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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十二章 つかの間の日常

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第8話 真の悪役爆誕?

 顔を上げた瑛士はまっすぐ音羽を見ると、ゆっくりとした口調で話し始める。


「どう動くか……ヤツ(飯島)が動き出した以上、どこかで激突するのは避けられないだろうな」

「そうね。こちらの動きは間違いなく筒抜けだろうし」


 返答を聞いた音羽が小さく息を吐くと、瑛士が不敵な笑みを浮かべる。


「音羽らしくないな。筒抜けだからこそ()()()()じゃないのか?」

「ふふふ、面白い回答ね。じゃあ逆に聞くけど、瑛士くんならどう対策するのかしら?」


 お互いに鋭い視線を向けると、リビングの空気に緊張が走る。そして一瞬の静寂が訪れた時、二人が同時に吹き出した。


「プッ……ダメだ! 俺には耐えられないわ!」

「あはは! 瑛士くんらしくなさすぎて笑えてきちゃったわ」

「はぁ? どういう意味だよ! 俺だってやるときはやるんだからな」

「はいはい、わかってるけど……ぜんぜん悪役らしい雰囲気ゼロなんだもん。もうね、言い方が満を持して出てきたけど、すぐに返り討ちにあうモブのやられ役そっくりで」


 先程までリビングに漂っていた緊張感はなくなり、和やかな空気に包まれ始めていた。


「いくらなんでもひどくないか? 俺だって色々考えて話してるんだぞ!」

「はいはい、わかってるって。それじゃあ、改めて瑛士くんの考えを聞かせてくれない?」


 改めて瑛士に向き直ると今度は笑みを浮かべながら、優しい視線を送る音羽。そして恥ずかしそうに頬をかきながら話し始める。


「なんか調子狂うな……俺の考えとしては、小細工なしで今まで通り迷宮攻略を進めようと思う」

「なるほどね。でも飯島の息がかかった人間が、これまで以上に増えるのはわかっているわよね?」

「もちろんだ。だからこそこっちにとっては好都合なんだ」


 瑛士の返答を聞いた音羽は眉間にシワを寄せ、怪訝そうな表情で聞き返す。


「うーん、私には瑛士くんが言っている意味がわからないわ。どう考えてもこちらに都合の悪い状況じゃないの?」

「普通に考えればそう思われても仕方ないが、なにか忘れてないか? 飯島本人が迷宮攻略の配信をするって言い出してるんだぞ?」

「あっ! そういえばそんなことを口走っていたような……」


 彼の言葉を聞いた音羽は、先程の飯島が配信で口走った内容を思い出す。リスナーに煽られる形ではあったが、迷宮攻略配信をすると明言していた。


「思い出したか? プライドが高いヤツだから、一度言い出したら何が何でもやるだろう」

「それはそうなんだけど……それが私たちにとってなんのメリットがあるの?」

「迷宮配信はいまや全世界の人間が注目する一大コンテンツになりつつあり、アーカイブにも残る。ということは、下手に小細工をしようとしても不可能というわけだ」


 自信たっぷりに胸を張る瑛士に対し、困ったような表情になる音羽。


「まあたしかに記録が残るし、言い逃れはできないわね……だけど、管理するのはヤツの会社でしょ? ハッキングも隠蔽もやりたい放題じゃないの?」

「普通に考えればそうなるな。だけどそう簡単な話ではないんだよな」

「え? どういうこと?」


 彼の言葉を聞いて困惑する音羽に対し、安心させるように言葉を続ける。


「迷宮配信をしているのは俺たちだけじゃない。さまざまな人たちがほぼ毎日のように攻略に挑んでいる。ということは、どこかで飯島も他の配信者と鉢合わせになる可能性があるということさ。それに、俺たちにはルリがいるだろ?」

「たしかに鉢合わせになる可能性は大いにあるわ。でもルリちゃんがこっちにいること……あ!」

「気がついたか? ルリの妄信的なリスナーも迷宮内にたくさんいるわけだ。万が一、俺たちにだけ危害が加わるような動きがあれば……」

「疑いの目はすべて自然とやつに向くというわけね」

「そういうことだ。だから迷宮内で配信してる限り、下手な手出しはできないというわけだ」


 勝ち誇ったような表情で語る瑛士に対し、少し呆れたような表情になる音羽。


「はたしてそんなにうまくいくかしら?」

「まあ、裏でコソコソ動かれるよりはいいだろ? 俺たちも六階層から先に進むことになるわけだし、他の探索者といっしょに共闘する機会も出てくるだろう」

「そうね……ん? ちょっと待って、()()()()()って言わなかった?」


 他の探索者と言う言葉を聞いた音羽の視線が一気に鋭くなる。


「え? まあ、その可能性もあるだろうな。なんか不都合なことでもあったか?」

「探索者が男の人だけとは限らないもんね……私の瑛士くんに対して、変な気を起こす害虫()も現れる可能性があるわけだし……」

「音羽さん? また何か変なこと考えてません?」

「展望フロアで会ったように、アプローチかけてくる不届き者が現れるのは間違いないし……いかに近づかせないかが重要になるわね」

「なんか物騒なことを考えてません?」


 呟きを聞いていた瑛士が問いかけるが、彼女の耳に届くことはない。


「やっぱりドローンと盗聴器、隠しカメラを増設する必要がありそうね。そう、これは負けられない戦いなの! 正妻が誰か見せつけておかなければ!」

「おい、俺は他の人と交流することすら許されないのか? それより、正妻って何だよ!」

「え? 何を言っているのかしら? 幼き頃に将来を誓いあった絆を守るための聖戦……そう、世界の平和は私たちにかかっているのよ? その自覚ある?」

「なんでそんな話になってるんだよ! なんでお前は世界を滅ぼすことを前提に話してるんだ!」


 慌ててツッコミを入れる瑛士に対し、怪しげな笑みを浮かべる音羽。


「そんなの当然じゃない。私たちの邪魔をするような世界なんて……必要ないんだから」


 全身から黒いオーラのようなものを纏い、ラスボスのような空気を漂わせる。


(世界滅ぼす気満々じゃねえか……!)


 はたして瑛士は暴走し始めた彼女を止めることができるのか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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