天翼会の重役の自己紹介(2)
会長室にて天翼会の重役たちの自己紹介が始まり、制服のデザイナーアピールするジャスミンにネモフィラが目を丸くして感心する。すると、ジャスミンの左肩の上ではトンペットが呆れ顔を向けていて、鼻で笑うと「じゃあ続いていくッス」と自己紹介を始めた。
「ボクは風の精霊トンペット=ドゥーウィンッス。ご主人の補佐が主な仕事ッス。次はラテの番ッスね」
「ラテは面倒だから寝るです」
そう言って自己紹介を断るのは、ジャスミンの頭の上で寝転がっている土の精霊ラテール=スアー。本当に面倒臭そうにトンペットに答えると、そのまま瞼を閉じて寝てしまう。その様子に冷や汗を流し、自己紹介を始めたのはプリュイだ。
「アタシはプリュイ=ターウオ。水の精霊だぞ。主様の補佐とリリさんの補佐をしてるんだぞ」
プリュイはジャスミンの右腕にしがみついていて、足もがっちりホールドを決めている。と言っても、プリュイも他の精霊同様に手の平サイズの二頭身なので足はとても短く、ホールドを決めている足も“ちょーん”とした効果音が似合う見た目である。
「がお。わたちは火の精霊のラーヴ=イアファ。色々ちてる。よろちく」
天翼会の制服の上から怪獣の着ぐるみパジャマを着た手の平サイズの二頭身のラーヴは、ジャスミンの腰にぶら下がるポーチから顔を出して自己紹介をした。その様子が可愛らしく、ミアもネモフィラもニッコニコの笑顔になる。そして、そんな二人のニッコニコ笑顔を解いたのは、続いて自己紹介を始めたジャスミンの右肩に乗る精霊だった。
「妾は大精霊ドリアード。またの名を木の精霊フォレ=リーツと言う。好きに呼べ。そうそう。妾は主にチェラズスフロウレス寮の売店で下々の者に商品を売り、分け与えてやっておるのぢゃ」
「だ、大精霊様……っ!?」
「お主、そんな大物だったのじゃ……?」
ネモフィラに続いてミアが驚いて声を上げた。だけど、それもその筈。
精霊使いであるジャスミンのおかげで精霊と会う機会が多いけれど、実際には精霊なんて滅多にお目にかかれない。それだと言うのに、その精霊の中でも上位の精霊である大精霊が寮内の売店でレジ係をしているのだ。驚くなと言う方が無理だった。しかし、驚くのはまだ早い。
「なになに~? そんなに大精霊が珍しい? それなら、おいたんも光の大精霊ウィルオウィスプだよ。ぐへへへへへ。こんな可愛い子達に驚いてもらえるなんて、おいたん何だか興奮しちゃうなあ」
「ウィルは喋ると気持ち悪いから黙っておいた方が良いの~。あ。我は闇の大精霊シェイドなの~。我とウィルは裏会員との連絡がメインなの~」
そう言って宙を舞い、ミアとネモフィラの目の前で浮遊する二人の手の平サイズの二頭身な大精霊。ウィルオウィスプと名乗った大精霊は話し方が完全にキモいおっさんなのに、実際の姿は大きな黒いリボンのついたカチューシャを頭にはめた明るめの金髪と碧眼を持つ美少女だ。隣を飛ぶシェイドは、踵まで届く漆黒の髪を持ち、闇よりも深い黒の瞳を持つ美少女だった。と言っても、どちらも手の平サイズの二頭身。美少女と言うよりは可愛い系の部類である。
「大精霊が三人もおるのじゃ……」
「す、凄いです……」
まさかの大精霊三人と契約を交わしているジャスミンに、ミアとネモフィラは目を点にして更に驚いた。が、それでもまだ早い。
「大トリはわたし。音の精霊神ミユ=ミュズィク=クーミュッジ。お仕事は裏方仕事がメインだよ。そして、実はミアちゃんの誕生日の日に、周囲の音を消したのはわたしでした。はい拍手。パチパチパチ~」
音の精霊神ミユの登場。見た目は日本人の少女をデフォルメしたような姿で、サイドテールの髪型。そんな手の平サイズの二頭身が、空中に魔法陣を絨毯のように敷き、その上に立ってくるりと回ってウインクする。
ミアとネモフィラはそんな登場を果たした精霊神ミユに驚きすぎて遂には硬直し、催促された拍手が出来なかった。とは言え、ここに集まる他の者たちは拍手をしているので、ミユは満足そうに笑顔になる。
「因みに、わたしはそこの会長の妹だよ。でも、これは内緒だから秘密にしておいてね」
そう言って再びウインクするミユに、ミアが正気を取り戻して「う、うむ」と頷き、ハッとなる。
「ジャスミン先生は大精霊三人だけでなく、精霊神とも契約をしておるのじゃ……?」
「うん。たまたまミユちゃんが精霊神として誕生する所にトンちゃん達みんなと一緒に居合わせて、何だか意気投合してそのまま契約したんだよぉ」
「なんか滅茶苦茶軽いノリで契約してそうなのじゃ」
「当たってるかも」
「確かにそうかも。わたしも話してたら楽しくなって契約したし」
「まあ、だから精霊神って言っても、実はボク等の中で一番の末っ子ッスけどね」
「可愛い妹分なんだぞ」
「がお」
ジャスミンと精霊たちは本当に仲が良い。ミアとネモフィラがそんな事を思い乍ら話を聞いていると、ヒロがリリィに視線を向け、目で合図する。すると、リリィが頷いてから「次は私の番ね」と言って立ち上がった。




