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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十四章 交差するそれぞれの思惑

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第1話 終わらない工事と瑛士の焦り

 改修工事がアナウンスされてから二週間が経とうとしていた。本来であれば再オープンの予定日だったのだが……


「なんでまだ囲われたままなんだよ! いつになったら工事が終わるんだ?」


 大声をあげて怒りをあらわにしていたのは、様子を見に来た瑛士だった。


「ご主人、大声を出しても状況は変わらんのじゃ。再オープンが遅れておるという()は本当じゃったのじゃな」

「ネットの情報だったから半信半疑だったけど、もうしばらくはかかりそうな感じね」


 少し離れた位置で彼の様子を見ていたルリと音羽は、呆れた様子で話しかける。それでも納得のいっていない瑛士は二人に喰ってかかるように話しかける。


「最初の話では二週間で終わるって書いてあったんだ。何のアナウンスもないままというのはありえなくないか?」

「ご主人の気持ちはわかるのじゃが……終わってないものは仕方ないじゃろ」

「そうよ、瑛士くん。焦る気持ちはわかるけど、大声だしてもなにも変わらないわ」

「う……二人の言う通りだが……」


 二人に諭されて拗ねたように口をとがらせる瑛士を見て、ルリは首をかしげて音羽に問いかける。


「音羽おねえちゃん、ご主人はどうして急に()()()()()のじゃ?」

「ああ、ルリちゃんには話してなかったもんね。一週間くらい前だったかしら、この場所で飯島の側近と思われる男の人に会ったのよね」

「なんじゃと?」


 驚くルリを見た音羽は、小さく息を吐くと説明を始める。ルナと翠を連れて警備員を探しにルリが出かけた直後、スーツを着た紀元という男性が二人の前に現れた。工事現場とは不釣り合いな服装と妙な威圧感をまとった人物で、気味が悪いほどフレンドリーな感じだった。そして、関係者しか知らないはずの迷宮内の工事内容について詳細に説明してくれたことなどを話した。


「ふむ……音羽お姉ちゃんの話を聞いていて思ったのじゃが、ご主人がそこまで焦る内容があるように思えんのじゃが」

「ここからが重要なのよ。観光客向けに迷宮の一部が解放されるみたいなの。それも一階層だけじゃなくて二階層までらしいのよ」

「ほう、二階層まで解放される……じゃと?」


 音羽の言葉を聞いたルリが驚きの声を上げると、大きく口を開いたまま固まってしまう。


「驚くのも無理はないわね。普通に考えてモンスターがうろうろしている階層に、観光客が歩き回ってるなんて考えられないわ」

「間違いないのじゃ……いくらホーンラビットとはいえ、囲まれたらけがどころでは済まないのじゃ……」


 ルリの脳裏に浮かんだのは、初めて迷宮に挑んだ時の悪夢だった。低階層でホーンラビットの見た目から油断してしまい、一瞬で取り囲まれて絶体絶命のピンチに陥ったのだ。この時は瑛士が突然覚醒したことにより無傷で脱出できたのだが、一般人となればけがで済むとは思えない。青い顔で全身が小刻みに震えるルリを見た音羽が、優しく肩に手を置きながら話しかける。


「ルリちゃん。過去に何があったのかわからないけど、想像しているようなことは起こらないと思うわ」

「そうだと思いたいのじゃが、迷宮内で何か起こっても自己責任じゃし……」

「そうね、迷宮は治外法権だし……でもね、紀元って人が、()()()()()()()()()()()()()を開発したって言っていたのよ」

「モンスターを制御できる方法じゃと? その方法とはまさか……」


 語られた内容を聞いたルリが目を見開いて音羽を見つめる。その様子を見た彼女は、怪しげな笑みを浮かべながら答える。


「ええ、私たちが迷宮で見つけたあの基盤を使った方法だと思うのよ」

「そういうことか……じゃから音羽お姉ちゃんは、紀元とか言う人物が飯島の関係者と言ったんじゃな」

 ええ、そうよ。ただ引っかかることが多いのよね……」


 腕を組みながら険しい顔で語る音羽を見て、ルリが心配そうにのぞき込む。


「音羽お姉ちゃん、どうしたんじゃ? ひっかかることって何があったのじゃ?」

「うーん、たぶんルリちゃんならわかると思うけど……あんな基盤でモンスターを完全に制御するなんて不可能だと思うのよね」

「たしかに……わらわたちが奇妙な基盤を見つけた時も、制御できているというより暴走に近い状態だったように思えたのじゃ」


 難しそうな顔をして二人が考え込んでいると、険しい顔をした瑛士が話しかけてきた。


「俺もルリの意見に同意だな。どう考えてもモンスターを制御するなんて不可能だ、たとえ二階層のホーンラビットだとしても」

「やはりご主人もそう思うか?」

「ああ。飯島たちが何を考えているのかわからないが、まともな研究ではないことは間違いない」


 苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた瑛士は、吐き捨てるように言い終えると顔を逸らす。すると、彼の様子を黙って見ていた音羽が優しく声をかける。


「飯島の研究がどれほど人の道から外れた物かよく知っているわ」

「ああ、アイツは人の命を虫けらのように扱う悪魔だ! だからこれ以上、犠牲者を出すわけにはいかないんだ」

「そうね。瑛士くんが言うことも一理あるわ。でも何の考えも無しに、無関係な一般人を巻き込むようなことはしないと思うの」


 音羽の言葉を聞いた瑛士は、金魚のように口を動かしながら固まってしまう。

 彼女にとっても因縁の敵である飯島に対し、擁護するような発言の意図はなんなのか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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