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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第六章 王位継承権の行方
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始まる社交界と注目される聖女

 王太子を決める為のパーティーは夜会である。しかし、ミアたちは午前に準備を終わらせて、午後にはパーティーに参加する。夜会なのに昼間からと疑問に思うかもしれないが、これにはちょっとした事情があった。

 その事情と言うのが、今晩開かれる夜会にある。夜会では秘密裏に王太子を決める為の試験や面接が行われる為、それを受けるネモフィラやサンビタリアはとてもじゃないが夜会どころでは無い。しかも、ネモフィラはまだ社交界等の経験が浅く、そんな状態でサンビタリアと競い合うなんて出来ないだろう。と言っても、今回は王位継承権のなすり付け合いだ。どちらかと言えば失敗した方が有利に転ぶわけだけど、それはそれで王族として示しがつかない。だから、それを踏まえた上でネモフィラが少しでも集中出来るようにと、昼間にも社交界を開く事になったのだ。

 ミアの家族の件もある。ミアの家族は平民であり、流石に王太子を決める夜会に呼ぶわけにはいかない……と言うよりは、ミアの家族が思いきり拒んだ。周囲に貴族しかいないような場所に行くのは、ミアの誕生日パーティでこりごりだと。だから、貴族に囲まれるのがよっぽど心臓に悪いのだろうと家族を気遣い、社交界の参加だけしてもらう事になった。

 まあ、実はミアの家族にもパーティーに出てほしいと願ったのがネモフィラだったので、それが一番の決め手になってパーティーが二回開かれる事になったわけだ。と言っても、昼間の社交界と夜の夜会は繋がっていて、夕刻の十七時を境にパーティーの趣向を変更する予定だ。

 昼間は貴族と繋がりを持ちたい平民が参加可能な社交界で、夜は貴族ばかりの夜会。そんな風に分けられたのである。


「誰? あの子……」

「綺麗……」

「もしかして国王陛下のご息女では……?」

「四女って事?」


 会場内に集まる平民たちが騒然とし、貴族を含めて視線が勢いよく集まっていく。その視線の先にいたのは、今このパーティー会場に来たばかりのミアだ。

 ミアの隣にはネモフィラが歩いていたけど、視線がネモフィラを向く事は無かった。いつもであれば注目を集めるのは絶世の美少女と言われているネモフィラであったけど、今回ばかりはそうならない。渾身のおめかしで身を飾る完成されたミアの姿は、それ程の美しさをそなえていたのだ。

 しかし、注目を一身に集めたミアは居心地が悪い。これでも目立たないドレスを選んだのにと文句を言い乍ら騒ぎたい気分だった。まあ、中身が前世で八十も生きたお爺ちゃんなので、流石にそんなみっともない事をしたりなんて出来ないが。


「うふふ。今日のミアはいつもより可愛いから、皆が驚いていますね」

「ぬぬう。フィーラの方が可愛いのに、皆の目は節穴なのじゃ」

「――っ」


 突然の可愛い宣言に、ネモフィラが顔を赤くして驚き、直ぐにとっても素敵な満面な笑みを見せる。そんなネモフィラと一緒に会場内を進んで行き、ミアは既に来ていたサンビタリアと合流した。


「ごきげんようなのじゃ。サンビタリア殿下」

「ふふふ。ごきげんよう。ミア。今日はとても可愛らしいのね。つい見惚れてしまったわ」

「わたくしも先程ミアと会った時は見惚れてしまいました」

「ぬう。またそれなのじゃ? サンビタリア殿下まで変な事を言わんでほしいのじゃ」

「あら。本当の事よ。ところで、ミアのご家族は? 一緒では無いのかしら?」

「気になる事があってのう。母上と父上と兄上には調べものの為に後から来てもらう事にしておるのじゃ」

「気になる事……?」

「まあ、サンビタリア殿下が気にする事でも無いのじゃ」

「そう……。あ。その調べ物と言うのが終わったみたいね。着いたみたいよ」


 サンビタリアはミアの家族がパーティー会場に入ったのを見たようで、安心した様子で微笑みを見せる。ただ、ミアの家族に挨拶に直ぐに行く。なんて事は出来なさそうだ。

 ここには今ネモフィラとサンビタリアと言う王族が二人もいて、しかも来場と同時に注目を集めたミアがいる。周囲の注目は間違いなく三人に注がれていて、最早道が無いくらいに囲まれてしまっていた。

 それに、ミアも家族の許に行く気が無いらしく、サンビタリアの側にあるテーブルの上からジュースを取って飲み始める始末。サンビタリアは仕方なく挨拶を後にと諦めて、そのままミアやネモフィラと話の花を咲かせる事にした。

 さて、そんなわけで始まったこのパーティー。参加する貴族も平民に興味を持つ貴族ばかりなので、滅多に話す機会の無い貴族たちと平民たちで会場内は大いに盛り上がっていた。

 しかし、これがいけなかったのだろう。ムーンフラワー事変で逃げ延びた残党たちが、それを利用しようとしていたのだから。彼等の計画は、水面下で音も無く着実に進んでいたのだ。

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