第8話 消えた大穴と瑛士の推理
大声を上げて固まっているルリの所に、瑛士たちが集まって声をかける。
「ルリ、そんな大声を出してどうしたんだ?」
「ルリちゃん、そんなにビックリするようなことがあったの?」
「キュ、キュー?」
「ニャー?」
瑛士たちだけでなく、ルナや翠も心配そうに声をかけると、固まっていたルリが震える声で話し始める。
「な、なんで穴が消えているのじゃ……というより、目の前が目隠しフェンスに戻っておるのじゃ……」
目の前に広がる目隠しフェンスを指さしながら、震える声で答えるルリ。
「言っている意味が全く分からないんだが?」
「そうよ、ルリちゃん。穴なんてどこにもないわよ」
彼女が言っている意味が全く理解できず、首をかしげながら声をかける瑛士と音羽。
「ち、ちがうのじゃ! さっきまでフェンスが消えていて、見たことも無い大穴が開いていたのじゃ! まるでこの空間だけ別次元に転移したような感じじゃった……ルナ、翠、お前たちも見たじゃろ?」
必死に説明をするルリがルナたちに助けを求めるように話を振ると、二匹が元気よく鳴き声を上げる。
「キュー! キュキュキュ」
「ニャー、ニャニャ」
「なんだって? ここに大きな真っ黒な穴が開いていただと……」
「翠ちゃんが、その大穴を見つけたのは自分だよって……」
瑛士と音羽が二匹の声を代弁すると、落ち着きを取り戻したルリが力なく呟く。
「やっぱり見間違いじゃなかったのじゃ……」
安心して力が抜けたのか、そのまま床に座り込んでしまうルリ。すると心配したルナが駆け寄り、彼女の肩に飛び乗って頬を舐め始める。
「ふふふ、くすぐったいのじゃ。心配してくれてありがとうなのじゃ」
「キュー」
笑顔を浮かべたルリが優しくルナの背中を撫でると、嬉しそうに鳴き声を上げる。和やかな雰囲気に包まれ始めた時、瑛士が歩み寄り、片膝を付いて目線を合わせて話しかける。
「ルリ、少しは落ち着いたようだな?」
「ああ、ご主人。ちょっと取り乱してしまって申し訳ないのじゃ……もう大丈夫だと思うのじゃ」
小さく首を左右に振り、まっすぐ瑛士を見つめるルリ。そんな彼女の様子を見て、瑛士は真剣な表情で声をかける。
「その表情なら、もう大丈夫だな……いろいろ確認したいことがあるが、いいか?」
「何でも聞いてくれなのじゃ。もっとも、わかる範囲でにはなるがのう」
「わかる範囲で大丈夫だ……俺が考えていることの再確認をしたいだけだからな」
小さく息を吐きながら瞬きをすると、改めてルリに問いかける瑛士。
「お前が見た大穴というのは、底が見えない真っ黒なものじゃなかったか?」
「まさしくそれじゃ! 見つめていたら、どこまでも吸い込まれてしまう……そんな恐怖が襲う感覚じゃったのじゃ」
「やっぱりそうか……」
ルリの返答を聞いた瑛士は顎に手を当て、考え込むように首をかしげると、さらに質問を重ねる。
「なあ、ルリ。その時なんだが……翠はどこにいた?」
「わらわが見たのは、穴の反対側にいたのじゃ。その後、迎えに行こうと思って声をかけたのじゃが……」
「穴の中に飛びこむように進んだんじゃないか?」
「な……そ、その通りじゃ……」
ルリが言葉に詰まった瞬間、まるで代弁するかのように言葉を繋ぐ瑛士。その答えを聞き、口を開けたまま固まってしまう。すると、黙って聞いていた音羽が不思議そうな顔で問いかける。
「ねえ、二人の話を聞いていても全く先が読めないんだけど? ルリちゃんが言っている穴と翠ちゃんが、何か関係あるわけ?」
「さすが音羽だな。断片的な情報で重要ポイントを押さえてくる」
「は? 何を言ってるのか、さっぱりわからないんだけど?」
不機嫌そうに聞き返す音羽に対し、瑛士が確信を得たような表情で話し始める。
「まだ情報が足りていない部分が多いが、わかる範囲で説明しよう。以前、迷宮の三階層で謎の大穴を見たという話をしたのは、二人とも覚えているな?」
「そんなことも言っていたわね」
「うむ、そんな話を聞いた覚えがあるのじゃ」
瑛士の問いかけに対し、記憶をたどりながら返事をする音羽とルリ。そんな二人の様子を見て、小さく頷くと、さらに話を続ける。
「まあいい、重要なのはここからだからな。俺の時も、迷宮内には存在しないはずの大穴が開いていた……今回のルリも、そんな感じだろ?」
「そうじゃのう、状況としては、ものすごく似ているのじゃ」
「まあ、俺の時は迷宮の中だったしな。だが、どちらのケースも共通事項が存在する……それは、近くに翠がいたということだ!」
瑛士が視線を動かした先には、我関せずといった様子で毛づくろいをしている翠がいた。
「ここからは俺の推測で確証があるわけじゃないが……翠が関係していると思うんだ」
「た、たしかに……偶然にしては出来過ぎているのじゃ」
ルリの言葉を聞いて、全員の視線が翠に一斉に向けられる。
「ニャ、ニャー?」
集中する視線に気が付いた翠は毛づくろいをやめ、不思議そうに首をかしげながら鳴き声を上げる。そして立ち上がると、喉を鳴らしながら瑛士の足元にすり寄り、そのまま優しく抱きかかえられる。
「驚かして悪かったな。さて……話はここで終わりなら良かったんだが、もう一つ重要なことがあるんだ」
翠を抱きかかえた瑛士が真剣な表情で口を開く。
彼の口からいったい何が語られようとしているのか――
最後に――【神崎からのお願い】
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