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発生源

 幻花森林が生徒たちの熱気で揺らいでいる頃だ。聖奉せいほうこく国カテドールセントの寮母であるマレーリアは、決勝戦の救護班として幻花森林の中で生徒が近くにいないかどうかを確認していた。

 天翼会は観戦会場をこの地に移す事にしてから、会場で何かあった時の対処方法を幾つか用意していた。その一つとして、マレーリアは担当区域周辺にいる生徒を捜して保護し、避難させる役目を持っている。彼女はそれに従って動いているわけだが、地図には載っていない少し空けた場所を見つけた。


「ここは……?」


 不思議に思い乍ら向かい、森を出る。すると、その中心には行方が分からなくなっていたラーンと、穴を掘る二人の女生徒がいた。


「貴女達! 何をしているのですか!?」

「あら? 誰かと思ったらマザーマレーリアじゃない。ごきげんよう。意外と遅かったですね」

「遅い……?」


 言われたまま疑問をぶつけるも、マレーリアにはそれが見つけるのが遅いと言われたと言う事は分かっていた。しかし、それを口に出してしまったのは、穴を掘る女生徒たちの周囲を漂う黒いもやのようなもの……“閻邪えんじゃの粒子”に気を取られたからだ。


「ふふ。流石に気が付きました? 今、この子達に大事な作業を任せているんです」

「貴女達! 今直ぐ穴を掘るのをやめなさい!」

「マザーマレーリアがやめろと仰るのであれば、やめて差し上げても良いわ」

「え……?」


 マレーリアは動揺と困惑を見せる。やめろと言われたのでやめますなんて、そんな返しがくるとは思わなかった。しかも、女生徒たちは本当に穴を掘るのをやめたではないか。

 マレーリアはいったい何がしたいのかと疑問に思い、眉間にしわを寄せてラーンを見る。すると、ラーンは相変わらずの演技染みた笑みを見せ、“魔従まじゅうの卵”を取り出した。


「貴女……。それはっ」

「マザーマレーリア。この場所は幻花森林の心臓なの。神王様が教えてくれた事があるんです。天翼会が言う“未曾有の異変”の真実について」

「――っ!? 貴女は……いったい何を…………っ」


 マレーリアが目を見開いて驚き、ラーンは演技染みた笑みのまま魔従の卵に頬擦りをして言葉を続ける。


「神王様は未来を見る力を持っているわ。そして、本格的に“未曾有の異変”の発生源となる場所が、この幻花森林のこの場所だと予言したんです」

「ここがっ!?」

「ええ。ここから湧き始めた閻邪の粒子は消えず増していき、いずれは幻花森林を丸ごと呑み込んで、そこから世界に不幸が広がっていくと」

「…………」


 閻邪の粒子が消えずに沸き続ける場所。それがここだと聞き、マレーリアは女性徒が掘っていた穴を見た。

 穴から閻邪の粒子が止まる事無く湧き続け、その一部が穴を掘っていた女性徒二人の体内へと吸収されていく。


「いけない! 貴女達! そこから離れて!」

「無駄よ。この子達は手遅れよ。ほら。マザーマレーリアの声が届いていないでしょう? ずっと虚ろな目をしてるわ」


 ラーンの言う通りだ。女生徒は二人とも虚ろな目をしていて、俯いているだけで一歩も動かない。

 マレーリアはこのままでは不味いと駆け出して、女性徒を助けおうとした。けど、遅かった。


「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!」」


 二人が頭を抱えて叫び、その直後にみるみると姿を変えていく。

 一人は下半身が蜘蛛くものようになり、背中からのような羽を生やし、肌の色も紫色に染まっていった。もう一人は全身から植物の芽が生え、それが急速に成長して全身を覆い、人の原形を留めていない木の化け物へと姿を変えた。

 魔従化。それを目の辺りにして、マレーリアは足を止め、体を震わせて一歩だけ後退る。


「そんな……っ! こんな事が……っ!」

「新たな魔従の誕生ね。ふふふふふ」

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