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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十四章 交差するそれぞれの思惑

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第5話 謎の大穴と翠の思惑

 目の前に出現した黒い大穴に飛び込んでしまった翠を直視できず、両手で顔を覆ったままルリはその場に座り込んでしまった。


「た、大変なことになってしまったのじゃ……翠が落ちてしまって……早く何とかせねば……」


 頭では助けに行かないとわかっていても、現実を直視することを体が拒否していうことをきかない。何もできずにただ呆然と座り込んでいると、服の裾を引っ張る感触が伝わってきた。


「キュ、キュー!」

「ルナ……わらわはどうしたら良いのじゃ? 底が見えない大穴に翠を飛び込ませてしまったのじゃ……あの時、わらわが呼ばなければ……」

「キュキュキュ―!」

「え? いいから前を見ろじゃと? しかし、翠はもう……」

「キュー、キュキュキュ!」


 煮えきらないルリの態度に苛立ったルナは、顔を覆っていた手を無理やり剥がすように勢いよく飛びつく。


「わ! ルナ、危ないのじゃ!」


 あまりの勢いに驚いたルリが顔から両手を離し、咄嗟にルナを受け止める。


「キュ、キュー」

「無茶苦茶しおって……お前まで何かあったらどうするんじゃ!」

「キュ? キューキュキュ」

「自分は()()()()()()気にしなくてもいいじゃと? そういう問題じゃないのじゃ!」


 腕に抱いたルナを叱りつけていると、前方の大穴の方から聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。


「ニャ―? ニャニャ?」

「す、翠? そこにいるのか? 今すぐに助け……って、ど、どういうことじゃ?」


 ルリが顔を上げると、信じられない光景が目に飛び込んできた。なんと、大穴の中央に()()()()()()おり、不思議そうな顔でこちらを見つめていたのだ。


「ニャ―?」

「は? え? いや、どうしたのって言われてもじゃな……な、なんで翠が空中に浮いておるのじゃ?」


 意味がわからないルリが呆然としていると、腕の中にいたルナが鳴き声を上げながら飛び出していった。


「キュー、キュキュキュ」

「あ! ルナ、待つのじゃ! 翠の元に行きたいのはわかるが、そのまま進んだら穴に落ち……ないのじゃと?」


 飛び込んできたのは何事もなかったように空中に立ち、ルリを見つめるルナと翠の姿だった。


「ニャ、ニャ―!」

「キュキュー!」


 口を開けたまま座り込んでいるルリに対し、早くこっちに来いと言わんばかりに鳴き声を上げる二匹。


「はっ、ちょっと待つのじゃ……」


 二匹の声を聞いて我に返ったルリが立ち上がると、二匹の方へ向かって足を踏み出す。そして大穴の縁まで来て中を覗き込んだ瞬間、視界が揺れて足の力が抜けてしまった。


「こ、これは……落ちたらただ事ではすまんのじゃ……わらわはどうしたら……」


 恐怖のあまり立ち止まって穴を覗き込んでいるルリを見て、ルナが苛立ったような鳴き声を上げる。


「キュー! キュキュキュ、キュー!」

「何を止まっているの? といわれてもじゃのう……」

「キュー、キュキュキュ! キューキュキュ!」

「何を言っているんだ? そのまま真っすぐ進めば大丈夫だから! じゃと? うーん……よし、わかったのじゃ! ルナの言葉を信用できなくて何が飼い主じゃ!」

「キュー! キュキュキュ」

「そうじゃな。ルナが大丈夫というのじゃから間違いないのじゃ……」


 ルナの励ましの声を聞いて覚悟を決め、ルリが足を一歩踏み出したときだった。肉眼では何も見えないように見えた空間に、ちゃんと床があったのだ。


「な、なんということじゃ……しっかりとした床があるではないか。不安定どころかものすごくしっかりしておるぞ」

「キュー、キュキュ」

「すごいでしょ? 足元にある石を投げ込むともっと()()()()()()()()()じゃと? 言っている意味がさっぱりわからんが、試してみるか……」


 ルナの言っている意味がわからなかったが、言われたとおりに落ちていた小石を拾うと自らの足元に落としてみた。


「は? なんで石が落ちていくのじゃ? でもわらわは立ったまま……一体何が起こっておるのじゃ?」


 足元に向かって落とした石は床をすり抜け、一直線に暗闇の中に吸い込まれていく。


「キュー。キュキュ」

「いやいや、ありえないじゃろ! わらわたちは立てて、石は通過するとはどういう現象なのじゃ?」


 何が起こったのか理解できず、困惑するルリが思わず呟く。


「まるで……この場所が()()()()に置き換わっているようじゃ……」


 足元に広がる暗闇を凝視していると、勝ち誇ったように胸を張るルナ。自信たっぷりに鳴き声を上げると、彼女の元に駆け寄ってきた。


「キュー! キュキュ」

「細かいことは置いといて、早く翠のところに行こうとな。まあ……考えても答えはわからんし、翠を早く迎えに行くことのほうが先決じゃしな」

「キュー。キュキュキュー」

「後ろをついてきてくれれば安全だから、ついて来てと言っておるのじゃな。ふふふ、道案内は任せるのじゃ」

「キュー!」


 誇らしげにルナが鳴き声を上げると、ルリを従えて翠の待つ場所に歩き始める。


(うーむ、こんな大穴が空いていたら工事関係者が真っ先に見つけるはずじゃ。でもなんでだれもおらんのじゃ? まさか……翠が何かを引き起こした? しかし、先程から感じる不思議な魔力は一体何なのじゃ? 迷宮のものとも違うような気がするのう)


「ニャ―」


 腕を組みながらルリが考え事をしていると、いつの間にか翠が目の前に現れる。そして、喉を鳴らしながらルリの足首に体を擦り付けて甘え始めた。


「おお、いつの間にか到着しておったのじゃな。翠、何事もなく無事で本当に良かったのじゃ」


 足元にいた翠を拾い上げると、何かを口に加えていたことに気がついた。


「ん? 何を加えて……こ、これは!」


 咥えていた物を見たルリは、目を見開いたまま固まってしまう。

 はたして、翠は何を咥えていたのか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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