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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十三章 望まぬ対面の時

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第2話 因縁の相手は意外と近くに?

「ちょっと瑛士くん、どうしちゃったの?」


 険しい表情のままルリが走っていった方向を睨みつけている瑛士に対し、不思議そうな表情で問いかける音羽。


「音羽、今のルリの話を聞いて何か気が付かなかったか? 指示を出している人物について」

「中学生くらいの子でしょ? それが……あっ! まさか()()()()()()がきているってこと?」


 音羽の表情が変わった瞬間、瑛士がほんの僅かに口元を引き締める。


「そういうことだ……まさかこんなに早く尻尾を掴めるなんてな」

「でも……すごく引っかかるんだけど?」


 勝ち誇ったような表情で胸を張る瑛士に対し、怪訝な顔で問いかける音羽。


「何だ? なにか引っかかるようなことでもあったか?」

「うん。仮に飯島女史が迷宮内で何かをしていたとして、どうやって()()()()の? 私たちでは迷宮の中に入ることは不可能よ」

「そうだな。正攻法で侵入しようとしても、絶対無理だろう」


 音羽の話を聞いていた瑛士は、小さく息を吐くと目の前にそびえる迷宮に視線を移す。厳重な目隠しフェンスと足場が組まれ、中の様子を伺うことすら不可能だ。


「そうね。正攻法も何もこの足場を超えたところで、中がどんな状態かわからないし……通報されるようなことがあればこっちのほうが一気に立場が危うくなるわよ?」

「そうだな。いくらなんでもそんな危ない橋をわたるわけ無いだろ」

「じゃあ、どうするの? もう打つ手がないわよ……」


 呆れたような表情の音羽が聞き返すと、瑛士は腕を組みながら勝ち誇ったような顔で答える。


「ふふふ、音羽らしくないな。俺がなんのためにルリを向かわせたと思ってるんだ?」

「言っている意味がわからないんだけど?」

「ルリのリスナーにここの警備員がいるだろ? 彼らの協力を仰げれば堂々と……」


 瑛士が意気揚々と話を進めようとしたところで、言葉を遮るように音羽が大きなため息を吐く。


「はぁ……どうせ堂々と中を案内してもらおうって魂胆でしょ?」

「なんでわかったんだ?」

「瑛士くんの考えそうなことぐらいわかるわよ……あのね、その方法は絶対に不可能だから」


 額に手を当てながら小さく首を振ると、呆れたように話し始める音羽。


「あのね、警備員さんってなんのためにいると思うの? 部外者を立ち入らせないようにしたり、問題が起こったときに直ぐに対応するためにいるのよ。いくらルリちゃんのファンだからといって、私たちのような部外者をなんの許可なく入れてくれるわけ無いでしょ?」

「う……いや、まだわからんぞ? ルリが直接頼めばもしかしたら……」

「あと、重要なことを忘れているようだけど……仮にうまく中に入れたとしてどうするの?」


 完全に冷めた目で見つめる音羽に対し、起死回生のチャンスがきたと張り切って話し始める瑛士。


「よくぞ聞いてくれた! 中を見学するふりをしながら飯島女史の動向を伺うんだ。そして、一人になったところで奇襲を仕掛ければ……」

「間違いなく――()()()()わね」


 瑛士が言い終えるよりも早く、バッサリと切り捨てる音羽。


「なんでそんな事がわかるんだ? 飯島女史が一人になったときなんて絶好のチャンスだろうが!」

「ほんと単純なんだから……たしかに迷宮内で起こったことは治外法権だし、罪に問われるようなことはないわ」

「よくわかってるじゃないか。だからこそ他の探索者や配信者がいない今がチャンスなんだよ!」

「ええ、そうね。たしかに人が少ない……けれど、重要なことを忘れていない? 迷宮の管理権限を“実質的に”握っているのは飯島の会社よ?」


 音羽の言葉を聞いた瑛士は、何が問題かわからないといった表情で首をかしげている。


「何をいっているんだ? 飯島の会社が受注したのは迷宮のシステム関係の管理だけで、根本の管理権限は違うだろ? いくら飯島の息がかかった人間が増えているといえ、そこまで多くはないだろ」


 瑛士の言葉を聞いていた音羽が、納得したように手を叩いて納得したような表情になる。


「あーそういうことか……瑛士くん、表に出ている情報しか知らなかったのね」

「表に出ている情報だと? なんのことだ?」

「たしかに迷宮の管理をしているよくわからない法人の発表では、飯島の会社とシステム管理契約を結んだと書かれているわ。でもいろいろ探っていくとその発表の数週間前に理事メンバーの大半が入れ替わっているのよ」

「入れ替わっている? そりゃ何か問題が起これば責任を取って辞任するとかよくある話じゃないか」

「そうね。民間の会社ならなんの違和感もないわ。でもこの法人って役所関係の天下り機関だって有名なのよ?」

「そうなのか? それと今回の入れ替えになんの関係があるんだ?」


 まだピンときていない様子の瑛士を見て、彼女は言葉を選びながら話を続ける。


「天下りをしてくるような人間が、大人しく責任を取って辞めると思う? 特に何もしなくても手元にお金が転がり込んできて、名誉も権力もある立場だったら全力で守ろうとしない?」

「そりゃそうだな。別の人間に罪をなすりつけてでも実を守るのが普通だ。いや、ちょっとまて……なんでそんな人間が理事というポジションを捨てるんだ?」


 ようやく音羽の意図に気がついた瑛士が疑問を口に出した時、二人の背後から聞き覚えのない声が聞こえてきた。


「なかなか鋭い見立てをする子どもたちだ。まさか発表されている情報から推測を立てるとはな」


 慌てて振り向くと、黒いスーツを着た男性が二人に向かってゆっくりと近づいてくる。

 瑛士と音羽に接触してきた人物とは一体誰なのか――

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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