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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十三章 望まぬ対面の時

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第8話 ニアミスと近づく激突の足痛

「え? どういうことなんじゃ? わらわは一体誰と対峙しておったんじゃ?」


 言葉を聞いたルリが困惑していると、音羽が落ち着かせるように話しかける。


「ルリちゃん、その人物って()()だった? それとも何か変な仮面とかつけてなかった?」

「うーん……言われてみればなんか変なお面をつけておったのう。それにスーツの男性陣に名前を呼ばれそうになると、ものすごい勢いで静止しておったぞ」

「あーなるほどね。ありがとう、いろいろ納得できたわ」


 音羽が腕を組みながら頷いていると、意味がわからないルリが不思議そうに聞き返す。


「音羽お姉ちゃん、わらわには言っている意味がさっぱりわからんのじゃが……」

「俺もルリに同意だな。なにが言いたいのかさっぱりわからなくなってきた。そろそろわかるように説明してもらってもいいか?」


 瑛士とルリが揃って疑問をぶつけると、音羽は大きくため息を吐きながら答える。


「ルリちゃんはともかく……瑛士くんは本気で言っているの?」

「本気でって何の話だよ? 全く意図がわからないんだが」

「これだけヒントを与えてるっていうのに、誰が騒いでいたのかわからないのか?って聞いているの。その様子だと本気でわからなさそうね……」

「なんか馬鹿にされているみたいでムカつくな……」


 返答を聞いた瑛士が不機嫌そうに答えると、音羽が煽るように話しかける。


「バカにしているわけじゃないんだけど、ものすごく鈍感だなって思っただけよ」

「それはどういう意味だよ? だいたいさっきの説明のどこにヒントが隠されていたっていうんだ」

「すごくいっぱい手がかりがあったじゃない。仕方ないからキーワードとなる単語をもう一度言うわよ。中学生くらいの子供、甲高い金切り声で騒いでいたこと、スーツ姿の取り巻きがいたこと、顔バレしたらまずいから変なお面をつけていたこと、そしてなによりも名前を呼ばれることを極端に嫌っていたこと……これでもわからない?」


 音羽の上げたキーワードを聞いた瑛士は、右手を顎に当てながら考え始める。


(中学生くらいの子供が金切り声を上げる? それに取り巻きがいて、名前と顔バレをしたくない……ちょっと待て、なんか似たような話を聞いたような気がするぞ……)


 しばらく考え込んでいた瑛士だったが、迷宮の改修工事を眺めていたときにルリから聞いたあることを思い出すと声を上げる。


「もしかして……迷宮の一階層で騒いでいたとか言うヤツと()()()()ってことか?」


 瑛士の結論を聞いた音羽が不敵な笑みを浮かべると口を開く。


「ようやくわかったようね。御名答、間違いなく飯島女史本人で間違いないわ」

「な、なんじゃと! わらわは飯島女史と対峙しておったのか!」


 音羽の言葉を聞いたルリが驚きの声を上げた。すると何か思い当たるフシがあったのか、腕を組んでブツブツと独り言をつぶやき始める。


「言われてみれば、あのキャンキャンと喚く耳障りな声には聞き覚えがあったかもしれぬ。あまりにも不快すぎて記憶からシャットアウトしてしまっていたからのう……それに人の言うことを全く聞いておらんし、わらわに歯向かおうなど愚かなことをしたもんよ」


 ルリの独り言を聞いた瑛士が思わず問いかける。


「お前……あの飯島女史を目の前にしてよく堂々としていたよな。ルリ自身もアイツからしたら探し回ってる人物の一人かもしれないのに……」

「うむ、言われてみればそうかもしれん」


 あっけらかんと答えるルリに対し、額に手を当てて項垂れる瑛士。


「じゃが、わらわの姿を覚えておらんと思うのじゃ。何年も前のことじゃし、ヤツの前では本の状態じゃったしな」

「そういうことか。それにしてもどうやって追い払ったんだ? 取り巻きですら手を焼くような人物だぞ?」

「ああ、そのことか。なんでも『私を誰だと思っているのよ!』とか言ってきたから、『お主のことなど知らん! 迷惑じゃからさっさと親御さんのところに帰るのじゃ!』と言ってやったのじゃ」


 ルリが胸を張って答えると、空いた口が塞がらないと言った様子で固まる瑛士。すると、黙って聞いていた音羽が急に笑い声を上げて話しかける。


「あはは! ルリちゃん最高すぎるわ! あの飯島女史に親のところに帰れはなかなか言えないし、取り巻きのスーツたちも笑いを堪えるのが必死だったでしょうね。自分よりはるか年下の子にド正論をぶつけられて、プライドをへし折られたらこの場から逃げ出すしかないもんね」

「そういうものなのじゃろうか? まあ、わらわのようなカリスマともなると正しい方向へ導いてやる義務があるからのう」


 お腹を抱えて大笑いする音羽と自信たっぷりな表情で胸を張るルリ。対照的な二人の様子を見ていた瑛士は頭を抱えながら、その場に立ち尽くしてしまう。そして、二人に向かって恐る恐る話しかける。


「上機嫌なところ申し訳ないが、今後どうするんだ? 俺たちの予想よりももっと近くに飯島がいることもわかった。ましてやヤツ本人や側近と思わしき人物と接触もしたということは、激突する日も遠くないぞ?」


 瑛士の言葉を聞いた音羽は、急に真面目な顔になると小さく息を吐いて答え始める。


「そうね。こちらの行動は向こうに筒抜けと思っていたほうがいいかもしれないわ」

「だろうな。そうなると迷宮攻略を進めるにしても、かなりの妨害が……」

「むしろ逆だと思うわ。忘れた? 飯島本人も攻略配信を始めるって言っていたじゃない。私たちに妨害をしようもんなら、真っ先に疑われるのは間違いないの。だって、迷宮の管理もしてる側だし」

「あ! そういうことか……」


 音羽の指摘を聞いて、瑛士が驚きの声を上げる。


「そういうこと。だから私たちは安心して迷宮攻略を進めればいいのよ。だけど、相手の出方も気になるから、配信を見てどう動くか決めましょう」

「それが一番の得策だな……お前の意見を尊重するよ」


 提案を聞いた瑛士が納得したように頷いていると、後ろからルリの悲痛な叫びが聞こえていた。


「わー! ご主人、助けてほしいのじゃ! お団子が網にくっついて取れなくなったのじゃ。早く救出してくれ!」

「はぁ? 人が真剣な話をしているときにお前は何をやってるんだよ……」


 大きく息を吐くと、網がくっついた団子を振り回しているルリのもとへ駆けつける瑛士。目を細めながらその様子を眺めていた音羽が小さく呟いた。


「ふふふ、こんな平和な日が永遠に続くといいわね。あの紀元っていう人の目つきがどうしても脳裏から離れないわ……なにか()()()()()()のは間違いないだろうけど……」


 ルリと瑛士の賑やかな声が響く店内から迷宮の方を見つめる音羽。

 彼女の危惧することは現実となるのか?

 着々と進む改修工事が新たな展開の幕開けと三人が知るのは、そう遠くなかった……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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