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親族会3―リアン視点―

 


「リアン……様……」



 いっそのこと……このまま時間が止まってしまえばいい。若しくは、絶対に彼女が逃げられない状況を作り出してしまいたい。そうしたら俺から逃げもせず、目も逸らせない。

 他に好きな相手がいると告白された時、僅かながらの理性を残せて驚きだった。破片も無ければ、昨日、あの場で婚約を免れない状況に追い込んでいた。


 背中に回った細い腕と小さな手。フィオーレを抱き締める腕に自然と力が入ってしまう。好きな相手がいると言う割に1度も嫌がる素振りがなく、寧ろ、受け入れている風にも見える。真っ赤になった両頬、薄く開く紫紺の瞳は濡れていて、時折零す吐息や声を聞くだけでフィオーレを抱き締める力が強くなっていく。理性を残すだけで精一杯だ。



「んう……」



 唇を離す前に深く口付けた。

 体から力が抜けたフィオーレを抱き止めたまま椅子に座り、動けない彼女を膝に乗せた。今更逃げないだろうと思いながら、もしもの時があったら嫌でフィオーレを抱き締める腕の力は緩めなかった。



「リアン、様……っ」

「……君は…………いや、いい」



 何を聞こうとしたかは自分がよく分かっている。

 君の好きな相手とは誰なのか。

 好きな相手がいるのに抵抗しないのか。

 色々と聞きたい事があるのに、気まずいながらも一緒にいられる今の時間を無駄にしたくなくて何も言えなかった。



 登校する生徒の数も多くなる時間帯を見計らってフィオーレを連れて教室付近まで戻った。アウムルと一緒だと女子生徒に囲まれて中々前へ進めないのに、今日に限って進みやすい。その代わり、フィオーレへ注がれる視線は決して良いものじゃない。向けられていない俺ですら分かるんだ、フィオーレの負担になっているのは違いない。



「アウテリート嬢はもう登校している時間だろうか?」

「きっと来ていると思います」

「そうか」



 教室に入って1人でいさせるより、友人であるアウテリート嬢といた方が安全だ。

 何せ彼女は隣国の先王妃を大伯母に持つ公爵令嬢。昔に比べれば権力はかなり削がれたらしいが、現当主の努力によって全盛期に及ばないまでも順調に回復していっているとのこと。


 教室に入れば見慣れた銀髪の女性がフィオーレの許へ駆け付けた。



「フィオーレ。姿が見えなかったから心配したわよ。あら、リアン様と一緒だったの?」

「フィオーレ嬢に朝食を付き合ってもらっていたんだ」

「朝食?」



 食べてこなかったのは俺であってフィオーレじゃない旨を伝え、幾つか言葉を交わして2人別れ席に着いた。俺の前にはアウムルが座っていて。ニヤニヤと笑っているのが苛つく。



「随分と積極的になったなリアン。もうちょっと前から行動していたら」

「うるさい……」



 呑気に構えていた俺にも非はあるが、いざ指摘されると苛立ってしまう。



「フィオーレ嬢に構いたい気持ちは理解してやれるがおれの仕事も手伝ってくれよ」

「リグレットがいないこの状況で忙しくなるのか」

「多分、おれの予想通りなら、リグレットは何も変わらず戻って来る」



 アウムルの予想はかなり当たる。本人も自覚があるから、嫌そうな気を隠そうともしない。



「……あれはロドニー侯爵令嬢だな」



 ポツリと発したアウムルの声はしっかりと聞いていて。こっそりと見やれば、外からフィオーレを睨むロドニー嬢がいた。事情を簡単に話すとアウムルに呆れた顔をされた。



「お前は本当にフィオーレ嬢以外眼中にないな。一途過ぎるのもどうなんだろうな」

「フィオーレ以外に興味は抱けないんだ……」

「お前の気持ちを否定する気は更々ないよ、リアン。ロドニー侯爵令嬢もカンデラリア公爵家で開催される親族会に参加するのだろう? しっかり守れよ、リアン」

「分かってる」



 態々言われなくても……。


 アウテリート嬢と談笑しているフィオーレを一瞥した。

 何度見ても、彼女から感じる可愛らしさや愛しさは消えない……。



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