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第三王女の情報提供(1)

「明るい緑色の髪に水色の瞳……そうですね。多分……ミントではないでしょうか?」

「ミントなのじゃ?」

「はい。ミントです。わたくしとミアのお友達のミント=メグナットです」


 チェラズスフロウレス寮へと帰って来たミアは、ネモフィラの許に訪れて早速助けた少女が誰なのかを確認した。ネモフィラも社交界から先程帰って来た所らしく、とても丁度良いタイミングだったようだ。二人は念の為にと外部に話の内容が漏れないように寮長室で話を聞く事になり、今はそれぞれの侍従を連れて話を始めた所で、ミアが助けた人物がミントだとようやく分かったのである。


「ミアが記憶を失ってから一度も会っていなかったのですね」

「うむ。でも、それなら納得なのじゃ」

(王子と言うておったし、向こうはワシが前世で男だったと知っておるようじゃしのう)


 知りません。勘違いしてるだけです。


「でも、学園に来ていたなんて知らなかったです。会議でもその様な事は仰って無かったのに……」

「会議なのじゃ?」

「あ。こちらの話です」


 会議とは勿論ミア派会議の事だけど、ネモフィラは敢えてその事を伏せておく。理由は特に無い。それに、それよりもネモフィラには話しておきたい事があるのだ。


「ミア。わたくしからもお話があるのです」

「ふむ?」

「ジャスミン先生、先生方も一緒に聞いて頂けますか?」

「え? うん。いいよ」


 ジャスミンが頷くと、ネモフィラは侍従のルティアに視線を向けた。すると、ルティアは頷き、紙を数枚出して皆に配った。


「名前がいっぱい書いてあるんだぞ」

「がお」

「皆様に今お配りしたのは、ラーンと関わりがあると思われる人物の一覧です」


 そう。ネモフィラがルティアに配らせたのは、社交界で仕入れた情報を整理して、関係があると考えられる人物たちのリストだった。

 ネモフィラは社交界でラーンに関係する情報を調べていたのである。


「あ。よく見たら国別に名前が分けられてる」

「ほおほお。よく調べたのう」

「サンビタリアお姉様だけでは無く、お父様やお母様、それにランタナお兄様にもお手伝いして頂きました」

「ヘーデン先生の名前も載ってるんだぞ」

「がお。クルの名前もある」

「え!? あの二人もそうなの!? って、あ! カーリー先生の名前もある!」

(騎士王国スピリットナイト寮の先生と精霊王国エレメントフォレスト寮の先生に、食恵の国オールクロップ寮の先生じゃな)


 リストの中には学園の先生の名前も載っていた。プリュイやラーヴが上げた名前は、各寮の先生だった。そして、ジャスミンが大声を上げて驚いた人物は、今まで何の疑いも無かった国を担当している先生だ。

 食恵の国オールクロップは、食に関してとても豊かな国である。国の序列も二十九位と低く、最弱と言われていたチェラズスフロウレスとそう変わらない。しかし、今年のトレジャートーナメントでは成績も良く、勝ち上がって明日の準決勝の参加が決定していた。


「主様。決勝の場所を決めたのはカーリー先生だったんだぞ」

「うん。どうしよう。聖女様がいる今年は決勝はあそこが相応しいって言うから、満場一致で決定しちゃったよ。もう話を通しちゃってるし、今更変更なんて出来ないよね?」

「ふむ? 何の話じゃ?」


 ミアは話の内容が分からず首を傾げた。すると、それに答えたのはネモフィラだった。


「決勝戦は精霊王国エレメントフォレストで行うようです」

「ほう」

「え!? なんで知ってるの!?」

「まだ発表されてない筈なんだぞ!」

「がおがお」


 ジャスミンやプリュイやラーヴが驚くのも無理はない。ネモフィラが知っているのはウドロークから聞いたからで、決勝の舞台が何処かを発表するのは明日の準決勝が終わってからの予定だったのだ。

 だから、三人の驚く様子を見て、ネモフィラは口を滑らせてしまったと両手で口を隠した。とは言え、既に遅い。三人に問い詰められて、ネモフィラは直ぐに白状するのだった。

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