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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第十二章 つかの間の日常

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第1話 チャレンジの代償

 エリアボスを攻略して数日後、自宅のリビングにあるソファーで横になる瑛士の姿があった。そこへ冷蔵庫のアイスを取りに来たルリが声をかけてきた。


「まーたこんなところで寝ておるのじゃ。迷宮から帰ってきてからというものたるんでおるんじゃないか?」

「あ? 誰のせいでこうなったと思ってるんだよ」

「自業自得じゃろ? わらわに変な勝負をふっかけなければよかっただけじゃ」

「うっ……何も言い返せないのがキツイ……」


 腕を組んで半目になりながら呆れたように言うルリに、何も言い返せなくなる瑛士。ことの発端は数日前、瑛士がルリに勝負を仕掛けたときに遡る。



 エリアボス戦が終わり、秘密通路を使って展望フロアへ移動した三人。瑛士が女子大生と思わしき二人組からナンパされたことにより、音羽の機嫌が一気に悪くなった。そして無自覚な瑛士の発言がさらなる怒りを買い、フロアの中央で正座することに……この後、おなじみのやり取りが発端で瑛士が警備室へ連行されたことにより、アイス勝負は中止になった。


「アイス自体はすごく美味しかったのじゃが、戻ってくるのがちょっと遅かったのじゃのう」

「なんであの日に限って特別営業で時短になってるんだよ……」

「そんなことわらわに言われても知らないのじゃ。張り紙によるとなんかシステム障害が起こったみたいじゃぞ?」


 ルリが言うように瑛士たちが展望フロアで大騒ぎしていた時、迷宮全体で大規模な()()()()()()が起きていた。エレベーターや照明関係は影響がなかったが、売店等のレジやライブ配信用の通信機器が使用できないといった不具合が発生した。


「全然知らなかったが、そんなことが起こっていたんだな」

「大変そうじゃったぞ? レジも使えないみたいじゃったが、アイスの機械も故障したみたいでな。最終的には無料で皆に配っておったわ」

「なに……無料配布していただと?」


 ルリの言葉を聞いた瑛士が勢いよく飛び起き、驚きの表情を浮かべながら固まってしまう。


「そうじゃ。溶けて処分するくらいなら全部美味しく食べてもらいたいという粋な計らいじゃな。あっという間になくなってしまったがな」

「だから時短営業になったのか……もう少し早く解放されていれば……」


 大きく肩を落として項垂れる瑛士に対し、ルリが笑顔で話しかける。


「そんなに落ち込む必要はないじゃろ。その後の配信でいい撮れ高があったのじゃから」

「……お前らのせいで体の調子がおかしくなったんだよ!」


 戻ってきた瑛士に悲劇が襲いかかる。音羽のアドバイスを聞いて缶コーヒーを大量に抱えていたことに気がついた音羽が、急遽ライブ配信を開始したのだ。周りに沢山の人もいたこともあり、何故かコーヒー早飲みチャレンジをすることになった。


「あの時のご主人は凄かったのじゃ」

「いや……あの状況で『やっぱりやめます』とは言えないだろ……」


 夏休みということもあり、多くの観光客で溢れかえっていた。さらに音羽がライブ配信を開始すると煽ったことにより、どんどん人が集まって盛り上がり始める。引くに引けなくなった瑛士は勢いに任せて缶コーヒーを次々と開けていった。


「三本目くらいで終わると思っていたのじゃがな。まさか七本も飲み切るとは思わなかったぞ」

「おかげさまでずっと体の調子がおかしいけどな」


 その場の雰囲気もあり、七本の缶コーヒーを飲みきった瑛士。その甲斐もあってフロアはもちろん、配信も大盛りあがりで大成功に終わったのだが……その代償はあまりにも大きかった。カフェインの過剰摂取により、完全に覚醒してしまってその日は一睡もできなかった。さらに謎の胃痛と下痢に悩まされ、ようやく収まってきたところだった。


「本当にひどい目にあった……とはいえ、まだ本調子には程遠いが……」

「まったく……おだてられて調子に乗るご主人が悪いのじゃ」

「お前らだって煽りに煽っていたじゃないか! 飲め飲めって楽しそうにしていたのはどこのどいつだよ!」

「わらわは周りのテンションに合わせておっただけじゃ。それに目立つことはしたくないと言っていたのは誰じゃったかのう?」

「う……」

「観客の声援にもノリノリで答えておったし、音羽お姉ちゃんが止めに入ってもまだ大丈夫だとか言っておったしのう」

「……」

「証拠の動画も残っておるが見せる必要ありそうじゃな?」


 持っていたタブレットを操作して、配信のアーカイブを再生しようとするルリ。すると瑛士が慌てて止めに入る。


「俺が間違っていた! だからあの黒歴史を再生するのだけは……」

「そうか? 今も視聴回数が増え続けておるし、なかなかの()()だと思うのじゃが?」


 タブレットを片手に嬉しそうな笑顔を浮かべるルリに対し、真っ白に燃え尽きたように固まっている瑛士。


「……モウヤメテ、オレノライフハマイナスダ……」

「何を言っておるのじゃ? 配信者として大成功を収めたことに胸を張るが良い!」

「ドウシテコウナッタ……」

「まあ諦めるんじゃな。下僕どもからは次の企画へのリクエストも来ておるのじゃし。かき氷早食いチャレンジとか激辛ラーメンチャレンジとか」

「なあ、俺の胃腸を破壊しに来ているような企画ばかりに聞こえるのだが?」

「ご主人、人は強くなれるのじゃ!」

「その前に俺がぶっ壊れるわ!」


 哀れみの視線を送るルリに対し、瑛士の絶叫がリビングに響き渡る。


「それだけ元気なら大丈夫そうね」


 リビングに続く扉が開くと、ノートパソコンを持った音羽が話しかけてきた。


「本調子には程遠いけどな……なんでお前はパソコンを持ってうろついてるんだ?」

「ちょっと気になる記事を見つけたのよ。ちょっとこれを見てほしいの」


 リビングのテーブルにノートパソコンを置くと、二人を手招きする音羽。そして、画面を覗き込んだ瑛士とルリが同時に声を上げる。彼女が見つけた記事の内容とはどんなことだったのだろうか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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