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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間⑬

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閑話⑬ー5 訪れる嵐の前触れ

「な、なんという事じゃ……」


 目的の魅せに到着したルリが店先に掲げられた注意事項の看板を見て、この世の終わりのような顔をして膝から崩れ落ちる。


「キュー?」

「ニャ、ニャー?」


 彼女の様子を見たルナと翠が心配そうな鳴き声を上げながら、擦り寄ってきた。


「す、すまんのう……まさかこんな()()()()があったとは知らなかったのじゃ」


 ルリが見上げた先にあった看板には『ペットの入店禁止』の文字が書かれていた。そして、一緒に見上げていたルナが体をするつけながら鳴き声を上げる。


「キュ、キュー、キュキュ」

「え? 自分たちなら心配ないから楽しんできてほしいじゃと?」

「キュー、キュ」

「そのかわりおやつを買ってきてほしい。あとで一緒に食べようと言っておるのか?」

「キュー!」


 目を丸くして見つめているルリに対し、誇らしげに胸を張って座っているルナ。その様子を見て思わず吹き出しながら話し掛ける。


「ぷっ、ははは! さすがわらわが認めた家族じゃ! とっておきのおやつを用意するから待っていてくれるか?」

「キュー! キュキュキュ」

「なになに? それならば翠を連れて遊んでくるとな。お腹を空かしてくるってことじゃな」

「キュー! キュキュ」


 ルナが誇らしげに鳴き声を上げると、翠に向かいアイコンタクトを送る。するとすべてを理解していたのか、二匹は公園のある方に向かって走り出していった。


「ふふふ、物分かりが良いヤツらで本当に助かるのう。さて、わらわも良いおやつをゲットするために頑張るかのう」


 走り去っていくルナたちを見送ると、ルリは観光客でにぎわう店内に足を踏み入れる。


「目的の店はどこじゃったかのう?」


 目的の店を探すため辺りを見渡すと、様々なお菓子や特産品が売られているお土産売り場があり、ルリは目を輝かせた。


「おお、お菓子もたくさん売っているのじゃ! どれも美味しそうじゃのう……っていかんいかん。わらわの目的を達成するのが先なのじゃ」


 魅力的なお菓子の誘惑に負けそうになりながら、必死に辺りを見渡していた時だった。奥の方にみたらし団子作り体験というのぼりを発見すると、思わず声を上げるルリ。


「あったのじゃ! ここへ来た目的はみたらし団子作成体験なのじゃ!」


 ルリの声が店内に響き渡り、全員の視線が一斉に向けられる。


「ねえ、あの子って人気急上昇中の配信者じゃない?」

「もしかしてルリ様?」

「え、うそ? 本物?」


 ルリの存在に気が付いた店内のお客さんが次々と声を上げ始める。その声に気が付いた彼女は少し困ったような表情で俯き、腕を組んで考え込む。


「む? わらわの下僕どもも多数遊びに来ておったのか。本来であれば交流を図るべきじゃが……大切な任務を遂行せねばならぬ、みたらし道を極めるという使命があるのじゃ!」


 ルリが顔を上げて見つめた先にあったのは、みたらし団子作成体験と書かれたのぼりだった。店内奥にある茶店で、七輪を使ってみたらし団子を好みの焼き加減で食べられるというサービスを行っていた。用意される団子は厳選された米粉を使用しており、一般的に売っているものとはまったくの別物と言われている。一度食べると他のみたらし団子では満足できないほどと言われており、ルリもずっと楽しみにしていたのだ。


「下僕どもには申し訳ないが、わらわは行かねばならぬ……」


 真剣な表情で人を寄せ付けないオーラを纏い、茶店に向かって歩き始めるルリ。その様子を見た店内の人々からさらに声が上がる。


「おお……あれが人気配信者の放つオーラなのか」

「やっぱりルリ様で間違いないわ……なんと凛々しい佇まい……」

「くっ……やはりカリスマ配信者となると、纏っているオーラが違い過ぎる……」


 様々な声が上がるとルリのオーラに圧倒された人々が一斉に道を開け始め、モーゼの十戒のような光景が店内に広がり始める。


「ふふふ、苦しゅうないぞ。この光景をご主人にもみせてやりたかったのう」


 人々の視線を一斉に浴びながらご満悦で歩くルリだったが、茶店の前につくと何やら不穏な空気を感じ取る。すると、店内から甲高い女性の叫び声が聞こえてきた。


「きー! だから私は()()()()()()って言っているでしょ!」

「で、ですから年齢の分かる身分証明書がないとアルコール類は提供できないんです」

「はあ? こんな大人なレディなことくらい見ればわかるでしょ! それにノンアルを頼んでるんだから!」

「そう言われましても……規則は規則でして……」


 困り果てた店員が必死に説明しているが、一切聞く耳を持たない女性。


「むむむ……これはいかん! わらわの任務を邪魔する不届き者があられるとは……よし、ここは一肌脱ぐ必要がありそうじゃな!」


 外から様子を窺っていたルリが勢いよく店の扉を開け、騒いでいた女性に向かって声をかける。


「話は聞かせてもらったのじゃ! お店に迷惑をかけるのは……って子供?」


 意気揚々と声を上げたルリの視界に飛び込んできたのは、困り果てた顔をした店員と腰まで伸びた黒髪をツインテールにしたスーツを着た女の子だった。

 この出会いが後に世界すら巻き込む世界を巻き込む騒動に発展するとは……誰も気がついていなかった。

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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