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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十四章 交差するそれぞれの思惑

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第4話 目隠しの裏に隠された秘密?

 言い争う瑛士たちを無視して、迷宮の囲いに沿うように走り出したルナを慌てて追いかけるルリ。


「ルナ、ちょっと待つのじゃ。そんなに急いでどこに連れて行こうというのじゃ」


 ルリが声をかけるが一切振り返らず、無言で走り続けるルナ。すると迷宮の業者用入り口が見えてきたところで急停止する。


「わ! 急に立ち止まるなんて聞いていないのじゃ!」


 いきなり立ち止まったルナを避けようとして、ルリが宙を舞ってそのまま地面に倒れこむ。その様子を見たルナが悲しそうな鳴き声を上げながら彼女の元に駆け寄っていく。


「キュ……キュ、キュ……」

「いてて……ルナは怪我をしておらんか?」

「キュー、キュキュ……」


 耳が垂れ下がり、申し訳なさそうな顔で鳴き声を上げるルナ。その姿を見たルリは、服についた汚れを手で軽く払うと優しく語り掛ける。


「ルナが怪我をしていないのならいいのじゃよ。じゃが、急に立ち止まるのはやめてくれると助かるのじゃ。万が一蹴飛ばしてしまったりしたら怪我だけじゃすまないのじゃよ」

「キュー、キュキュ……」

「ははは、そんなに落ち込むことはないのじゃ。それよりも、わらわを呼び出すほど伝えたい何かがあったんじゃろ?」

「キュー!」


 ルリが頭を優しく撫でながら問いかけると、何かを思い出したかのように鳴き声を上げるルナ。すると目の前にある目隠しフェンスの前で飛び跳ねる。


「ルナ、近くにいると危ないのじゃ。仮設の目隠しシートと足場じゃから、万が一倒れてきたら一大事じゃ」

「キュー! キュキュキュ!」

「それよりも早くこっちに来てほしいじゃと? いったいどうしたんじゃ?」

「キューキュキュキュ」


 必死に何かを訴えかけるルナの様子を見て、ルリは小さく息を吐いた。


「なるほど……いいからこっちに来てほしいと言いたいのじゃな。そこまで必死に訴えるには何か理由があるのじゃろうな」


 立ち上がったルリが服についた土を払うと、ゆっくりルナの元に向かって歩き出す。


「キュー! キュキュ」


 再び大きな鳴き声をあげて急かすルナの様子を見て、ルリは()()()を覚えた。


(ふむ……ここまで急かすには何か理由があるはずなのじゃが、全く予想ができん。特に変わった様子もなく、ただ目隠しのシートがあるだけじゃ。じゃが、ルナが何の考えもなしに訴えるとは思えぬ……それにさっきから感じる違和感が気になるのじゃ)


 様々な考えを巡らせながらルナのもとに着くと、違和感が確信に変わる。


「……む? この目隠しは普通ではないぞ……()()()()()()の流れを感じる。まさか、隠蔽魔法なのか? ルナ、よくぞ見つけてくれたのじゃ!」

「キュー!」

「ふふふ、やはりお前はできるウサギじゃのう」


 嬉しそうな鳴き声を上げるルナの隣で、目隠しシートを睨みつけるルリ。


(ふむ……この魔力の気配はどこかで感じたことがあるのじゃ)


 怪訝そうな顔で右手を掲げると魔力を込め始めるルリ。するとシートの一部が不自然に光り始め、空間に蜘蛛の巣みたいなひび割れが走る。


「ルナ、危ないからわらわの後ろに隠れておるのじゃ」

「キュ、キュー」


 ルナが困惑したような鳴き声を上げると、急いでルリの後ろに姿を隠す。その様子を確認すると彼女は右手に一気に力を込め始める。


「よし……さあ、正体を現すが良いのじゃ!」


 ルリが言葉を発すると同時に右手の魔力を一気に放つと、耐え切れなくなった空間がガラスのような音を立てて砕け散る。


「ははは! 魔法でわらわを欺こうなど四世紀早いのじゃ!」


 隠蔽魔法を破壊することに成功したルリが腕を組み、笑い声をあげる。


「キュー! キュキュキュー!」


 勝ち誇ったように顔を空に向けて笑うルリの周りを嬉しそうにルナが走り回る。


「ははは、ルナも嬉しいか!」

「キュー!」

「そうじゃろそうじゃろ。わらわは最強のカリスマ配信者じゃからのう! さて、隠蔽魔法まで使って何を隠したかったかのう。どうせ大したものでは……」


 勝ち誇ったようにルナと話していたルリが視線を向けた時、目の前に現れた景色に驚きの声を上げた。


「な、なんで地面に大穴が開いておるのじゃ……?」


 先ほどまであった目隠しシートは消え、幅が数メートルはありそうな底が見えない穴が現れた。それは人工的につくられたような物ではなく、何か巨大な力で地面がえぐられたように見えた。


(これはいったい何が起こったのじゃ? どう考えても意図的に開けられた代物ではないのじゃ……それにこの穴の中から感じる魔力は読書(リーディング)魔法(マジック)に近いものじゃ。しかし、ご主人と音羽お姉ちゃん以外に使えるものなど……)


 穴を見つめながらルリが考え事をしていると、聞き覚えのある鳴き声が響く。


「ニャー、ニャニャニャー」

「この声は……翠なのか?」


 ルリが周囲を見渡すと、穴の反対側から翠がこちらを見つめて鳴き声を上げていた。


「おお! 姿が見えないと思ったらそんなところにおったのじゃな! 今すぐ迎えに行くからその場所を動くのではないぞ」

「ニャ、ニャー!」

「あ! ちょっと待つのじゃ!」


 慌ててルリが制止しようと声をかけた時は、既に手遅れだった。満面の笑みを浮かべた翠が底の見えない穴に向かって跳び出してしまった。


「す、翠! 落ちちゃうのじゃ! な、何とかせねば!」


 大きく口を開けた穴に向かって吸い寄せられるように飛び込む翠を見て、真っ青な顔で慌てふためくルリ。

 思わず顔を両手で隠した彼女だったが、この直後に想像を超える光景を目にすることになる……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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