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狂信者の血縁者

 学園に通う生徒たちが集められた広間まで移動すると、そこにはサンビタリアとツェーデンとボーツジェマルヤッガー公爵の姿があった。サンビタリアは先日王位継承権を手に入れて王太子になったのだけど、やはりミアたちについて来るようだ。

 ミアとネモフィラが本来連れて行ける侍従は八人。だけど、実際に連れて行くのは七人となっている。その空いた一人分の枠を、サンビタリアの侍従ツェーデンと護衛となったボーツジェマルヤッガーが使う事になったのだけど、それも予定通りと言うわけだ。

 ミアとネモフィラはサンビタリアの姿を見ると、二人で仲良く近づいて行き挨拶をする。サンビタリアも二人を見ると笑顔を向け、挨拶を交わした。

 一先ずこれで全員が揃ったわけだけど、学園に通う生徒は沢山いる。 王族より遅れて登場なんて勇気のある者はいないけど、それでもミアたちの到着を合図にして、念の為にと点呼が始まった。因みに学園の生徒は各学年で二十人いて、学園は四年制なので、そこにミアとネモフィラが入って合計八十二人。点呼を取るだけでもそれなりに時間がかかってしまう。が、怠るわけにもいかないので仕方が無い。

 ミアは退屈を感じながら、風の魔法を使って飛ぶ事で名前を呼ばれた生徒の顔を見る為に目線を上げて、一人一人の顔を見ていた。


「次。ハッカ=K=ヤンガーラ」

「はい」


 ハッカと呼ばれた少女が小さな声で返事をすると、名前を聞いたサンビタリアがミアの耳元に顔を近づけてささやく。


「今名前を呼ばれたハッカは王族の血縁者なの。彼女の曽祖父が先々代の国王の弟なのよ」

「ほう。ではお主とフィーラの遠い親戚なのじゃ」

「そうね。それにメグナット公爵の祖母の姉がその婚約者だったから、ミントとも血縁関係にあるわ」

「ぬ? それじゃあ、お主等とミントは実は遠い親戚みたいなもんだったのじゃ?」

「違う気もするけど、見方によってはそう考える人もいるかもしれないわね。少なくともハッカから見れば、私もミントも血縁関係にあるもの」

「なるほどのう」


 改めてハッカを見る。けど、正直サンビタリアにもネモフィラにもミントにも似ていない。ついでに言えば、ウルイやアグレッティやアネモネやランタナやアンスリウムやメグナットにも似ていない。流石に血縁者と言っても遠すぎて簡単には似ないらしい。と、ミアはそんな事を考え乍ら、再び点呼に耳を傾ける。


「次。ユーリィ=グレイマル」

「はい」

(む? グレイマル? あの娘がヘルスターのめいなのじゃ?)


 ユーリィと呼ばれた少女に目を向け、ヘルスターの姪も入学すると聞いた事を思い出す。するとその時、返事をしたユーリィがミアに視線を向け、小さく手を振った。ミアは少し驚いて、近くにいる誰か、もしくは背後にいる誰かに手を振ったのかと思い周囲を見回す。でも、それらしい相手は見つからず動揺し乍らも視線を戻せば、既にユーリィはこっちを見ずに前を向いていた。


「ミア? どうしたのですか?」

「なんでもないのじゃ」


 キョロキョロと周囲を見ていたので、ネモフィラが不思議に思ったのだろう。ミアがなんでもないと答えると、詮索せんさくはしなかったものの、首を傾げてクエスチョンマークを頭に浮かべた。ミアはと言うと、色々と考え込んでしまう。


(今のは何だったのじゃ? ワシに手を振っていたとして、それは何故じゃ? ヘルスターの件は勿論知っておるじゃろうし、自分は関係無いから仲良くしようと言うアピールかのう?)


 しかし、仮にそうだとして、こんなタイミングで手を振るだろうか? 仲良くと考えるなら、しっかりと挨拶に来るのが貴族と言うもの。そう考えると、ただ常識が無いだけなのか、それとも自分が気がつかなかっただけで手を振った相手が他にいたのか。いつものミアであれば、ここまで深くは考えず気にもしないだろう。だけど、今回は気にするなと言う方が無理かもしれない。

 別にミアがヘルスターの家族をも警戒しているからでは無い。では何故か? それは、グレイマル伯爵家がヘルスターのせいで今や肩身の狭い生活を送っているからだ。そもそもの話として、ミアが国王に家族は関係無いと言い出さなければ、ヘルスターの犯行の責任を一族全員の命で償わされる所だった。

 あまり考えたく無い話ではあるけれど、ミアは思う。グレイマル伯爵家は周囲からの印象がとんでもない程に最悪で風当たりも悪く、ヘルスターの印象が強いのもあって、逆恨みされていてもおかしくはないと。


(ぬう……。何もありませんようになのじゃ)


 そんな事を思い乍ら、ミアは未だに続く点呼の声を聞いていった。

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