表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第六章 王位継承権の行方
364/999

バレる聖女

 ルッキリューナとの戦いは終わった。けど、正確には事件はまだ終わっていない。ミアの放った五つの白金はくきんの光の弾丸によってルッキリューナが倒れ意識を失った今も尚、空間の歪みからは続々とあらゆるものが溢れていたからだ。

 正直言って、このままでは会場内に入りきらない人や物で溢れてしまい、誰かが圧死してしまうかもしれない。ルッキリューナは進化した己の魔装ウェポンを試し撃ちしまくったのだろう。今まで消してきた武具や人だけじゃ無く、動物やらなんやらと色々飛び出してきているのだ。だから、流石に不味い状況と言える。このままだと二次災害的な被害が起きてしまうのは間違いなく、最悪な事態になってしまう。

 それにいち早く気がついたのは、この場に駆けつけていたモーナだった。モーナは人や物が溢れだすと直ぐに駆け出し、そして会場の壁を破壊し、更には重力の魔法で人を含め実害の及ばなそうなものをどんどん外に放り投げた。

 そうして少し経って落ち着く頃に、空間の歪みから飛び出した人々が我に返ったようにゆっくりと起き上がり、周囲を見回し始める。それ等を見ていた人々も徐々に騒ぎだし、しかし、その視線はたった一つに次第に集まる。その視線の先にいるのは、勿論ミアだ。でも、今のミアは視線なんてちっとも気にならなかった。

 何故なら――


「……あれ? 私……あれ?」

「サンビタリア……お姉様……っ。お姉様ああああ!」


 何故なら、ルッキリューナの魔装ウェポンで消されたサンビタリアが空間の歪みから飛び出したから。

 ネモフィラは再び涙を流し、サンビタリアの胸に跳びこんだ。ミアはその姿を見て、柔らかな笑みを浮かべていた。その姿は白金はくきんに光り輝く翼も相まって、まさに聖女の慈愛に満ちた笑みと言えるもので、それが一層に周囲を注目させる要因になっている。だけど、そんなものはどうでも良かった。サンビタリアが無事だった。それが全てだ。


「ミア。お疲れ」

「お主もなのじゃ。しかし、まさか魔装ウェポンの中に別次元の空間を作り出して、その中に封印する力だったとはのう。おかげで犠牲者が誰一人として出なかったのじゃ」

「そうだね。本当に奇跡みたいな話だよ。元々彼女の魔装ウェポンで消えた装備の行先は本当に今までは不明だったけど、今回は逆にそれが良かったのだろうね。おかげで消されていた人は皆無傷なのだから」


 ミアとジェンティーレが笑顔で話し、しかし、そこに少し気まずそうな雰囲気でリベイアが「大変申し上げにくいのですけど」と話に入る。


「暴動を起こした彼等の攻撃を受けた方々がいるので、犠牲者は出ていると思うのですけど……」

「クリアとムルムルの活躍もあったし、ワシもさっき会場内を光で包んだ時に他の怪我人を治したのじゃ」

「治し……っ。さ、流石です」


 なんでも無いように「治した」と話すミアに、リベイアは冷や汗を流して驚いた。普通に考えれば、そんな簡単に言うような事では無い偉業で、正直困惑せずにはいられない。しかし、でも、ミアならそれも当然なのだと、リベイアは納得して苦笑する。因みにミアたちとずっとここにいたリベイアには知る由も無い事だけど、実際に負傷者は全員完治していて、なんなら致命傷を受けていた被害者まで元気になっていた。

 ミアたちがそんな話をしていると、ネモフィラとサンビタリアの二人も落ち着いて、ヒルグラッセやルーサと一緒にミアの許までやって来た。モーナはカナの許まで戻ると言い、この場を去った。

 ネモフィラはミアと目を合わせるなり「ミア」と名前を呼んで、抱きしめる。


「ありがとう存じます! ミアのおかげでお姉様が戻って来ました! 本当に、本当に感謝してもしきれません!」

「何を言うておる。それはフィーラが苦しみを乗り越えて、ワシに力をくれたからじゃ。フィーラが頑張ったから、ワシも覚悟を決めれたのじゃ」


 ネモフィラの言葉にミアは優しい声で答えて抱きしめ返し、優しく頭を撫でる。そんな二人の姿にサンビタリアやリベイアが微笑み、そして、直後に歓声が沸き上がった。


「聖女様は本当にいたんだ!」

「聖女様ああ!」

「うおおおお! 聖女様ああああ!」


 歓声が沸き上がった瞬間、ミアの脳内に電撃が走る。


「――っぬ、ぬおおおお!? 想像よりずっと大人数にめちゃんこ見られておったのじゃあああ!?」


 おい。お前の“覚悟”はどこいったんだよ? と言いたくなるミアの反応。ミアのなけなしの覚悟とやらは遠く消え去り、残ったのは哀れに震え上がるアホ……じゃなくてミアの姿。結局いつも通りに戻ってしまった。

 最早二重人格を疑う程に驚くアホなミアも今回ばかりは逃げられない。思いっきり大勢の前で“聖魔法”をぶっ放したし、なんなら白金はくきんに光り輝く翼も引っ込め忘れて健在中。見られたと言うか見られているの間違いだけど、それすらもミアはアホなので気が付いていない。


「「聖女様! 聖女様! 聖女様! 聖女様!」」


 謎の聖女様コールに包まれて、ミアの精神は限りなく擦り減っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ