表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
967/999

魔従の群れ

 緑園の国エルリーフの国長くにおさに協力要請をしに行ったヒルグラッセは、エルフの戦士を連れて幻花森林へと戻って来ていた。戻って来たと言っても、ここは精霊王国エレメントフォレストの幻花森林では無く、エルリーフ側の森の入口だ。女神の水浴び場が幻花森林の中にあるように、こちら側にもそれに連なる森があるのだ。勿論ここも既にどす黒い雲に覆われていて、大地からも閻邪えんじゃの粒子が溢れ出ている。

 ヒルグラッセはその入口まで来て、森から続々と現れる魔従まじゅうを見て足を止めた。


「何だあの魔物は!?」

「凄い数……」

「ドープルイト様。あの異様な魔物は……っ」

「あれは魔物では無く魔従まじゅうと呼ばれるものだ。かなり手強い。気を抜くな」


 森から現れる魔従の群れを見て怯むエルフの戦士たちにヒルグラッセは答え、魔装ウェポンを掴んで駆け出す。そして、魔装ウェポンを取り出した事で、自身の魔力が激減している事に気が付いた。


(いつもより魔装ウェポンの力を感じない。これは私自身の魔力が何かに防がれ……吸収されているのか? いや。考えている暇は無い)


 狼のような見た目をした一体目の魔従に近づき、ヒルグラッセは魔装ウェポン【振動の剣】の力を使って振るう。すると、いつもよりも振動の揺れが弱くなっていた。でも、元々が丈夫な魔装(ウェポン)の剣なので切れ味は問題無さそうだ。豆腐を切るように簡単に真っ二つにして、魔従を絶命させる事が出来た。


「溶けた……!?」

「これが魔従……っ」

「怯むな! 油断すればやられるぞ! それから何らかの手段で魔力が下げられている! 魔法は使えないものと思え!」


 魔従が絶命した後に骨だけを残してドロドロに溶けると、エルフの戦士たちが動揺し、ヒルグラッセが声を張り上げた。おかげでエルフたちも動揺を振り払い応戦する。


(決勝戦が始まってまだ一時間も経っていない筈。ラーンが魔従の卵を所持していると知って、ある程度は予想していたけど、まさかこれ程の規模の魔従が溢れているとは……。幻花森林でいったい何が起きている? ミア様……無事でいて下さい)


 ヒルグラッセは未曾有の異変が始まっている事を知らない。しかし、魔従が現れるだろうことは予想していた。だからこそ魔従を見ても驚く事無く冷静な判断が出来て、こうして戦う事が出来ている。だけど、これ程の数が現れるとは予想していなかった。

 幻花森林へ戻る途中で邪魔が入る可能性も考慮していたけれど、それはあくまでナイトスター公爵が集めた傭兵や冒険者だと思っていた。それが実際に現れたのは魔従の群れで、対してエルリーフの国長から借りられた戦士は約百人。国長からは戦士を集めて後程助太刀に向かうと言われているけれど、それでも足りなくなるかもしれないと思う程の魔従が次から次へと現れている。


「ドープルイト様! 後方支援のヒノから伝令が送られてきました! 魔従との戦いで傷ついて治療を受けていた仲間が突然苦しそうに叫び、姿を魔従に変えて暴れているそうです!」

「何!? それは本当ですか!? フェルド様!」

「はい! 私は今直ぐヒノの……家内の許へ向かいます! よろしいでしょうか!?」

「構わない! 貴方はヒノ様と後方支援の者達を助ける事を優先してくれ!」

「は! 感謝致します!」


 国長の息子フェルドからヒルグラッセの許に届いた報告は、耳を疑うようなものだった。でも、ヒルグラッセはその前例を知っている。だからこそ直ぐに理解し、今ここで何が起こっているのかが分かった。ヒルグラッセの目には見えないけれど、今ここでは閻邪の粒子が溢れていると。それがどの規模かは分からないが、かなり不味い状況だと言うのは嫌でも分かる。最悪全滅もあり得ると考え、ヒルグラッセには少しの焦りが生じた。


(不味い。これではミア様の許に辿り着くまでに全滅する。せめて森から現れる魔従だけでもどうにかし――)

「見つけたわよ。聖女の騎士ヒルグラッセ=ドープルイト」

「――っ!」


 次から次へと現れる魔従をどうにかしないとと考えた時だ。不意に声が聞こえて振り向くと、そこにはラーンの側近である仮面をつけた女が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ハラハラドキドキの展開ですね。楽しみにしています!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ