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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第六章 王位継承権の行方
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この世で最も怒らせてはならない人物

 白金はくきんに輝く翼を広げ、会場内の注目を一点に集めたミア。その美しく神々しい神秘的な姿に目を奪われたのは、ルッキリューナも同じだった。信じられないとでも言いたげな表情を見せ、ただただ驚愕きょうがくして目の前の聖女を愕然がくぜんと見つめ、震える声でミアに問う。


「う、嘘……? ミアちゃん……なの? そ、それは……その白金はくきんの翼は……聖女様の…………。何でミアちゃんが……?」


 ミアはその問いに答えない。毅然きぜんとした態度でルッキリューナと目を合わせ、ネモフィラを護るようにして前に立つ。するとその時だ。


「ミア! 分析が出来たわよ! 今からミミミに転送する!」


 ジェンティーレがルッキリューナの魔装ウェポンの分析を完了し、キーボードで言うエンターを弾くように押した。すると直後にミミミ髪留めモードに情報が流れ、ルッキリューナの魔装ウェポンのカラクリがミアの脳内に流れ出す。


「タイミングばっちりなのじゃ!」


 笑みを見せ、ミアは白金はくきんに光り輝く翼を羽ばたかせた。そして、天井付近まで飛翔してミミミ髪留めモードを戦闘モードへと移行させると、その時に丁度バラムやチコリーたちが視界に入る。


「ほう。あっちはチコリーに任せておけば良さそうじゃ」


 などと呟くミアの声は誰にも届かないだろうが、会場内から漏れる「聖女様」と言う声はミアの耳に届いた。いつものミアであれば、焦りに焦って動揺し、自分は聖女では無いと否定を始めてしまうだろう。しかし、今のミアはその言葉では止まらない。ミアは静かにミミミピストルによる照準合わせを開始し、その銃口はルッキリューナへと向けられる。

 すると、それを見てネモフィラが焦った。


「ジェンティーレお師匠様。大変です! ルッキリューナに攻撃してしまったら、ミントが!」

「安心しなさい。それは既に解決したようなものだから」

「え……?」


 ネモフィラが驚き、ミアに視線を戻し見上げると、それを合図にするかのように白金はくきんの光の弾丸が放たれた。そして、それはルッキリューナを……否。ルッキリューナの魔装ウェポンを一瞬で撃ち貫く。


「――っ!? え……っ?」


 魔装ウェポンとは本来どんな攻撃でも傷一つつかないものだ。どんな達人の攻撃でもそれは変わらず、少なくともそれが出来る人物なんてルッキリューナは見た事も聞いた事も無い。だから、ルッキリューナは目の前で破壊された己の魔装ウェポンに驚き、目を見開いた。

 そしてその直後に、破壊されたルッキリューナの魔装ウェポンから空間のひずみが発生し、空気がぐにゃりとゆがむ。


「これは――っ」


 空気が歪んだ直後。そこからルッキリューナの魔装ウェポンによって今まで消されていた全て(・・)が溢れだす。その光景に、ルッキリューナだけでなくミアに目を奪われていた人々が驚き、呆然とした。が、会場内は溢れ出したそれ等でどんどんと狭くなっていき、再び混乱が再発して騒然となる。

 そしてそんな中でも、ミアはまだ止まらない。ミアは空間の歪みから飛び出すそれ等を全て見逃さず、その時を待って数秒。


「見つけたのじゃ!」


 そう言って手をかざした先にあるのは、魔道具マジックアイテム身代わり人形。ジェンティーレがルッキリューナの魔装ウェポンの情報と一緒に流してくれたミントを呪縛する元凶。

 ミアの目の前には白金はくきんに輝く魔法陣が浮かび上がり、それは神秘に満ち溢れた白金はくきんの光を放つ。そして、会場内全てを照らすように広がっていき、身代わり人形は白金はくきんの光に包まれる。会場内が全て白金はくきんの光に包まれる頃、身代わり人形が浄化されて消え去り、ルッキリューナとミントを繋ぐ呪いも綺麗サッパリと消え去った。

 ルッキリューナは最早何も出来なかった。ミアに抱いていた憎しみも怒りも全て忘れてしまう程、驚きと混乱で身動きの一つすら出来ないでいる。


「ルッキリューナ。罰としてちょっとだけ痛い目におうてもらうのじゃ」

「へ……?」


 ミアの言葉に、ルッキリューナはマヌケな声を出すだけで精一杯だった。

 目の前の少女が伝説の聖女で、本来破壊など出来る筈の無い魔装ウェポンを破壊され、使用者本人である自分すらも知らなかった消えた人々等が溢れ出た。目の前で起こった事が本当に現実なのかどうかも分からなくなり、そんな時に神々しい白金はくきんの光に包まれた美しい聖女から発せられた言葉は、底冷えするような冷たい声色。

 この時、ルッキリューナはようやく気がついた。自分はこの世で最も怒らせてはならない人物を怒らせてしまったのだと。バラムの誘いに乗って、復讐を果たそうと考えるべきでは無かったのだと。

 しかし、もう遅い。


「――っあ」


 ルッキリューナには懺悔ざんげをする暇も無かった。

 ミアが白金はくきんの光の弾丸を五発放ち、それ等は右腕、左腕、右足、左足、ひたい、の順で容赦なく命中する。しかし、確かにミアの言う通り額に届くまでの間に痛みを感じる事になったルッキリューナだが、それも一秒にも満たない一瞬。ルッキリューナは後悔したのも束の間に、恐怖と絶望と激痛を一瞬の内で全て味わい、そのまま意識を失った。

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