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第三王女の情報提供(5)

 騎士王国スピリットナイトのナイトスター公爵家が発行した傭兵募集のチラシ。それは日雇いで日給金貨五枚と言う、日本円にして五百万円の破格な金額。ネモフィラの姉サンビタリアが仕入れた情報は、そんなとんでもない物だった。


「しかし、こんな物が出回っておるのに、今まで誰も気が付かなかったのじゃ?」

「そ、そうだよね。こんな広告が出てるなんて、私達でも知らなかったもん」


 ミアに続いてジャスミンが疑問をぶつけると、それにはネモフィラでは無くルーサが答える。


「冒険者ギルドやスピリットナイトの騎士団向けにしか知らせていなかったみたいだぜ。それに配ってたんじゃなくて、張り出してただけだ。騎士の方は騎士用の寮に貼り紙として一つだけ食堂に貼ってあるみたいだな」

「ふむ……。って、ではこれは何処から持って来たのじゃ?」

「それはクレイデフ侯爵から王太子様が貰って来た。クレイデフ侯爵が言うには、最近調子に乗ってるナイトスター公爵の悪行を聖女様に伝えて、それを暴く機会をうかがってたんだとよ」

「クレイデフ侯爵とナイトスター公爵の関係は良くないようです」

「…………」

(私事と言うか私怨と言うか……とにかく邪魔したいと言うのは伝わったのじゃ)


 ルーサの説明にネモフィラが補足を入れると、ミアは納得した。

 クレイデフ侯爵はナイトスター公爵と仲が良くない事で有名な人物だ。ミアはその事を知らなかったけれど、周囲の者たちは知っていたのだろう。全員がそれ以上の説明はいらないと分かるくらいには納得した様子を見せていた。

 つまりサンビタリアに情報を流したクレイデフ侯爵はナイトスター公爵が気に入らないので、不正を働いている可能性がある事を調べて、聖女であるミアに罰してもらおうと企んでいるわけである。でも、それが逆に信頼性を増す事に一躍買っている。ナイトスター公爵憎しで流した情報だ。少なくともミアたちを嘘の情報で罠にハメて、どうにかしようなんて事にはならないだろう。


「そのクレイデフ侯爵とやらに会って、直接話を聞いてみたい所じゃのう。しかし、それをワシがすると怪しまれそうじゃ。少なくとも今の所は面識が無いからのう」

「そうですね。接点も無いですし、クレイデフ侯爵はスピリットナイトの貴族ですから、突然会いに行ったらラーンに気付かれて怪しまれてしまうかもしれません」

「じゃあじゃあ、サンビタリアちゃんに頼んでみるのはどうかな? 社交界でお話してたなら、それを理由に呼べないかな?」

「ごめんなさい。それは出来ないのです。サンビタリアお姉様とした話の内容が内容だけに、暫らくは会わない方が良いだろうと最後に話して別れたそうです」

「ううん。そうだよねぇ。じゃあダメかぁ」


 ジャスミンが提案してみるも、それは直ぐにネモフィラに否定されて断念する。

 実際に話の内容を考えれば、暫らく会わないようにするのが妥当だろう。何と言ってもサンビタリアは聖女であるミアがいるチェラズスフロウレスの王太子だ。間違いなく何かあればラーンに警戒されてしまう人物なのだから。


「でも、これだけ高いお金を出して傭兵を集めて何をするつもりなんだろう……?」

「それは分かりません。でも、この募集期間を見て下さい」

「え?」


 ネモフィラに募集期間と言われて、ジャスミンは視線を向ける。すると、そこにはこれまた怪しげな日時が書かれていた。


「これって……今日?」

「はい。どの程度の傭兵を集めるつもりなのかは存じませんが、クレイデフ侯爵から頂いた情報によれば、ナイトスター公爵は明日の早朝に国に戻るそうです。恐らく集まった傭兵に会いに行くのではと……。今は年に一度の各国の序列を決めるトレジャートーナメントの最中です。募集主としては一見普通の事のように考えられますけど、世界中で今最も注目を集めているトレジャートーナメントの最中にそんな事をするでしょうか?」

「ま、まさか……」

「サンビタリアお姉様はこれを知った時に、ウドローク陛下の協力の許、ラーンは決勝戦で何か計画を実行に移すのではと予想しました。わたくしもその考えに同意しています」

「ふむ……」


 サンビタリアの予想は、あくまでも予想。実際に決勝戦で何かするにしても、そんなギリギリまで傭兵を集めるのかと疑問にも思える。しかし、何故か妙な説得力があった。

 決勝の舞台を精霊王国の幻花森林でと提案したのは、ラーンと裏で繋がっている可能性のあるカーリー。精霊王国の国王ウドロークはラーンの父親かもしれないと疑いもあり、しかも、二人が会っている所を見たミントはラーンの護衛である煙獄楽園の神王の元近衛騎士だったジャッカに命を狙われた。ラーンは騎士王国のナイトスター公爵の昔に攫われてしまった子供だからと引き取られ、騎士王国で増税が始まった。増税で増えた分の税金は使い道が不明瞭とされ、それを調べた者は全員が行方不明となっている。そして、ナイトスター公爵が募集した傭兵への報酬は日給で金貨五枚。

 最早これで疑うなと言う方が無理だと言える。


「もしかすると、ワシが明日の試合に出れんくなったのは、逆に運が良かったと言えるやもしれぬのう」

「ミア?」


 ミアとネモフィラの目がかち合い、ミアは微笑んで言葉を続ける。


「明日、ワシがウドローク陛下とやらに会って来るのじゃ。それでそ奴の人柄を確かめてみる。記憶は失っておるが、友人のミントと言う子が襲われたのじゃ。会う理由はそれで十分じゃろう?」

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― 新着の感想 ―
久々に見ましたが、迫力あって今後の展開が見逃せなくなりました! 長く続けるとは凄いです!
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