりに話し始める。


「まあ、普通はその反応になるわよね……」

「音羽……これは一体どういうことだ?」

「見ての通りよ。さっきも言ったでしょ? データは改ざんも何もできないって」


 呆れたように音羽が言い放つと、瑛士が食って掛かる。


「ああ、たしかにお前はそう言った。だけど、どう考えても改ざんされたとしか思えないだろ! この非公開データの日時は、俺たちが迷宮の秘密通路から脱出した()()()()だぞ!」


 指差した画面に映し出されていたのは、瑛士たちが秘密通路から脱出した、ちょうど一時間後の時間だった。


「そうね、一時間後で間違いないわね……」

「そうだ! だけど、あの日は大規模なシステム障害が発生して、迷宮の管理システムそのものがダウンしていたはずだろ? しかも、その時間にも攻略が記録されている。そんなこと、ありえないんだよ!」


 真っ当な反論を展開する瑛士を見て、音羽は大きく息を吐くと、珍しく語気を強めて反論する。


「そんなこと、私にだってわかるわよ! 瑛士くんの言ってることだって……でも、記録されていたのは事実なの! どうしてかなんて、私にわかるわけないじゃない!」

「う……たしかに、その通りだ……」

「だいたいね、私だって好きでこんなものを覗き見しているわけじゃないのよ? 貴重な私の時間を削って調べているの!」


 自分の感情を露わにしない音羽が訴える様子に圧倒され、豆鉄砲を食らった鳩のように驚く瑛士。そんな彼の様子などお構いなしに、彼女の口撃は止まらない。


「今どき紙チャートで記録したものをそのままスキャンして保存なんて、ありえないでしょ? 見にくいったらありゃしない! しかも、感熱紙みたいな紙だからムラがすごいのよ。解析ソフトとか動かしてるせいで、せっかく仕掛けた盗聴器や監視カメラの()()()()()()()()し……瑛士くんの私生活を見つめるという私の楽しみが削られるのよ? そのせいで二次元に課金していることを見逃すなんて……これは由々しき事態だわ」

「おい……ちょっと教えてほしいんだが、お前の楽しみが人の監視って、どういうことだ?」


 一段低いトーンで話す瑛士の声を聞いて、我に返った音羽の顔に焦りが滲む。視線を明後日の方向に向けながらカタコトの言葉で話し始める。


「サーナンノコトカシラ? ワタシハエイジクンノニュウヨクシーンマデハミテナイワヨ?」

「音羽……ちゃんと質問に答えろ……お前、どこまで盗聴器とカメラを仕掛けた?」

「……あー、ごめんなさい。ちょっと大切な用事を思い出して……」

「ん? 逃がすわけないだろうが! 風呂場にもカメラを仕掛けてるのか!」


 瑛士の迫力に負けた音羽は、不貞腐れたように口を尖らせながら答える。


「さすがにお風呂の中にまでは仕掛けてないわよ。それに、固定式のカメラだとルリちゃんにも迷惑がかかるから、超小型マシーンを使ってピンポイントで撮影してるだけだし」

「どこに最新技術を使ってるんだよ! それに、使い方が大幅に間違ってるじゃねーか!」

「え? 間違ってないわよ! 瑛士くんの行動を逐一監視するのは義務でしょ? さっきみたいに課金したりするから悪いんでしょ?」

「はあ? 人のプライベートに干渉するのはやりすぎだろうが! それに課金じゃない! 応援だって言っただろうが!」

「何が応援よ! そんなお金があるなら、私にプレゼントの一つでも買ってくれてもいいじゃない!」


 瑛士と音羽の言い争いが激化してくると、先程まで固まっていたルリが、呆れた様子で仲裁に入る。


「はいはい、二人とも、夫婦喧嘩は後でやってくれなのじゃ」

「誰が夫婦なんだよ! 誤解を招くような言い方するんじゃねーよ!」


 瑛士の怒りが仲裁に入ったルリに向かった時、音羽がまんざらでもなさそうな声を上げる。


「もう、ルリちゃんに認められたら仕方ないわよね~」

「ちょっと待て! なんで喜んでるんだよ! 俺は認めてないって言ってるだろ!」

「瑛士くん、この家でのルリちゃんの発言は絶対なのよ?」

「いつからだよ! そもそも――ここは俺の家だ!」


 リビングに瑛士の絶叫が響く中、タブレットを手にしたルリが、ある画面を表示させる。


「ご主人は、もうちょっと落ち着きを持ったほうが良いと思うぞ?」

「誰のせいでこうなったと思ってるんだ?」

「そんなことより、二人ともこれを見るのじゃ。次のお知らせが届いておるぞ」


 見せられた画面の表示を見た瑛士と音羽は顔を見合わせ、揃って怪しげな笑みを浮かべる。

 ルリが見せた新しいお知らせの内容には、一体何が書かれていたのだろうか?

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