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窮地に光は訪れる

 女神の水浴び場で“宝”を捜していた生徒等は魔従化した魚に襲われたけれど、駆けつけたトンペットたち精霊に助けられていた。しかし、その後に問題が起こっていた。閻邪えんじゃの粒子の影響でトンペットたちが完全に弱りきってしまったのだ。

 その結果は何とも酷いもので、殆どの生徒が助けてもらった恩も忘れて我先にと逃げてしまう。フォーレリーナやマイルソンが駆けつけたけど、残っていたのはチェラズスフロウレスの女性徒四人だけ。二人は彼女たちにトンペットたちを任せて魔従の群れに立ち向かい、命からがらここまで逃げて来たのである。

 女神の水浴び場に彼女たちがいなかったのは、そういう経緯があった。そうしてここまで来た彼女たちは体力も消耗していて疲労が溜まっていた。だと言うのに、王木おうぼくまで残り僅か数百メートルと言う所で、ジャッカがケレムを殺している現場に出くわしてしまったのだ。

 そして、疲れて反応の鈍っていたフォーレリーナが、ジャッカの攻撃を腹に受けて吹っ飛ばされた。その勢いは数十メートル先の木の幹にぶつかって止まったが、フォーレリーナが受けた衝撃は計り知れない。彼女は口から血を吐き出して、お腹を抑え乍ら数十メートル先のジャッカを見る。マイルソンや四人の女生徒はその光景に目を見開いて驚いていた。


「奴は“水帝”の能力を持っていたな。少し本気を出すか。おい。お前、お前はこのガキ共を殺せ」

「グォォォオオオオ!!」


 お前と呼ばれた巨大なワームが咆哮ほうこうし、地面へと潜って姿を隠す。これは決して逃げたわけでは無い。地中からマイルソンたちを襲おうと狙いを定めているのだ。

 そして、ケレムもフォーレリーナの止めを刺そうと、未だにダメージが残って立つ事が出来ない彼女に向かって駆け出した。


「不味いぞ! お前達は精霊様を連れて逃げ――――っ」


 女生徒たちに言葉を言い終える前に、マイルソンの立つ地面が盛り上がり、巨大なワームが飛び出して彼を呑み込む。それを見た女生徒たちは悲鳴を上げて恐怖し、腰が抜けてその場に尻餅をついて動けなくなってしまった。

 フォーレリーナも確実に死が迫っている。未だに立つ事すら出来ない彼女の目の前に、ジャッカが立ち、右腕を巨大化させて悪魔のものへと変形させた。


「死ね。裏切りも――っ」

「っ!」


 フォーレリーナの頭を悪魔の腕で掴もうとした時、その腕に一本の矢が刺さり、それはジャッカの腕を体ごと真っ直ぐと飛翔先へと連れて行く。そして、数メートル先の地面に刺さり、ジャッカは刺さった矢に引っ張られるような感覚で地面に転んだ。


「なんだ!? 何が起きた!?」


 ジャッカは何事かと驚いていたけれど、彼に刺さった矢を見て、フォーレリーナにはその矢を放った者が誰なのかが直ぐに分かった。そしてその直後に、数十メートル先でマイルソンを丸呑みした巨大なワームが一刀両断されてマイルソンが生還し、それを成した猛者が姿を現す。


「チェリッシュちゃん!」


 思わず声を上げて名前を呼びフォーレリーナが喜ぶと、名前を呼ばれたチェリッシュが笑みを見せた。


「皆さんご無事ですか? 只今助太刀に参りました」


 そう告げ乍ら、チェリッシュは回復の魔法を数十メートル離れたフォーレリーナに飛ばす。フォーレリーナはそれを受けて回復して漸く立つ事が出来ると、直ぐに駆け出してチェリッシュへと抱き付いた。


「ありがとうございますうう! 本当の本当に助かりましたあ!」

「うふふ。お役に立てて良かったです。でも、ここから先はあまり期待しないで下さい。私も今の魔法で魔力が殆ど無くなってしまいました」

「え? そうなんですか?」

「はい。ネモフィラ様のように、私も自分の魔力で魔法を使う為に密かに練習をしていたのですけど、流石にそう簡単にはいかないようです」

「それでも十分だと俺は思いますよ」

「あ。グラックくんも来てくれたんですかあ!」


 フォーレリーナが目を輝かせ、彼の登場に喜んだ。そして、彼だけじゃない。チェリッシュは一足先に駆けつけて来てくれたようで、グラックに続いてサリーも姿を現した。

 そして、サリーは姿を現すと、直ぐに先程まで呑み込まれてしまっていたマイルソンへと近づいた。


「姉さん。マイルソンの様子は?」

「気を失っているけれど命に別条はないわ」

「なら良かった。ここは俺とチェリッシュ様に任せて、姉さんは皆と精霊様を連れて王木に行ってくれ」

「ええ。分かったわ。くれぐれも気をつけて。無理をしないようにね」

「分かってる」


 話は終わりだ。矢で地面に転がされていたジャッカが怒気を孕んで立ち上がり、こちらを殺気に満ちた目で睨んでいる。そして、彼は右腕だけでなく背中から悪魔の翼を出現させて広げ、禍々しい何かを放つ剣を出現させた。


「本当に忌々しい連中だなあ。偽りの聖女チェリッシュと、この矢は聖女の聖隷せいれいの矢か。ったく、面倒だ。お前等の他にも殺さなくちゃいけない奴が出来たみたいだ」

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