第5話 新たな配信者「謎多き天才美女・いーちゃん☆」爆誕?
瑛士と音羽が顔を見合わせて笑っていると、リビングに置いてあるテレビが動き出した。
「ん? 音羽、テレビの電源を入れたのか?」
「え? 私は何も触ってないわよ」
瑛士の問いかけに対し、意味が分からないといったような表情で答える音羽。不思議に思いながら電源を切ろうとリモコンに手を伸ばした時だった。いきなり真っ青な配信画面が現れ、聞き覚えのある声がスピーカーから流れる。
「ちょっと! これで本当に配信できているんでしょうね? 私の高貴な声を届けるんだから、失敗したらどうなるかわかってるの?」
「な……この声はまさか……」
「間違いなく飯島女史ね。でもどうして急に配信なんて始めたのかしら?」
スピーカーから流れる音声を聞いて固まる瑛士とは対照的に、不思議そうな顔で首をかしげる音羽。
「そんなことはどうだっていいんだよ! なんでうちのリビングにアイツの配信が映ってるんだ? ハッキングされたのか?」
「……」
慌てる瑛士に対し、何かを思い出した音羽が視線を明後日の方向へ向ける。
「……おい、なんで目を逸らした?」
「エ? ナンデモナイワヨ、キノセイダッテ」
「あからさますぎるだろうが! いったい何をしたんだ?」
「……えーっとね、この間ルリちゃんと一緒に他の配信者とか動画とか見ていたの。その時にすっごい痛いチャンネルを見つけて、面白そうだからつい登録しちゃったのよ。それで配信予定も出ていたからアンチコメの一つでも投げ込んでやろうかな~って視聴予約してたのをすっかり忘れてて……あはは~」
「あはは~じゃねーよ! いったいいつリビングのテレビとパソコンを繋いだんだよ!」
詰め寄ってくる瑛士に対し、手を口に当てて驚いたような表情で音羽が話しかける。
「え? 瑛士くん……まさかパソコンとつなげてって本気で言ってるの?」
「お前こそ何を言っているんだ? 配信を見るならパソコンがないと無理だろ」
「信じられない……テレビとネットを繋ぐなんて今や常識よ? パソコンがなくたって見られるの、知らなかったの?」
「は? そんな機能が付いているのか?」
不思議そうな表情で聞き返す瑛士を見て、大きく息を吐いた音羽が額に手を当てて首を振る。
「瑛士くんが機械音痴だとは聞いていたけど、まさかここまでとは……。だいたい、リモコンの下の方にサブスク用動画サイトのボタンもついてるじゃない。説明書をちゃんと読んでないの?」
「そんなこと言われても俺が買ったわけじゃないし、そもそもテレビ自体をそんなに見るわけじゃないし……普段はルリがなんか触ってるなとは思っていたけど」
顎に手を当てながら話す瑛士を見て、どんどん表情から感情が消えていく音羽。
「うん、まあいいわ。いろいろわかったから……瑛士くんは黙って配信を見ててくれればいいから」
「は? なんでだよ?」
「いいから静かにしてるの。分かった?」
能面のような表情で話す音羽を見て、瑛士が無言で頷いているとスピーカーから甲高い声が響き渡る。
「ちょっと何よこれ! 画面に何も映っていないじゃないの! “謎多き天才美女・いーちゃん☆”が送る生配信のデビューなのよ? せっかく用意したアバターもこれじゃ意味ないじゃない!」
耳をつんざくような声が響き、顔をしかめた瑛士が思わず呟いた。
「な……なんだ、そのチャンネル名は……天才は天才でも、災害を起こす“天災”のほうだろ……」
「瑛士くんのほうがセンスあるわね。すごいチャンネル名でしょ?」
「ひどいとか言う次元じゃないだろ……」
口を開けたまま呆れている瑛士と苦笑いしている音羽の様子を、まるで見えているかのように言い当てる飯島。
「ちょっと! 画面の向こうで呆れてたり、苦笑いして憐れみの目でこっちを見てるでしょ! わかってるんだからね!」
「げっ、なんでわかるんだよ……まさかこっちの様子が映ってるのか?」
「そんなわけないでしょ。だいたい盗聴や盗撮しようなんて、十世紀早いわよ! 瑛士くんの私生活を監視していいのは私だけなんだから」
「そんな許可した覚えはないんだが!」
「あーちょっと静かにしてもらえないかな? 配信が聞こえなくなっちゃう」
「お前な、配信なんて後でアーカイブ見れば……」
「聞こえないって言ってるの。わかったら返事は?」
「はい……」
驚いて詰め寄ろうとする瑛士だったが、凍てつくような視線を向ける音羽に何も言えずに引き下がる。すると再び画面の向こうから声が飛んでくる。
「ちょっと! ちゃんと私の配信を見てるわよね? まさかアーカイブで見ようと思ってブラバしようとしてたら、ただじゃおかないわ!」
「やっぱりこっちの様子が見えてるんじゃないのか?」
「そんなことあるわけないでしょ。昔から変に勘が鋭かったからそのせいじゃない?」
「た、たしかに妙な勘の良さはあったが……いくらなんでも……」
顔を青くしながら話しかける瑛士を見て、音羽がため息をつきながら話しかける。
「瑛士くん。なんでこっちの行動がお見通しみたいに話してるか、本当にわからない?」
「どういうことだ? 音羽にはその理由がわかるのか?」
彼女の言葉を聞いた瑛士は、目を見開いて聞き返す。すると少し困ったような表情でリモコンを操作すると、画面の近くまで歩いてある部分を指差す。
「ほら、ここをよーく見てみなさい。すぐに謎が解けるから」
音羽に促されるように指を差した部分を見て、瑛士が声を出して笑い始めた。
「あはは! そういうことか!」
青い顔をしていた瑛士が見たものとは、いったい何だったのか?
その理由はすぐに明らかになる――
最後に――【神崎からのお願い】
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